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58章 マシュー·スタンフォード

エルフの王、ハルディンが天龍黒龍大戦について話してくれた。

 58章 マシュー·スタンフォード



 オベロンに促されて長い桟橋を歩いていくと、大きな門が開け放たれていて、ずらりとエルフ兵が並んでいた。


 エルフは進化したのかと思うほど美形でスラリとした体形をしている。 わずかに茶色がかったプラチナブロンドの髪は輝き、そして耳は尖っていた





 俺は、どうもどうも、こんにちはと、挨拶をしながらエルフ兵の間を通り抜ける。 それに数人が僅かに微笑んで答えたくれた。



 だって、俺のためにこんなに整然と並んでくれていて、なんだか申し訳なくって、挨拶でもしとかないとね。




 しかし、建物の中に入っても驚いた。


 巨木と建物が一体化していると言ったが、それは中も同じだった。


 壁や床がそのまま木を使われている所もあり、巨木の中を縦横無尽に繋げられいて、渡り廊下などは枝がむき出しに使われているところがあり、手すりもないその場所を平気でエルフたちは渡っているのだ。




 森のような里。 飛ぶように軽やかな動きでその中を移動するエルフ。




 回廊を歩きながら見上げた時、思わずそのまま見とれてしまった。


『二人とも口が開いているぞ』


 フェンリルに注意されて、俺とレイはあわてて口を閉じる。



 その後も上り坂になっていたり、廊下を曲がって階段になっていたりして、道に迷いそうなほど、縦横無尽に道が(つな)がっている。



 しかし、オベロンのに案内されて入った部屋を見て、また驚いた。


 あの船の時と同じ、小ぶりの部屋に入ったと思ったのに、かなり広い部屋だったのだ。


 それと装飾の見事さ。 フェンリル商団のような豪奢(ごうしゃ)というよりは、調度品は少ないのだが品よく高級感満載だ。 例えば窓枠一つにしても細かい彫刻や装飾が品よく施され、棚などはどうやって作っているのだろうと思うほどオシャレな作りになっている。 


 そして、他にも部屋があって湖が見渡せる広いベランダまであった。



「おかけください」


 オベロンに促されてソファーに座ったが、これも肘掛けなどは見事な細かい模様になっているので、傷つけないように細心の注意が必要だった。




 その時、男女のエルフが入って来て、俺は立ち上がって迎えた。

 二人は絵画のように美しい容姿をしていて、王冠とティアラを付けているので王と王妃だと思われる。



 あれ? オベロンが王じゃなかったの?



 二人はオベロンに軽く頭を下げた後、俺に丁寧に頭を下げてきた。


「よくお越しくださいました。 シーク様、レイ様、フェンリル様。 私はエルフ王ハルディンです。 それと王妃のイヴリン」


 イヴリンはよろしくお願いしますと優雅に頭を下げた。



 体が光っているのかと思うほど二人は美しかった。 きっとジッとしていると、彫刻と間違えるだろう。



 どうぞお掛けくださいと二人は向かいのソファーに座り、オベロンが俺の隣に座る。

 フェンリルは俺の横の床に座り、レイは肩にとまった。



「お話は伺っております。 先ずは御加護をありがとうございます。 そこで、オベロン様から5千の兵とお話をお聞きになっていると思いますが、我らエルフは3万の兵をお出しすることになりました」


 これは驚きだ! エルフ3万人とは凄い数だ。 既に話しが付いているのだろう。 オベロンも(うなず)いている。


「そんなに来てもらえるのですか?!」


「ブラックドラゴンとの戦いは、人間だけの戦いではありません。 我ら妖精や霊獣に魔物たちにとっても脅威となる敵です。

 シーク様を試した訳ではございませんが加護が頂けなければ我々は5千を出す事だけでも不安だったのです。 こうして不安を取り除いていただけたのですから全勢力を挙げて臨ませていただきます」


「とても心強いです。 よろしくお願いします」

「昔もマシュー様にこうしてエルフの里にお越しいただいたものです」

「えっ? 曾祖父を御存じなのですか?!」

「当然です。 私も共に戦いましたから」



 そういえばエルフには寿命がないとも言われている。 千年とも二千年生きるとも言われているのだ。



「御伺いしてもいいでしょうか? どんな戦いだったのかを······」

 

