48章 初登城
ガドルにドゥーレクが黒幕という事を話た。 そしてとうとう国王と会うことになった。
48章 初登城
マルケスとヨシュアたちと共にガドルの家を訪問すると、アニエッタがドアを開けてくれた。
可愛い!
思わず、ニッコリと笑う。
「シークさん、おじいさまが御待ちです」
俺は頷くと、アニエッタの肩をポンと叩き、奥に入った。
リビングのソファーにガドルが座って待っていて、俺が座る間も惜しんで半分腰を浮かせながら聞いてきた。
「どうじゃった?」
「彼で間違いありませんでした」
俺はゆっくりとソファーに座りながら答える。 ガドルは次の言葉を待っていた。
「コーマンと名乗っていましたが、本当の名前はギリム。 レンドール国の宰相の手の者です。 俺が生きていることを知って、宰相が刺客として差し向けたのです」
ガドルは眉をひそめる。
「レンドール国の宰相ですか? 国王の差し金かのう。 しかしなぜその者がシーク殿を? シーク殿との関係は分かったのですかな?」
俺は少し逡巡し、一拍置いて口を開いた。
「レンドール国の宰相ドゥーレクがブラックドラゴンの竜生神です」
「えっ? マージェイン国王ではなかったのですか?」
みんなも驚いている。 当然だ。 国王が偽物などと思ってもいないだろう。
「今、王座に座っているのは、ドゥーレクが用意したただの身代わりで、本当のマージェインは·········私です」
「?!!············」
みんなは理解が追い付かずに「何を言っているのだ?」的な顔で固まってしまった。 ガドルまで。
「だ······誰がマージェイン国王と申されたのですか?」
「私がマージェイン・スタンフォードです。
コーマンの記憶を視た時に、全て思い出しました。
ドゥーレクは私の両親······レンドール国王と王妃に毒を盛り、王妃はその毒で亡くなり、国王は弱っているところを私の目の前でドゥーレクが刺殺したのです」
「ドゥーレクが、国王と王妃を殺したのですか······それは」
「私に傀儡になるように強要してきたのですが、それを拒むと地下牢に閉じ込め、黙秘魔法をかけたのです。
しかし私が逃げ出してしまったので、身代わりを置いた今となっては私の存在が邪魔者以外のなにものでもないでしょう。
そして、こうしてドゥーレクの悪事を他の者に知られることを恐れています」
ガドルは見透かすように俺を見つめた。
「シーク殿が本当にマージェイン様なら、コーマンだけでは済まないじゃろうな。 必ず第二、第三の刺客を送ってくるはずじゃ。
しかし、シーク殿が本当にマージェイン様であるという確証がないのですが······いや、天龍の加護者を疑うわけではありませんが······」
確証という事は、証拠だよな······
「父とは面識は?」
「ありません。 二代前の御方なら」
「マシュー・スタンフォードですね。
曾祖父はレインボードラゴンの竜生神で、200年前の[天龍黒龍の大戦]でブラックドラゴンの竜生神を倒したと、何度も聞かされました。 ガドル先生も活躍したと聞いています。
それから······そうですね······父の自室にはレインボードラゴンの絵画が飾られているのですが、先生が描かれたものですよね。 それを見ながらいつも天龍の話しを聞かされたものです。 これでは証明にならないですか?」
ガドルは目を見張り、ふぅ~と、力を抜いた。
「十分でございます。 お目にかかれて光栄でございます」
良かった。 認めてもらえてようだ。
「では、明日にはニバール国王にお目にかかれるのでしょうか?」
「すでに承諾を頂いておりますので、心配ございません」
◇◇◇◇
そこに町外れで待っていたスーガが、フィンに呼ばれて戻って来た。
話についていけなかったヨシュアたちには一連のスーガの事件の説明と、スーガとフィンには今の話をマルケスが身振り手振りで、まるで自分の事のように話している。
みんなの驚きようが可笑しかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日の朝、ガドル、ザラ、ホグスと一緒に寄宿舎を出ると、空から大鷲が飛んできて、俺の前に降り立った。
なぜ大鷲が? と驚いて見ていたら「グレン様です」と、ラズクが言う。
わぉ! 大鷲にもなれるんだ! オーガって、凄い!
驚きを隠すように、澄まして声をかける。
「来てくれましたか。 ちょうどよかったです。 今から王様の所に行きますので、一緒にお願いします」
「承知しました」
フェンリル! こっそり笑うな!!
突如現れたグレンにザラとホグスは目を見張って聞いているのだが、なぜかガドルはニコニコしている。
みんなに「ハイオーガのグレンさんです」と、紹介した。
するとガドルが前に出てきて、優雅に頭を下げた。
「ガドルです。 覚えておいでかのう? ご無沙汰しております」
それを聞いてまた2人が驚く。 俺も聞いてはいたけど少し驚いた。
「息災にしておったか」
「このように年を取りました」
「ハハハハハ、 だが、元気そうに見えるぞ」
「このような時に、ヨボヨボしていられませんのでのう。 フォフォフォ」
グレンはラズクの背中に乗り、フェンリルも一緒にガドルと楽しそうに話しながら歩いている。
そんな光景を後ろから見ながら『動物ショーでもできそうだな』と考えていると、フェルリンが振り返り、俺を睨んだ。
はいはい、すみません。 霊獣様でしたね。
アージェス、ギブブとも合流して、王城に到着した。
◇◇◇◇
城の中の広い会議室のような部屋に通された。 真ん中に大きな円卓が置いてあり、高い背もたれの椅子が15脚、並べられていた。
しかし、さすが王宮! それぞれの細工が見事で、部屋の装飾も品が良く美しい。
すぐに王様と共に兵士と文官が一人ずつ入って来た。
王様は50代前半位の優しそうな顔で、少し頭が薄い。 体格は中肉中背で赤いマントを羽織っている以外は、ラフな格好をしている。
格式張ったのが好きではなさそうだ。
そして「あの兵士が、もう一人のSクラスのハンニバル・スコット将軍だ」とアージェスが教えてくれた。
ついでに文官は宰相のルドガー・コズビーだそうだ。
国王が上座に座り、左右に将軍と宰相が座った。
国王の右側に座る将軍の一つ開けた隣に俺とフェンリル(椅子には座っていないけど)。 その横にガドル、ホグス、ザラ、アージェス、ギブブが座った。
そして宰相の一つ開けた隣のテーブルの上にグレンが止まり、横の床ににラズクが座った。
オーガにハイオーガ、妖精王と土の精霊王?!
国王は
目を丸くしている。




