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93章 コーマンとザタン

フェンリルがコーマンとザタンの相手をする。


 93章 コーマンとザタン




 コーマンとザタンが同時に雷魔法を撃ってきた。 (つの)で吸収した雷魔法を、いかにも自分に当たったように見せかけるため、片方は足元で爆発させ、もう一方をザタンに放った。 もちろんザタンは結界を張っていて、ダメージはない。



「ウッ!!」フェンリルはダメージなどないのだが、傷ついているふりをしている。 攻撃が当たったように見せかけているのだ。



「狼のくせに魔法を持っていると聞いたが、大したことはないな。 俺たち二人を相手にしようなどと、うぬぼれるのもたいがいにしろよ」


 ザタンと共に、次々に雷魔法を放ってくる。


 フェンリルは出来るだけ避けるように逃げ回り、たまに(つの)で吸収して当たったようにみせかけ、ダメージを食らったように見せかける。 そして吸収した魔法を放って攻撃する。



 もちろん小出しに炎魔法で攻撃する事は忘れない。 あちらに結界を常に張っていてもらわないといけないからだ。 それにフェンリルは、今までほとんど魔力を使っていないのだが、こちらの魔力も枯渇(こかつ)しそうな事をアピールしなければならないからだ。



 しかし、何度も攻撃(吸収)を受けている内に、受けた雷魔法を小出しにして攻撃できることが分かった。


 それだけだはない。 吸収した魔法を放出せずに体に残していると、そのエネルギーで魔力回復することが分かった。




『我は最強になったな!』心の中でほくそ笑む。




 コーマンたちは追跡魔法を習得していない事が幸いだった。 逃げ回ればムダ射ちしてくれる。



 フェンリルは今まで6メルクの姿だったが、2メルクのサイズに縮んだ。 小さい方がムダ射ちしてくれると思ったからだ。



「ほう! 魔力がなくなってきたか? 今までよくやったぞ。 そろそろ諦めたらどうだ?」


 フェンリルは満身創痍(まんしんそうい)なふりをする。


『そうか、大きくなるのも魔力がいると思っているのか。 しかし、ケガをしているふりも疲れる······まだか?······』



 その後も何度か攻撃をしてきたが、確実に威力がなくなってきている。 それにザタンの攻撃がなくなった。




 その時、コーマンがザタンの背中に乗った。


『来た!!』考えとは裏腹に、フェンリルはもう動けないとアピールする。



「狼のくせによくやったと()めてやろう!! しかし、これで最後だ!! 死ねぇ~~~ッ!!」



 コーマンは爆雷魔法をフェンリルに向かって撃ってきた!


 

『これだけ戦ってきて、(われ)の能力にも気付かないとは、(われ)を狼と(あなど)っている(ゆえ)の失策だな。 冥途(めいど)土産(みやげ)にネタバラシをしてやろう』



 フェンリルは爆雷魔法を角で吸収したままスックと立ち上がる。



 爆発が起きずに驚いているコーマンたちにニッコリと笑いかけると、爆雷魔法に爆炎魔法を重ねてザタンに向かって放った。


 ズドドドド~~ン!! 今までにない大きな爆発が起こった。



 結界を張る程度の魔力は残っていたようだが、コーマンとザタンは別々に吹き飛ばされ、ザタンは山肌に激突して山の頂上を削り、そのまま山向こうにクルクルと飛ばされていった。

 既に魔力が枯渇して自分の力で飛ぶことも出来なくなったコーマンは、なす術もなく叫び声を上げながら下の虫がうごめく森の中に向かって落ちて行く。


 遠くに飛ばされたザタンが慌てて態勢を立て直し、コーマンに向かって飛んできたが、虫が群れている真っただ中に落ちて行ったコーマンに虫が覆い被さった直後、ザタンはフワッと霧になって消えていった。




 しばらくうごめく虫たちを見つめていたフェンリルは「あっ!」と、顔を上げた。



「しまった······ドゥーレクが実の兄なのを知っていたのか聞こうと思っていたのに······まぁいいか」





 もう一度森の中に視線を落としてから、飛んでいった。







魔法が効かない···どころか、魔力回復する?!

本当に最強かも!

(゜_゜;)

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