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67章 魔方陣

ゴブリンやエルフやトロールは、巨大昆虫がいる森の中を歩いてきて大丈夫なのかと、お偉いさんに聞かれた。

ヤバイかも·····

 67章 魔法陣



 翌日は朝から会議だ。


 戦争の専門家のお偉い方々が沢山いるのに、会議に俺は必要ないだろうといつも思っていた。


 一人のお偉いさんが俺に聞いてきた。


「あれから3ヶ月が過ぎて、ドワーフ山脈の東側は、巨大昆虫や魔物の数が急激に増えてきているように報告を受けているのですが、あのぉ······あちら側のゴブリンやエルフやトロールは、大丈夫なのでしょうかね。

 こちら側に来る途中で襲撃されてしまうと、大変なことになりませんでしょうか?」



 おっと·······気が付かなかった······お偉いさんの言うことはもっともだ。



 加護も与えているし、人間ではなく妖精だからと何の疑問もなく安心していた。


 住処(すみか)からここまで歩くと、遠い者で2ヶ月以上かかるだろう。 その移動中に襲撃を受けたら······いや、必ず襲撃される。 

 敵が集団でくれば大きな被害は免れない。


 



 俺は黙ってしまった。




 何かいい考えはないか······安全にこちらに連れてくる方法はないのか?


 全員が手をつなぎ、俺の重力魔法で飛んでくるか?······何万人も?


 それとも俺が結界を張って、ついてくるか?······ゴブリン、エルフ、トロール、それぞれ別に?······それとも途中合流するか?



 空間と空間をつなぐことはできないとレイは言っていた。 でもオベロンやグノームは召喚できる。 かといって、全員を召喚する訳にはいかない。 みんなが土の(たま)や妖精の(たま)を持っていないからだ。



「みんなをまとめて召喚できれば一番いいんだが······レイ、何か方法はないか?」

「召喚?·····できなくもないかも。 ただ、あちらとこちらに大きな魔方陣を描いて、マーが呼びに行かないとダメだけど」

「それくらい大丈夫さ! 全部一度に召喚できるのか?」

「さすがにエルフの3万は何度かに分けないとだめだろうけど、ゴブリンとトロールは大丈夫だと思うよ」


 レイがいけるというなら大丈夫だと確信した。


「皆さん、聞かれましたか?」と、エルフやトロールとゴブリンを召喚する事について説明をした。


 詳しい仕組みについては分からないようだが、それについては理解する必要もないし、実のところ俺もよくは分かっていない。 


 何千、何万の妖精を一度に呼ぶことが出来ると理解してくれればそれでいい。



 妖精の代表としてオベロンを召喚した。



 説明すると、とても喜んでいた。


「何から何までありがとうございます。 エルフはそろそろ出発しようと思っていたところですが、巨大昆虫が西側に近づくにつれて多く現われていたので困っていたところです。 それなら無駄な戦いをしなくて済みます」




 ということで、それから数日間の話し合いの末、それぞれのこちらの召喚場所(召喚後の待機場所)がやっと決まった。



 ◇◇◇◇



 まずはこちらの召喚場所に魔方陣を描いて準備を整えてから、ゴブリン村に飛んでいった。


 以前にもまして、巨大昆虫が増えている。 俺たちはハイスピードで通り過ぎていくので襲われることはないが、この森の中を歩いて突き抜けてくるのは至難の業だろう。



 ゴブリン村では、すでに話は聞いていたようで熱烈な歓迎を受けた。 しかし()ずは魔法陣だ。


 魔法陣を描く場所は事前に決めてあった。 魔法陣を描く事自体は大して時間がかからない。 もちろん手で描くわけではなく、魔法で描くからだ。


 魔法陣の設置が終了後「食事をどうぞ」「踊りを見て行ってください」「今夜は是非とも泊っていってください」と、さまざまな誘惑をしてくるが、先を急ぐので全てお断りして、次のトロールの住処(すみか)に向かって旅立った。



 ◇◇◇◇



 ゴブリン村のさらに東に行くと、巨大昆虫の数は減っているようだ。 一時ほど邪悪な気も漂っていないようで安心した。


 トロールの村でもオベロンから連絡を受けていたようだ。 前に来た時には気付かなかったが、ここにもオベロンの魔法陣があるので、時々様子を見に来るらしい。



 妖精の王様も忙しそうだ。



 俺たちが村の中に降り立ったのを見て、トロールたちが駆け寄り、ズギゴズがドタドタと走ってきて、ズドドン!!と目の前でひれ伏した。 



 もう少しで踏みつぶされるかと思ってちょっと焦った。



「シーク様、レイ様、フェンリル様、よくお越しいただきました! オベロン様から話しは聞いています。 こちらへどうぞ」


 よっコラショと起き上がって村のはずれに案内する。 歩きながらズギゴズが話してくれた。


「前に加護を頂いてから、村の中に巨大昆虫が入って来る事もなく、悪しき気によっておかしくなる者もいず、平和に過ごしております。 本当にありがとうございました」


「いえいえ、それは良かったです」



 えっ···ちょっと待て?······



『加護すると村の中に巨大昆虫は、入ってこれなくなるのか?』


 レイに聞いたつもりが返事をしたのはフェンリルだ。


『そんな事も知らなかったのか? ていうか、当たり前だろ? やっぱりバカだな。 クックックッ』


 しまった! 心通魔法を全開にしてしまった! やっぱり む か つ く !!






 村のはずれに広場がある。 どうやら急遽(きゅうきょ)広げたようだ。 トロールの数はそんなに多くはないが、何せ一人が大きいので、かなり大きな魔法陣が必要になる。


 巨大な魔法陣を描き終わって、最後にエルフの里に向かった。



 ◇◇◇◇



 湖の前まで飛んでいき、オベロンを召喚しようと思ったら、すでに例の船の前にライラが待っていた。


 俺たちに向かって大きく手を振っている。 

 俺達が降り立つと、真っ先に「フェンリル様! お会いしたかったです!」と駆け寄ってきた。



 どれだけ心酔しているのか······首ったけとはこの事だな······




 しかしライラはこの狼が()()()()()な奴だという事は知っているのか?

 すぐに人をバカにする()()()()という事は知っているのか?

 親切に教えてやった方がいいかな? 



 ちょっとの間、あれやこれやを想像して留飲(りゅういん)を下げた。 これくらいで許してやろう。




「なにかいいことでもあったの?」


 レイが聞いてきた。 俺は楽しそうに(悪そうな顔で)笑っていたようだ。 


「いや···べつに······」と言いながら、フェンリルも俺を見て不思議そうにしているのを見ると、楽しかった。



 ······ここまではさすがのフェンリルでも想像できないだろう! フフフフフ······



 ◇◇◇◇



 お遊びはこれくらいにして船から出ると、また静かな出迎えが待っていた。

 数千人はいそうなエルフが微動だにせずに並んでいる。


 先日泊まった場所とは違う森の中にエルフ兵がズラリと並んで道を作っている。 魔法陣を描く場所まで続いているそうだ。


 美しい山に挟まれた谷間を通り抜けると、かなり開けた場所に出た。 トロール同様、どうやらここも魔法陣のために樹を切って広い場所を確保したようだ。



 ここにもかなり巨大な魔法陣を描いた。



 閉ざされたエルフの里から魔法陣を通ってニバール国に直接帰ってきた。


 エルフの里は一種の結界になっていると聞いていたので少し心配したが、無事にこちらの待機場所に出てきて安心した。




 これで準備は整った。






問題解決!

これで準備は整った!

(; ・`ω・´)

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