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68 本当に好き


「明日、シュウくんの様子を知らせてくれる?」

美歌の声は静かで、でもどこかに柔らかな響きを含んでいた。


「……あぁ、はい。わかりました。」

ひなは少し緊張した声でそう返した。


「なんでもいいのよ。

ひなちゃんが感じたこと、気づいたこと、どんな小さなことでも構わないわ。教えて欲しいの。」


その言葉に、ひなは小さくうなずいた。

「はい……必ず連絡します。」


美歌は、ふと何かを思い出すように目を伏せ、少し間を置いてから口を開いた。

「もし、今日よりやつれがひどくなっていたら……明日の夜から、私、泊まり込みになると思うわ。」

そしてひなの方をまっすぐ見つめて、穏やかな口調で続けた。

「そのときは、ひなちゃんも……付き合ってくれるかしら?」


その目には、頼るというよりも“信じている”という優しさがあった。

ひなの胸が熱くなり、迷うことなく答えた。

「はい。私、一緒にいます。

ひなで何かお力になれることがあれば、なんでもお手伝いさせてください。」


美歌はほんの少しだけ微笑んだ。

その笑みには、妹を見守るような温かさと、どこか安心したような安堵の色が混ざっていた。

「……ひなちゃんがいてくれたら、本当に心強いわね。」

そう言って、やさしく息を吐くと、ふと表情をやわらげて続けた。

「ひなちゃん、シュウくんのこと——本当に好きなんだね。」


その一言に、ひなの心臓が一瞬止まった気がした。

耳の奥が熱くなり、頬がじんわりと赤くなるのが自分でもわかる。

「えっ……そ、そんな……」

と慌てて笑って誤魔化したけれど、その笑いは少し震えていた。


美歌はそんなひなを見て、何も言わずにただ静かに微笑んだ。

まるで「大丈夫よ」と言葉にしない優しさで包み込むように。


ひなはその笑顔を見ながら、胸の奥が少し温かくなった。

——この人の隣にいれば、どんな不安も少しだけ軽くなる。

そう感じながら、ひなは小さく深呼吸をした。


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