第63話 これだから陽キャは
「うううう……や、やっぱり、ローザは悪魔の化身なのだ……」
ローザさんのお仕置きを喰らい、地面に転がったアルテアさんが呻く。
どうやら足に巻きついた鞭を通じて電撃を浴びせられたみたいで、全身から煙のようなものが出ている。
「また何か言いましたの?」
「いや何も言ってないのだっ!」
首をブンブンと振り、必死に否定するアルテアさん。
それだけお仕置きが痛かったらしい。
……それにしてもローザさん、見た目の優しげな雰囲気とは裏腹に、随分と怖い人みたいだ。
僕もアルテアさんみたいに、遅刻したらお仕置きされることになるのかな……。
「あら?」
とそこで、ローザさんが僕の存在に気づく。
「あなたはもしかして」
「は、初めまして……僕はライルと言います。リーゼさんに紹介されて……」
「ええ、リーゼから話は聞いていますわ。あたくしがリーゼの姉、ローザですの。……なるほど、確かにあの子が好みそうな男の子ですわね」
「?」
「ふふふ、それはこちらの話ですの。それよりアーゼルからここまで来るのに、てっきりもう少しかかると思っていましたわ」
「あ、はい、できるだけ急ぎました」
「……お、おい、少年、それでは吾輩の立場がないのだっ」
ローザさんの疑問に答えると、アルテアさんが小声で訴えてくる。
「新しい仲間候補にいきなり見苦しいものを見せてしまいましたわ」
「い、いえ……」
「ふふふ、そう心配しなくてよろしいですわ。決してパーティメンバーにこんなお仕置きばかりしているわけではありませんもの」
「……吾輩は割と毎日のようにされているのだ」
「それはあなたが毎度のごとくやらかすからですわ?」
アルテアさんは、リーゼさんのパーティにいたユズリハさんタイプなのかもしれない。
「こんなところでは何ですから、詳しいことは中でお話しますわ。残る二人のパーティメンバーたちも紹介したいですし」
ローザさんに促されて宿の中へ。
彼女たちが泊っている部屋は二階にあった。
冒険者に人気の宿ということもあって、パーティ単位で宿泊可能な広い部屋もあるようで、ローザさんたちの部屋もそうした一室だという。
「リビングの他に、個室が二つもありますの。トイレが部屋の中に付いているのもポイントが高いですわ」
出迎えてくれたのは二人とも女性だった。
どうやらこのパーティは女性ばかりで構成されているらしい。
「紹介しますわ。彼はライルくん。すでに伝えている通り、これからパーティのサポート要員として活躍してくれる新メンバーですわ」
「えっと、Dランク冒険者で、生活魔法使いのライルです……よ、よろしくお願いします」
自己紹介が思わず上ずった声になってしまったのは、その二人がどちらも独特な格好をした人たちだったからだ。
「……よろしく……」
ボソボソと聞き取り辛い声で呟いたのは、真っ黒なドレスを身に着けた女性だ。
長い髪に青白い顔、そしてよく見ると腰に不気味な髑髏をぶら下げている。
ローザさんが助け舟を出してくれた。
「彼女はカーミラ。死霊術師ですわ」
「死霊術師……」
忌み嫌われがちな黒魔法の中でも、特に忌避されているのが死者や霊魂などを操る死霊魔法だ。
というか、彼女の背後に女性らしき人影が浮かんでいる……?
かなり薄くて目を凝らさないと分からないほどだけれど、目が合うと、にっこりと微笑んだように見えた。
「……もしかして……ママ……見えてる……?」
「えっ? は、はい……金髪で、三十代くらいの……」
ママって、カーミラさんの実のママだろうか。
カーミラさんは黒髪だし、あまり似てはいない。
「ひひひ……あなた……死霊魔法の、適性……あるかも……」
「そ、そうですか……?」
残念ながらあまり嬉しくない。
「まったく、相変わらず辛気臭いやつねー。新人ちゃんも戸惑ってるじゃないの」
溜息を吐きながら割り込んできたのは、随分と露出度の高い服装をしたもう一人の女性。
あまり生気を感じられないカーミラさんとは対照的に、とても健康的で快活そうな印象を受ける。
「あたしはタティアナ。こう見えて上級ヒーラーよ。よろしくね、新人ちゃん。気安すくタティって呼んでくれていいわ」
「タティさんですね。よろしくお願いします」
「ぷふっ、タティさんだって! 真面目な子ねー」
タティさんはいきなり噴き出し、カラカラと笑う。
「……初対面で距離感、詰め過ぎ……これだから陽キャは……死ねばいいのに……」
一方、カーミラさんがブツブツと毒づくと、
「あんたが陰キャ過ぎんの。死体とばっかり仲良くしてるから、生きた人間とまともな会話もできなくなんのよー」
「……生きた人間に……興味ない……」
「はいはい、相手もあんたみたいな根暗のネクロマンサーなんかに興味ないと思うわー」
「…………淫乱クソビッチ」
「誰がビッチよ! あんたの操るアンデッド、全部あたしの白魔法で浄化してやろうかしら!?」
……どうやらこの二人、とても相性が悪いみたいだ。
ローザさんとアルテアさんもあんな感じだし……大丈夫かなぁ、このパーティ?
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