99章 顎髭弓兵隊長
ガドルの進言を聞かなかったために、ニバール国の弓兵隊が、大変だ!
99章 顎鬚弓兵隊長
ニバール国の国境。
「おい!! またニバール軍のあそこから虫が入ってきてるぞ!!」
「これで何匹目だ?!」
「フィン! よそ見をするなよ!」
「マルケスが話しかけるからだろう?!! ヨイショッと!!」
フィンは全身を使って撃つ大弓で虫を仕留めていく。 マルケスはフィンに矢を渡す役目だ。
飛翔系の虫が結構集まってきていてひっきりなしに撃ち落さなければならない。
傭兵達は大弓の練習をスパルタで叩き込まれた。
ヨシュアは鎖鎌と剣の練習を主にしていたが、アラムとモスは大弓が気に入ったらしく、腕前も一流にまでなった。
もちろんフィンは別格だ。 小さな体で大きな弓を器用に操り、不規則な動きの虫に対してほぼ百発百中だ。
大弓はドワーフに頼んで大量に作ってもらい、矢の量も半端ないので、今の所心配はない。
それに対してニバール国軍は、クロスボウが主流だ。
台座付きの大きなクロスボウの矢は槍と同じほどの大きさがあり、威力は抜群なのだが、小回りが利かないために虫に当たらない。
前にガドルが進言していたのをスーガは見ていたそうだが「動きが早い虫にクロスボウは不利なので、大弓の練習をした方がいい」と言ったのにもかかわらず、弓兵隊長は必要ないと言っていたそうだ。
顎に髭を生やした神経質そうで目が細い男と言っていたから、直ぐ先にいるあいつに間違いない。
「わが国のクロスボウ隊は世界一です。 虫ごとき、問題はありません」
半笑いで言っていたそうだが、いざという時にまるで当たらず、結局、虫の侵入を許してしまった。
ガドル先生が注意してくれたというのに、どれだけの自信があるのかと思っていたのに、この体たらくだ。
ニバール軍の弓兵隊が守っている地点のあちらこちらで虫が国内に入り、その度にその虫を10名の騎馬隊が追いかけていく。
しかし、見ている限り、仕留めたと戻ってきたのは一組だけで、他の数十組は未だに戻ってきていない。 国内に入り込んだ虫を追いかけ回しているのだろう。
多分60~70匹は入り込んでいる。
一度突破されるとそこから次々に入り込むとシークが言っていた。 まさにその通りで、隣のニバール軍の持ち場辺りに穴が開いてしまったのだろう。 次々にその場所から虫が入ってくる。
すると、突如、その隣の兵士たちがマルケスたちの持ち場に押しよせてきた。
「お···おい!! あんた達の持ち場はどうしたんだよ!!」
マルケスが叫ぶと、あの顎鬚の弓兵隊長が偉そうに命令してきた。
「傭兵第1団(マルケスたち50人)は、配置換えだ! 急いであちらの持ち場につくように!! 急げ! 虫が入ってくるぞ!!」
「お願いされれば喜んで行くものを、自分たちが不甲斐なくて穴を開けたくせに、そこを俺たちに押し付けるのか?!!」
「貴様ぁ!! 命令に逆らうのか!!」
顎鬚隊長は顔を真っ赤にして剣に手をかける。
マルケスも剣を抜こうとするが、フィンが慌ててマルケスの手を押さえて小声でささやく。
「落ち着け。 あのままあそこで兵士に守らせるより、俺たちが護った方が虫の侵入を防げる。 ここで争っているより急いであっちに行こう」
マルケスは顎鬚隊長を一睨みすると「持ち場変更だ!! 急いで移動しろ!」と、矢を積んでいる荷車を引いていった。
しかし、攻撃がやんだことで、虫たちが押し寄せる。
「フィン! 早く持ち場につけ!! ヨシュア! アラムとモスを急がせろ! そこの4人!! こっちだ! 早く来い!!」
フィンが持ち場についた頃には数十匹の虫が、穴の位置が分かっているように向かってくる。
顎鬚隊長とは反対側を護るニバール軍が、その虫の塊に何本ものクロスボウをぶち込んでくれた。 おかげで虫たちは四散した。
再び一匹ずつ仕留めていくが、数が多い。
「クッソ~!! あいつら覚えていろよ!」
ヨシュアが忙しそうにアラムとモスに矢を渡していくが、焦っているのか、なかなか当たらない。 他の者達も、あと少しの所で虫を逃す。
「みんな落ち着け! お前らは出来る!! 一度深呼吸をしろ!!」
フィンが矢を射ながらみんなに大声で叫ぶ。
外していた者たちは呼吸を整えてから再び狙う。
それからようやくみんなの矢が当たり出した。
顎髭弓兵隊長! やってくれる···
フィン達がピンチだ!!
(;゜0゜)
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