 ハルディンは少し遠い目になる。


「あの時の戦いは酷いものでした。 当時のブラックドラゴン竜生神が黒魔法を使って人間をアンデット化、または魔物にする魔法をかけてきたのです。 

 戦う相手は数百万の人間だったのです」

「人間を魔法で······酷い······」


「魔物にされた者はもちろんアンデットにされた者もそう簡単に死にません。 魔法をかけられていない人間と妖精と魔物が総力をあげて戦いました。 しかし、本当の戦いはレインボードラゴンとブラックドラゴン。そしてその竜生神同士の戦いでした」



 その話しは子供の頃によく聞かされた。 しかし曾祖父が勝ったがその傷が元で亡くなった事しか聞いていない。


 俺は生唾を飲み込んだ。



「私も自分の戦いに精一杯で、空中高くで壮絶な戦いをしているレインボードラゴンや竜生神がどんな戦いをしていたのかは分かりません。 というより、我々には早すぎて見る事もできませんでした。

 しかし、初めに決着がついたのはレインボードラゴンでした。 ブラックドラゴンが黒い霧になって消えていったのです」

「それならレインボードラゴンが加勢に?」


 ハルディンは悲し気な目で首を振った。


「すでにレインボードラゴンも満身創痍でした。 ブラックドラゴンを倒した時に力尽きて落ちた場所は残念な事に、アンデットが群れている場所でした」


 一つため息をつく。


「心優しいレインボードラゴンはアンデットになっているとはいっても、元は人間だった彼らを殺す事が出来ず、そのままアンデットに殺されて白い霧となって消えたのです」


「そんな······」


 俺はショックを受けた。 レインボードラゴンが優しい生き物だという事は知っていたが、そこまでだとは······


 チラリとレイを見た。 レイは涙を浮かべて今の話に聞き入っている。




「最後は竜生神同士の戦いでした。 どうなっていたのかは分かりませんが、お互いの魔法の剣がお互いの胸を貫き、空から落ちてきたのです。 再び落ちた場所はアンデットが群れた場所でしたが、先に死んだのはブラックドラゴンの竜生神の方だったため、魔法をかけられていたアンデットたちは一斉に崩れ落ち、こと切れたのです」



 そうか、黒魔法が切れた地点でアンデットや魔物にかけられていた者たちは死んだのか。というより黒魔術をかけた地点ですでに人間ではなくなっていたのだ。


「我々は急いでマシュー様を回復魔法で治そうとしました。 しかし、マシュー様に回復しないでくれと頼まれたのです」

「回復するのを()めた? なぜですか? それでは死んでしまう」



「マシュー様の奥方様のイリアン様は人間だったのですが······」

「えっ?! 人竜族ではなく、人間?」


 俺は思わず声を上げた。


 ハルディンは知らなかったのですか? というように俺の顔を覗き込む。

 そんな話を今まで一度も聞いたことはない。



「人間と人竜族の寿命が違うのは御存じですよね。 じつはあの戦いの少し前にイリアン様は寿命で亡くなっておられたのです」



 人間の寿命が尽きてマシュー様の奥方が亡くなった?



「お二人は本当に仲睦まじい御夫婦でした。 イリアン様がお年を召してからも変わらず愛し合っておられました。 

 しかし、奥方が亡くなってからというもの、何かに()かれたかのように戦いに没頭されていたのですが、最後に敵を倒した後には『疲れた、イリアンの所に行かせてくれ』そう言われたのです」


 マシュー様はイリアン様のいない世界が耐えられなかったのか。



 シンと静まり返り、レイが鼻水をすする音だけが響き渡った。





「今回は巨大化した昆虫が主戦力とお聞きしています」


 ハルディンが静寂を破った。


「そのようですね。 今のところは」

「ドラゴンの加護する魔法は、人それぞれ違うと聞いています。 ですから同じ黒魔法といえども同じ戦いになる事はありません。 昆虫は生命力も身体能力もアンデットとは比べ物にならないほど危険だと思われます。 油断だけはなさらぬように」


「ご忠告ありがとうございます」




 《戦力》



 人間の兵 ―― 10万 (内、竜生神·Sクラス 12人)

 オーガ兵 ―― 1万

 ドワーフ ―― 5千 (装備提供)

 ホブゴブリン・ゴブリンキング ―― 2千 (ゴーレム部隊 2百体)

 ハーピー ―― 5千

 グリフォン ―― 5百

 ドライアド ―― 百 (回復部隊)

 トレント(巨木) ―― 百

 トロール ―― 2百

 エルフ ―― 3万





マシューには、悲しい過去があったのですね。

( ;´・ω・`)


変更があります。

戦力

竜生神 12人 ⇒ 竜生神·Sクラス 12人


と、変更しました。



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