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52章 グリフォン

やっぱりグリフォンって、こんな生き物?!

怖いイメージが······

 52章  グリフォン




 穴の奥に入ると、目の前に広がる景色は壮観だった。


 200メルク以上の巨大な空間に、ひしめき合うように数百羽のグリフォンが並んでいて、壁にも無数の横穴が開いているようで、そこからも顔を出している。


 そしてその中心には美しい姿のドライアドが立っていた。


 足先まであるグリーンの美しい髪に、白っぽい薄いレースのようなドレスには青々しい葉や蔦が巻かれて美しさを際立たせている。

 もちろん、この世の者とは思えないほどの絶世の美女で、体がビミョーに輝いて見える。


 ドライアドはゆっくりと前に出てきて、優雅に頭を下げる。


『天龍様、加護者様、お越しいただきありがとうございます。 それと、フェンリル様、お久しぶりございます』


 あれ、声が出ていない?


『ドライアドはこのような話し方をいたします事を御許しください』


 俺が不振に思った事に気づいたドライアドは、再び優雅に頭を下げた。


「いえ、お気になさらず。 で、今回も加護を与えることが出来ましたか?」

『もちろんでございます。 今まで、ドライアドが浄化をいたしておりましたが、これで安心でございます』

「ドライアドの皆さんも戦いの時には来てただけると聞いています」

『わたくしどもドライアドは、攻撃は難しいですが、回復役でお役に立ちたいと存じます』


 そういえば名前を聞いていない。


「私の名前はシーク。 天龍がレイです」

『失礼いたしました。 私はセリアと申します』

「それと、グリフォンの(おさ)は誰ですか?」


 見回したがそれらしきグリフォンが出てくる気配はない。 


 すると、一羽のグリフォンが前に出てきた。 どうも先ほどの個体みたいだ。

 どれもよく似ていて分かりにくい。

 

「本来()()()()()()()()()()()」またそこだけ威厳たっぷりで話す。 やっぱりさっきの個体だ。


「俺たちにボスや(おさ)はいないんだ。 今回はたまたま俺が見張りで、天龍様たちの相手をしたので俺が(おさ)役だな。

 俺の名はディーム。 よろしく頼むわ」



 たまたまって······大丈夫か?



 しかし聞いていると、みんなが同じような軽い話し方をしている。


「そうだな、お前がいい」

「お前の当番だしな」

「連絡係に決定だな!」

「頼むぜディーム」


 それぞれ好き勝手に話している。 それもみんな口調が軽い。



 グリフォンって、こんな生き物なのか······



「ここは一応グリフォンの住処(すみか)って事になっているけど、普段は散っていてこんなに集結する事は滅多にないんだ。 一応シーク様の方からみんなに一言話してくれないか?」


 すると俺の前に来て、翼で覆い隠して声を潜める。


()()()()()になったから、もしもの時にみんなが散らばってたら俺が全員を集め回らないといけないんだよ。 めんどくさいだろ」


「でも、百羽と聞いているぞ?」


 俺の問いにディームはいやいやと、翼を振る。


「加護をもらった以上、もう大丈夫だ。 なんせ、ドライアドが浄化してくれないといつ暴走してしまうか分からなかったからな。

 でも()()()()()()()()()()()(なぜわざわざそこだけ声を変える?)数が少なく、8百ちょっとしかいないから、どれだけ役にたつか分からないけど、俺たちにとってもブラックドラゴンの脅威は他人事じゃないからできるだけの事はするつもりだ。 けっこう俺たちは強いぞ」



 確かに強そうだ。 



 それならと、俺はグリフォンたちに聞こえるように大きな声で話した。


「私は天龍の加護者のシークだ。 これだけのグリフォンの皆さんと共に戦えることを光栄に思っている。

 皆さんも知っての通り、ブラックドラゴンの脅威が間近に迫っていのだが、私が声をかけた時にはいつでも出撃できるように万全の準備をして待っていていただきたい。 それだけを忘れなきようにお願いする」


 みんなはお互いに(うなず)き合っている。 なかなか物わかりのいい魔物だ。


「みんなと一丸となって、ブラックドラゴンの脅威から世界を救おう!!」


「「「おぉぉぉぉぉ~~~~っ!!!!」」」




 ディームは小さく頭を下げる。



 どういたしまして。



 みんなに別れを告げ、洞窟の入り口まで出てきた。 ドライアドとディームが見送りに来てくれた。


「ディーム、よろしく頼むぞ」

「当番になったからには、精一杯頑張るぞ!!」



 ちょっと心配だが、まあ、大丈夫だろう。



「セリアさん、他のドライアドたちと、トレントたちの事はよろしく頼みます」

『お任せください。 では、お気を付けて』



 俺たちは再び飛び立った、




 ◇◇◇◇◇◇◇◇




 次のエルフの里は少し遠い。 ゴブリンの村のもっと先だ。

 そういえばもうすぐ日が暮れる。


「お腹が空いてきたな。 どこかで一休みしようか」


 ドワーフ山脈の手前の(ふもと)に降り立った。


「何か食べたい物はある?」


 レイが聞く。 そんな話を聞くと余計にお腹が空いてきた。


「食べたい物か······やっぱりフェンリル商団で食べた()()()が一番美味しかったなぁ」


 思い浮かべる。 香草で香ばしく焼かれ、ナイフで切ると肉汁がたれてくる。


「マー、手を出して」

「手を?」


 両手を広げて見せた。 レイは大きな葉っぱを俺の手の上に乗せた。

 何をするのかと思ってみていると、その葉っぱの上に肉汁がたれた温かい肉の塊が現われた。


「?!あちっ!!」


 しばらく何か起こったのか分からなかった。 しかし、その肉から鼻をくすぐる美味しそうな匂いがする。


 恐る恐る一口頬張ってみた。


「レイ!! あの時食べた肉じゃないか!!」

「うん、そうだよ。 他のがよかった?」

「とんでもない!! どうやって出したんだ?」

「マーが欲しいって言うから」


 フェンリルが可笑しそうに説明する。


「趣味で食うって言っただろう? 別に食べなくても死にはしないが、お前のために食べていたんだよ。

 まぁ、本音はレイ自身が食べたかったてのもあるだろうが、口に入れた物だけしか出せないようだからな。

 天龍の加護者ならこれくらい知っておけよ」



「記憶が戻ったけど、天龍のそんなの能力なんて知らないぞ!」



 フェンリルが笑う。


「ハハハハハハ!! こんな変な力は天龍だけだし、(われ)も前の天龍から聞いただけだから、誰も知らないがな!! ハハハハハハ!!」



 教えてくれないと分からんわ!!!



 しかし、美味い! こんな能力もあったんだ。 ただの食いしん坊と思っていた。



 レイ、ナイス!!



 そうか! 記憶をなくして始めに出してくれたリンガも、それまでレイはリンガしか食べたことがなかったから、それを出してくれたのか。


 わぁ······謎がとけたみたいな感じ?




 他にもいくつか美味しい物を出してもらって、お腹がおっぱいになった。




 これからは、レイには思いっ切り食べさせてあげよう!!




 ······今までも思いっきり食べてたけど······





レイの大食いには、そんな訳が····

( ゜ε゜;)

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