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夜の街はすっかり静まり返っていた。
俺は寄り道もせず、真っ直ぐ家に帰った。
外の冷たい風が少し熱を持った頬に心地よく、
早くベッドに倒れ込みたい気分だった。
玄関を開けて靴を脱ぐと、ふっと力が抜けた。
やっぱり、少し体が重い。
風邪気味なのかもしれない。
「店長からもらったパスタ、食べておこうかな」
そう呟きながら、キッチンで温め直したパスタを一口。
トマトソースの香りが鼻をくすぐり、
思った以上に優しい味がした。
食べ終えると、薬箱から風邪薬を取り出し、
コップの水で流し込む。
ベッドに体を横たえると、
スマホの明かりだけが部屋をほんのり照らしていた。
静かな部屋の中で、ひなの顔がふっと浮かぶ。
(そうだ、ちゃんと報告しておかないと)
俺はスマホを手に取り、
ゆっくりとLINEのメッセージを打ち始めた。
いま、家だよ。
ご飯も食べ終わった。
店長から差し入れもらった。
送信して間もなく、ひなから返信が来た。
お疲れ様。
よかったね。
どう? 体、大丈夫?
その言葉に、自然と口元が緩んだ。
(ほんと、優しいよな……)
うん。問題ないよ。
少し間を置いて、またひなからメッセージが届いた。
シュウ、テレビ電話にしようか?
その提案に、心臓がドキッとした。
(顔見たら、また照れくさくなるな……)
でも、ひなの声が聞きたくて。
いいよ。
そう返してスマホを持ち直すと、
画面の中で着信マークが優しく光り始めた




