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某サイトのように一ページが短い上に展開しない文。。
明日も仕事なのですが続きは近い内に。多分。
寝惚け眼の疑いがある己が目を拳で擦る。
ゴシゴシ。
ごしごし。
5454。
トントントントントン、トントントントンツー、トントントントントン、トントントントンツー。
願うように、祈るように、「俺はまだ寝惚けているんだ!」と信じて、問題の携帯電話の着信ライトを灯すフタを凝視した。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
【悪魔】
あい、分かった。
俺の、目は、―――正常だ。
フハハハ!良いだろう、現実を受け入れようジャマイカ!!
気が付いたら、乙女ゲーム(笑)の世界に転生モドキしていて、巻き込まれ脇役で死亡フラグ立ってるし、性別逆転した喪女になってるし、攻略対象とかイベントとかちょい変だし、オレ様生徒会長には呪われている宣言喰らった身の上だ!今更、これ以上何が起こったとしても、俺はもう驚かない!恐れるものは何もない!
………いや。でも、ちょっとコレ、中身見るの怖いかも。
俺は携帯電話のフタに灯る通知名をガン見しながら、そう思った。
俺の携帯電話は、ほぼ携帯していない家電の子機のようなものだ。
電化製品嫌いではない。常に携帯を持ち歩くような依存症ではないのだと主張したいところだが、ぶっちゃけるとただの無精である。
高校入学の準備で多忙すぎて、ほぼ電池が切れたらそのまま切れっぱなしが多い携帯は、登録件数が両手の指以下の詫び寂び情緒漂うのを察して頂ければお分かりだろうが、その用途の余りの必要性のなさから、マナーモードで鞄に入れっぱなしになっていた。
だから、今日も今日とてマナーモードで放置し、久々に充電して電源を入れた携帯は、途切れる事なく溜まりに溜まった着信を受け取っていた。個別音でわざわざ設定した「警告音」を鳴らさずに。
そう、警告音だ。
登録件数が、個人アドレスの着信音を個別で入れているのは一件のみ。
個人的にフォースの闇に堕ちた騎士のテーマソングか「オペラ座の怪人」とか、着信アリの「死の着信メロディ」とか、ヴェルディの「レクイエム」の「怒りの日」とか、バッハの「運命」とか、色々候補があったけれど、万が一当人に知られたら、あの妙に察しの良い奴の事だからわざとらしすぎるBGMは、その意図さえも即バレするだろうと思い、妥協としてカルミナ・ブラーナの「おお運命の女神」に着信音を登録していた(分かんない奴はネットで視聴してみてくれ。俺がどんな心境で選曲したか分かってくれると思う)。俺にとって、この着信音は警告音なのだ。「悪魔」からの着信アリ、という。
うん、いくら少ない登録件数だからって、実名以外の名前を付けているのは奴しかいないから、ぶっちゃけ、登録名だけでも警告にはなるんだけど、延々と着信通知が灯される携帯は中々に怖かった。これでマナーモード外していたら、マジで心臓に悪かっただろう。でも、こんな風に放置していたが故に溜まりに溜まった通知は、無視したらヤバいという忘れない為でもある警告音をわざわざ設定した意味がない。つーか、これヤバい。どんだけ、着てるの。履歴を見れば、メール50件に、電話50件。鬼か。いや、悪魔か。
「悪魔」――――辻馨とは、遠縁すぎて最早本当に血が繋がっているのか微妙な類の親戚である。色々と所以があって、繋がりがあるのだけれども、取り敢えずそこは割愛するとして。
同い年の彼は、遠縁なだけあって、俺とは似ても似つかぬ正反対の極致にある。
まず、容姿。
一言で表すと、美少年。まず初見で、本当に俺の親戚かと疑われる。
ついでに言うと、見た目含めて可愛く言えばツンデレ枠だ。今のところデレは見たことないが。
青みがかった金髪のアッシュブロンドは、遠い異国情緒を思わせる目に優しい色合いだし、瞳はこれまた綺麗なブルーグレイなもんだから、日本語の名前が浮いているくらいだ。いや、個人的には名前が雅な響きな分、和洋折衷な感じで良いと思うんだけどな。これでまんまジャックとかマイケルとかそっち系の名前なら、ただの外国人だし。
ハーフやクオーターじゃなく、ワンエイスという薄い血の連なりの確率で、見事先祖返りの容姿を持つ彼は、マジで外国人にしか見えない。本当に俺と親戚なのだろうかと思うくらい月とすっぽんレベルの美醜差がある。イケメンといえばイケメンだが、中性的な美しさを持っているもんだから、イケメンというよりは美少年。女の俺より美しいとか喧嘩売ってんのかと、以前の私は思っていたが、今の俺は前世の「俺」よりイケメンって喧嘩売ってんのかと思っていたりする。どっちにしろ、ギルティ。怖すぎて面と向かっては言えないけどね。
あとは、テンプレ的な金持ちで血筋も雅な家柄だ。あと、超頭の良い学校に通っている。容姿も権力も頭脳も素晴らしいって、どんな勝ち馬。
もう、ここまでくれば、俺と親戚って嘘八百なんじゃね?とか妄想乙とか、真剣に思うんだが、超うっすいらしいけれど、パチモンじゃなく、マジモンの親戚らしい。……つか、そこまで薄いのなら、最早赤の他人なんじゃとないかと思うのだが。うん。
兎に角、天使のように麗しい容姿のこいつは、中身は悪魔そのものだった。
親戚の欲目で言えばツンデレだが、ただの鬼畜っつーか、悪魔。
アレだ。天上天下唯我独尊的な。
いつか唯一神とか言い出さないか怖いレベルの女王様的な王様。オレ様生徒会長は、まあ、「(笑)」で許せるけれど、あいつのは超怖いドSなオレ様だから、親戚であるが故に笑えない。人畜無害なこの俺の血の繋がりあるって、マジで奇跡だと思う。おい、本当に、お前親戚か。思いっきり他人のフリしてえわ。オブラートに包みまくってツンデレ枠って言ったけど、もうこいつドS枠で良いんじゃないかな。うん、嘘は良くない。ドS枠で決定。
乙女ゲームの世界のモブにしてはキャラが濃いが、俺の親戚である辻馨は、正真正銘モブだ。俺が通う聖アールグレイ学園には在籍していないし、そもそも住んでいる場所も遠い。乙女ゲーム的には圏外である。
そんな、ゲーム的には直接繋がりがない悪魔だが、連日のトラブルに精神的にまいっていた俺は、メールを開く前から嫌な予感がしていた。虫の知らせというヤツだろうか。50件という夥しい量の鬼メールと鬼電からも、すっごい嫌な感じがしていたが、なんつーか、うん、俺のシックスセンスが告げていた。このメールは開けるべきではないと。このまま携帯電話の電源をブッチして、御札を貼った箱に詰めてお寺に預けた方が良いと。なんなら、学園のチャペルに直行してお祈りするべき案件だと。
「……………仮名四葉?」
びっくうう。
擬音語を付けるならそんな感じで俺の体はギャグ漫画よろしく慄いた。
恐ろしい相手からの通知に、登校ギリギリの時間までフリーズしていたが、慌てて教室へと向かい、遅刻せずに間に合ったSHRが終わって、俺はこっそり携帯電話のメールボックスを凝視していたのだが。
「あ」
空気を読まない隣の奴が声を掛けてきた所為で、うっかり悪魔からのメールを開いてしまった。
To be continued…?
少女は、答えを求められる。




