オマケ・メルラとレンと騒がしき新婚生活・5
ブレングルス視点です。
メルラと初夜を迎えた時、ついついメルラが可愛くて「愛している」と告げていた。俺を受け入れてくれるメルラが愛しくて、ああこれが愛する人への気持ちか、と胸が熱くなった。城で生活していた俺達だが、メルラはずっと俺を見つめてくれていたと思う。この時は、間違いなくメルラの心の片隅にでも俺が存在している、という自負が有った。
だが。メルラの心を優先しようとレレン伯爵領ーーメルラの実家へメルラをやった後。手紙に記される文章は他人行儀。そして逢いたいと綴っても俺が忙しいだろうから、とやんわりと断られた。結婚してからの1ヶ月とは全く違う温度差に俺は焦った。やはりニコル君には勝てないのか?
俺ではメルラの心を守れないのだろうか。
メルラが俺を愛してくれなくても良いとは思う。本音はもちろん愛してもらいたいが、メルラの中にニコル君が居る事を受け入れているのだからニコル君に勝てないのも仕方ない。だが、こんなに温度差が激しくなる程、俺の存在はメルラの中ではちっぽけなのだろうか。
手紙に返信はもらえるものの、頑なに逢おうとしてくれないメルラに焦りばかりが募る。そうしているうちに、結婚してから3ヶ月が経過していた。
仕事が有りすぎてメルラとの時間が持てない。いや。城にいた時は少しの時間でも捻出したし、何よりどれだけ遅くなっても先に眠っているメルラを抱きしめて眠るだけでも癒されていた。けれど。今はメルラが実家で俺は相変わらず国のあちこちを回っている。というのも、小さな国であっても……いやだからこそ、なのだろうか……貴族同士でいがみ合うのだ。話を聞くと大したことのないものから、領地没収になりかねない、いざこざまで。それを収めるのが俺の仕事なのだが。
ついでに収めた先で歓待を受けて食事を共にしていると、その屋敷に泊まる事もしょっちゅうだ。そこの家の娘が夜に忍んで来るまでがセットなので、それは断っているが。諦めろよ、と思うくらい何度もやって来る娘も1人や2人じゃない。“王弟”の名にそれ程の旨味が有るとも思えない。そして今は新婚だと言うのに、それでもやって来る娘もいる。中には婚約者が居るというのに、やって来るのだから本当にやっていられない。必ず部屋の鍵は掛けているがまぁマスターキーで開けられるので、扉の前に移動出来そうな家具を置いて侵入を防ぐ。
そんな日々を常に送っている俺にとって、結婚するよりも遥か前から、メルラとの手紙が癒しになっていた……と今更ながらに思う。俺が兄上と手紙をやり取りする時に使う鳥をメルラとの手紙でも使っている。これはきちんと兄上に許可を得ていた。さすがに既婚女性から秋波を送られる事は無いが、メルラは本当にそういった事とかけ離れていて、俺に一息つかせてくれていた。
……結婚した今となっては、そのよそよそしさが辛いけどな。
まさかメルラの節度ある態度に不満を抱く日が来るとは思っていなかったんだ。だが、もう無理だ。メルラに会いたい。逢いたい。逢ってこの腕で抱きしめたい。時間が無いなどと言っていられない。明日はレレン伯爵領内に入る。無論レレン伯爵領内にトラブルが無いか確認はする。仕事はきちんとやる。だがメルラに逢いに行く。これ以上、待っていられない。
次話もブレングルス視点です。




