幕間
サウンドオンリー。
話の大筋とはあまり関係ありません。多分。
「この事態は…些か急ぎ過ぎたのではないか?」
「そうかな?」
「でもしょうがない。もう時計の針は回ってしまったんだから」
「それに、どの道何時かはやる予定だったんでしょ?」
「なら、今更変わらないって」
「…そうだな」
「では、この装置の説明を頼む」
「おっけー任された」
「これは…そうだねぇ、取り敢えず『ベクトル発生装置』とでも呼んでおこうか」
「『ベクトル発生装置』…?何だそれは」
「まーまー、今説明するから」
「キミも、ゾンビの行動原理がベクトルの『向き』と『大きさ』に支配されているのは、流石に知ってるよね?」
「…初耳だぞ」
「はぁ!?…おいおい、軍部の情報伝達網はどうなってるんだよ!」
「キミ、この作戦が終わったら辞表でも書いた方が……」
「…まあ、いい。聞かなかった事にしよう。続けるよ」
「そうしてくれると助かる」
「あークソッ。どこまで話したっけなぁ。ゾンビの行動原理までだっけか」
「じゃあ、ベクトルの説明からか?」
「そうだな」
「ゾンビを突き動かしているもの──ベクトルは、そうだなぁ、『生命エネルギー』とでも言うべき代物でね」
「これに惹かれて、ゾンビっていうのは動くんだ」
「ほう」
「その『生命エネルギー』とやらは、何か特別なものなのか?」
「いいや。普通の、生きている人間から微量に感知されるものさ」
「厳密に言えば、この『生きている』という状態は、人ではなくゾンビから見たものだ」
「ただの人間は生命エネルギーを感知出来ないからな」
「けど、そこに関しちゃ、キミ達は気にしなくていい」
「ゾンビにとっての『生きている』は、人にとっての『生きている』とほぼ同義だからね」
「ふむ」
「ゾンビから見て『生きている』と判断される基準が、その生命エネルギーなのか?」
「そーゆーこと」
「逆に言えば、生命エネルギーさえ感知されれば、ゾンビは対象を『生きている』と判断し、そちらに向かって動く」
「たとえ、エネルギーの発生源が機械だったとしてもね」
「それでは、この機械が?」
「そう。この機械こそが、生命エネルギー発生装置なのさ」
「ボクが『ベクトル発生装置』と言った意味が分かってきただろう?」
「ああ」
「しかし、まだ『向き』と『大きさ』の意味が分からないな」
「なぁに、そんなの簡単な事さ」
「ゾンビから見て、生命エネルギーのある方向が『向き』で、生命エネルギーの大きさがそのまま、ベクトルの『大きさ』なんだよ」
「ゾンビ達の感知するエネルギーが大きければ大きい程、沢山のゾンビを、より強力に集める事が出来る」
「成る程」
「しかし、これを動作させるだけでは、ゾンビを集める事しか出来ないのではないか?」
「そこで登場するのが、キミに埋め込まれたチップだよ」
「まだ接続設定が完了していないけど、これが完了すれば、キミは思いのままに生命エネルギーの向きと大きさを操作する事が出来るようになる筈だ」
「そうしたら、例えば、生命エネルギーを敵軍に差し向けて、ゾンビ達に攻撃させる事も出来る」
「生命エネルギーが直線状に分布していれば、ゾンビはそれに沿って動くからね」
「了解した。俺は戦局を見ながら、ゾンビを動かしていけばいいんだな」
「その通り。多少細かい調整も効くから、後で試してみるといい」
「でも気をつけてね。余りに発生させる生命エネルギー量を減らしすぎると、今度はキミの方に集まってくるだろうから」
「ま、一個人の発生させる生命エネルギー量なんてたかが知れてるし、大丈夫だとは思うけどね」
「ああ、気をつける事にしよう」
「…ああ、そうそう」
「接続設定が完了するまでに万が一の事があったら困るから、この近辺には、ゾンビが忌避する周波数の音を流してるからね」
「ボクはもう行くけど、それまでに此処に来る奴がいたら……」
「…忠告感謝する」
「あはっ。どういたしまして」




