この世界の簡易食品
電子レンジをみていた英治はお腹がすいてきて……。
あれから英治は猫と花柄、フェニックス模様、花柄の携帯用発電機の三つを具現化させた。
猫と花柄はティラベルでフェニックス模様がルゼリウスである。そして花柄は、カゼリアだ。
携帯用発電機を受け取った三人は英治に教わった通りに操作し始める。設定まで終えると三人は自分の携帯発電機をテーブルの上に置いた。
「電子レンジをみてたら何か食べたくなった」
「エイジ……何か持ってくる」
「確かに……じゃあ、オレの分も頼む」
それを聞きティラベルは、ルゼリウスを冷たい眼差しでみる。
「エイジは特別。ルゼリウスは自分で持ってくればいい」
「それって……酷くねえ?」
「あーじゃあ俺も行く。食物庫もみたいし」
その言葉を聞いたティラベルは、ウンと頷き笑みを浮かべた。
「エイジ、オレの分もな」
「分かった。それとカゼリアの分も持ってくるよ」
「ありがたい。じゃあオレとルゼリウスで三ヶ所の監視をしてる」
そう言いカゼリアは液晶ディスプレイのスイッチを入れる。
次いでルゼリウスも液晶ディスプレイのスイッチをオンにした。
それを確認したかのように英治とティラベルは部屋を出て食物庫へと向かう。
✽✦✽✦✽
ここは食物庫だ。この場所はルゼリウスの部屋から南西の方にある。
食物庫の中には簡易食品が沢山おかれていた。
中に入るなり英治は異様な光景に顔を顰める。
「食料って、みんな簡易食品なのか?」
「カンイ食品……どういう意味?」
「保存できて簡単に食べれる物をいう」
なるほどとティラベルは納得した。
「この世界の食品は、みんなこんな感じ。でも昔は、ちゃんと調理して食べてた」
「ちょっと待て!? じゃあ、ここにあるものって?」
「調理はAIがしてるみたい」
そういう事なのかと英治は納得する。
「そうか……だけどその食材って、どうやって集めてる?」
「そこまでは分からない。みんなAIがやってるから」
それを聞き英治は気になり簡易食品を一つひとつ調べてみた。
「開けてみてもいいか?」
「一つなら大丈夫だと思う。何か気になるのか?」
「どうやって加工しているのかを知りたい」
「そうか……そういえば、ボクも知らない。どうやって作っているんだろう?」
言われてティラベルは気になり簡易食品を持って調べてみる。
その隣で英治は袋を開け匂いを嗅いでみた。
(匂いがしない。この中に入っている食べ物は野菜を炒めたような物だけど……なんか変だ。これって本当に食べ物なのか?)
どうみても食べ物にみえないと感じ英治は怪訝な表情をしている。
「エイジ……何か分かったのか?」
「いや分からない。だけど臭いがしないし……見た目も食べ物のように思えなくてな」
「レンジで熱を加えると見た目がかわって匂いもしてくる」
それを聞くも英治は、イメージできずに困惑した。そのためティラベルの言うように電子レンジで熱してみることにする。
その後、英治とティラベルは人数分の簡易食品を持ち食物庫を出てルゼリウスの部屋へと向かった。
✽✦✽✦✽
ルゼリウスの部屋に戻ってきた英治とティラベルはテーブルの上に四人分の簡易食品を置くと椅子に座る。
椅子に座るなり英治はルゼリウスとカゼリアに食物庫でティラベルと話したことを伝えた。
「なるほど……じゃあオレが見本をみせる」
そうルゼリウスが言うと英治は頷き電子レンジへ視線を向ける。
(本当に大丈夫なのか?)
英治は心配に思い電子レンジをみていた。
「じゃあ、スイッチを入れるぞ」
その言葉を聞き英治は頷き、ゴクっと唾をのんだ。
それを確認するとルゼリウスは中に簡易食品を入れたあと閉めた。次いで時間の設定をしてスタートボタンをおす。
すると電子レンジの中が発光し始め設定した時間がカウントするように減っていく。
それをみて英治は改めて自分の世界と似ていると思った。
タダ違うのは時間が十分と長いことだけだ。
その間、英治は三人と話をしながら液晶ディスプレイをみる。
「赤派、青派共に奥の部屋に入ってから動きがない」
「エイジ……ああ、キートモンの町の方も建物に入ったっきり出てこない」
「どうする、もう少し近づいた方がいいのか?」
そうカゼリアに問われ英治は首を横に振った。
「あとのことを考えると、これ以上は無理だろう」
「確かにな。あとで色々言われるのも面倒だ」
「でも気になる……何をやってるのか」
そうティラベルに言われ三人は悩んだ。
悩んでいる間に「ピロ~ン」と電子レンジから音が聞こえてきた。
「できたのか?」
そう英治が問うとルゼリウスは頷き電子レンジの中から簡易食品を取り出しテーブルの上におく。
「匂いがする。どうなっているんだ?」
なんでなのか分からない英治は不思議に思い首を傾げた。
ルゼリウスは出来上がった簡易食品を袋から用意していた皿に移しかえる。
「これって野菜と肉の炒めものか?」
「クマウシの肉と野菜の炒めものだ」
それを聞き英治は、どうやってAIが作っているのか気になり出来上がった肉野菜炒めを眺め考えていた。
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