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短いよ。知ってるよ。
……下らない茶番だ。
一応、ゲームの進捗状況を確認するには必要な情報ではある。
幾ら馬鹿馬鹿しいパワーゲームとラブゲームの茶番でも、己の死亡フラグを思えば後手に回る訳にはいかない。気怠い7限目で眠気が半端ないが、ロリコン教師がなんと答えるかと、重たい瞼を押し上げて事の顛末を見届ける。
「北城の言う通り、慣習に従うべき場合も多々ある。だけど、今回はまだ一年の新学期だ。機会は均等に与えたい。さっきも言ったが、俺もまだクラスの生徒を把握しているわけじゃないし、二人とも自ら立候補してくれたやる気が十分にある生徒だ。二人とも委員長として必要な率先力があると思う」
男女雇用機会均等法だっけ?関係ないケド、なんか懐かしいの連想させるな、オイ。
舞台は、さながら上流と下流の争いってか。
マジで、この世界設定時代錯誤だろ。今時、どこにこんな貴族主義的な学校があんだよ。平家に非ずんば、人に非ずってか?こんなクソみてーな設定考えた奴、マジで私刑にしてミンチにしてやるぞ、コラ。
……苛々で眠気が覚めてきた。ちょいカルシウム不足を懸念するぜ、俺氏。
ロリコン教師は、存外真面目な顔でクラスを見回した後に、フッと微笑を零した。北城麗香と四季恋華を見る姿は、爽やか枠であり、誠実の人らしい穏やかな声音で以て教師らしく諭すようなものだった。
「だから、ここは……」
これはどうやら、ロリコン教師とメインヒーローとのイベントは起こしたっぽいな。二人の内どちらかとイベントを起こしてない場合は、問答無用で悪役令嬢に軍配上がるし。
「古今東西、平等で公平な判断ができる方法で委員長を決めようと思う」
……うん?
「先生?」
勝気な態度でいた北城麗香が戸惑うような声を上げる。
「それって…」
四季恋華は見当が付いたのか、口元に手をあてがって目を丸くしてロリコン教師を凝視。
いや、俺も奴の言葉で大体の見当が付いたけれども。
「まあ、運も実力のうちって言うしな」
爽やか担当の攻略対象様は、明るく爽やかに言い切った。
「……………………………ハッ」
いかん、思わず呆然自失してしまった。
あ、ありのまま、今起こった事を話すぜ?
何を思ったのかロリコン教師、カッコよく生徒を諭し、人類皆平等、学生に身分なんてないさ!みたいな青春モノやるかと思ったら、ガキみてーな方法を提案しやがった。
じゃんけん。
シザー、ペーパー、ロック!
あかん、英語で言ってもただのじゃんけんだ。
小学校とか幼稚園児が喧嘩した時の解決方法だ。
もしかしたら、世界で一番平和で世界共通の解決方法なのかもしれんが、じゃんけんだ。高校生にもなってじゃんけんだ。乙女ゲームでじゃんけんだ。
よもや、この期に及んで、権力にビビったのかこの野郎とか心の中で罵っている間に、なんと、キャットファイトは平和的かつ可及的速やかに終了した。
委員長イベントは、まさかの「じゃんけん」で勝敗を決してしまったのである。うん、マジで。マジ、マジ。リアル、リアル。――え、大マジで?
こんな展開知らんけど。え、なにコレ。どういうコト?
うぃなー、主人公って。
え?
え、これ、結果的に主人公が勝ったってことは、ゲームのインジケーター的には好感度高いってことでいいんだよね?これ、ラブメーターで合ってるよね?俺、この世界の認識乙女ゲームで間違ってないよね?ね?
……つか、超今更だけどさ。
この委員長イベントでいた筈の――皇煌夜がそもそもいなくね?
To be continued…?
そして、彼女はとある事実に邂逅する。




