88章 ライラ
凄い早さで走ってくる者がいる!
ライラだ!!
88章 ライラ
その時、遠くから砂煙をあげながら凄い勢いで走って来る者がいた。 加速魔法を使っているのかと思うほどの猛スピードだ。
「フェンリル様ァ~~!!」
大声で呼んでいる。 背中に弓と矢を背負い、腰には剣を2本差している。 それでも動きは機敏だという所はさすがだ。
「ライラか······」
フェンリルもまんざらでもなさそうだ。 あれだけ慕われると、悪い気はしないだろう。
お上品極まりないエルフの姿とは思えないほどの走りっぷりだ。
ライラはフェンリルの前で息を整え、優雅なエルフに戻った。
「フェンリル様 また御一緒出来て光栄です」
「またあんな失敗をするなよ」
そう言えば、前にフェンリルがライラを助けたと言っていた。
「このライラ、5百年生きてただ一つの失敗。 二度とあのような事はしませんのでご安心を······あっ!······」
しまったという顔で俺を見る。
エルフは長生きなのは知っていたが、ライラは5百年も生きているんだ······という事を俺たちに知られて、ライラは少しばつが悪そうだ。
俺は別に気にしないが、そこは女性。 エルフでも年齢を気にするんだ。
「ファーディナンド将軍はアンドゥイ国側にいたぞ」
フェンリルに言われ、ライラは直立不動で答える。
「はい! こちらは私の指揮下になります! お任せください!」
「ライラなら心配ないだろう。 頼んだぞ」
「はいぃ!!」
ライラは真っ赤になって答えた。
言っちゃ悪いが、昔フェンリルに助けてもらったのは分かるが、狼の何がそんなにいいのだろう?
エルフの男達の方が数倍キレイだし、種族も違うし。
ただの憧れにしては度を越しているような······どう見ても目がハートになっている······例えば俺がミンミと話して顔が赤くなるみたいなことか?
······う~ん···想像できない······まぁいいか。
少し先に巨大な姿が見える。 ハイオーガのグレンだ。 周りにオーガも集まっている。
一生懸命フェンリルに話しかけているライラには悪いが、フェンリルも連れてグレンの元に向かった。
グレンは3メルク以上あるバカでかい剣を2本、腰に差し、背中に5メルクはある大剣···巨大剣を下げている。
「グレン、今回は3本か?」
フェンリルはグレンを見上げる。
「前みたいに折れると困るからな。 ドワーフの仕事は確かだが、この大きさだ。 どうしても折れてしまう」
「それは大きさのせいではないぞ。 お前が馬鹿力すぎるんだ」
「そうか、それは知らなかった。 ハハハハハ!!」
そういえばドワーフにしてもエルフにしても、武器を2つ以上持っている。 相手の数が多いので、予備という事なのだろう。 他のオーガも剣や弓や槍など、思い思いの武器を幾つも持っていた。
◇◇◇◇
あとは後方を固めているニバール兵だ。
まず、グリフォンとハーピーに守られた竜生神が攻撃を始め、初めに山脈を越えて攻めてくるであろう飛翔系の虫にエルフが弓で応戦し、地面から来る虫をトレントとドワーフ、オーガが対峙する。
そしてその後ろで構えているニバール兵が攻撃を潜り抜けてきた虫たちを叩く手はずになっている。
出来るだけこの場所で虫たちを止めたい。
1匹たりとも通すわけにはいかないのだが、多分虫たちは細かい作戦などされていないだろう。
というより、ニバール国を攻めるように命令されていると思われるので、わざわざ途中にいるニバール兵を殺すために足を止めずに、ニバール国に向かうと思われる。
この場所を突破した虫を、国境で2万の兵と傭兵達が迎え撃つのだ。
先に会いに行った国境でのマルケスとフィンやヨシュアたちは、緊張はしているが、落ち着いていた。
ニバール兵とも一緒だから大丈夫だろう。
······と、思う。
さすがグレン! 体も大きければ武器も桁外れだ!
( ̄□ ̄;)!!




