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なんでもアリな闇鍋ゲームで詰んでる俺は脇役兼死体役イコール被害者な件(仮)  作者: 来樹
1章 ようこそ、聖アールグレイ学園へ!
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お久しぶりです!

閲覧、拍手、コメント、評価、ブクマ、ありがとうございます!!

 屈辱の体育の授業後。

 スーツ眼鏡のできる科学女教師や、ふわふわ家庭科女教師、幸薄そうな現国男教師、好々爺っぽい古文のおじいちゃん教師、口から先に生まれて出たんじゃね?な地学男教師を経て。

 (つい)に、やってきた7限目LHR―――委員決め。

 

 

 どんどんぱふぱふうう。


 俺は死んだ目で、心の中で陽気に呟いた。

 いや、だって、せめてメンタルだけでもポジティブにしたいじゃない。

 フィジカルは既に、死に体だからさ。

 久々に体動かしたし、意外とハードな学生のスケジューリング舐めてたわ。

 昨日から思っていたんだが、何が悲しくて、今更高校一年生のカリキュラムなんぞやらなきゃらんのだ。しかも、女子高生の体で。……いや、正真正銘私は女だからソレはソレなんだろうけど。でも、精神年齢ってぶっちゃけ前世『俺』の記憶もあって、今世の『私』にとっては+αなワケで。

 「()ずは、学級委員を決める。立候補がなければ、推薦形式な。まだ三日目だけど、昨日は通常授業だったし、まあなんとなく推薦できそうな奴とか分かるだろう」

 自分的には、二度目の高校生生活で。しかも、前世よりハードル高いお金持ち学校の授業に必死にかじりついている身で。ねえ、まだ俺この学校通って三日目よ?既に学業のレベルがギリギリって何事?どういうカリキュラム組んでるんだこの金持ち学校。

「委員長、副委員長、それぞれ立候補したい奴は挙手してくれ」

 そして、前世でも今世でもインドアな俺。

 体育とか、集団行動とか、移動教室とか、超だるいッス。

 勉強が好きでも何でもなかった前世俺の意識が、今世での高校生という立場に不平不満だらけで、心が追い付かず、体も引っ張られている。そして、久し振りの学生という立場に、色々とミスらないか、らしくもなく緊張感で一杯一杯だったのだ。精神的な疲れと、実際に緊張感で引き攣りっぱなしな体が疲労が重なって、気分はブルーマンデー。社会人かよ!みたいな。

 「……えっと、15番の香取か」

 ……まあ、でも。

 『私』は、『俺』に引き寄せられ過ぎなのかもしれない。

 だって、『私』は間違いなく15年この身で、学生という立場で、勉強に励み、自立しようと子供なりに考えてこの学校を志望したのだから。

 『私』と『俺』は同じモノだ。

 そこに差異があるなら、それは性別からくるものだったり、人生経験だ。

 昨夜眠りについた俺が、今朝目が醒めた時―――『俺』は紛れもなく『私』だった。

 願うように、祈るように、元居た世界に、『俺』に、戻してくれと。

 そう、眠りに付いたというのに。

 目が醒めたら、こんな世界、夢オチ以外の何ものでもないと、碌でもない夢を視たと、鼻で哂い飛ばせる筈だったのに。

 それなのに。

 前世と今世と、わざわざ認識していた「事実」を否定してまで、夢だと思い込もうとしていた『俺』の期待はあっけなく破れてしまった。

 『俺』は『私』の肉体のまま、世界は乙女ゲームの世界のまま。

 「香取は委員長に立候補か?」

 「…いえ。僕は、副委員長で」

 「分かった、副の方な。他に副委員長の立候補がなければ、香取に副委員長を務めて貰うが、良いか?」

 ぼーっと、教卓に立つロリコン教師と、立候補者らしい出席番号15番君のやりとりを聞く。話半分だけど。だって、興味ないし。

 まあやりたい奴がやれば良いし、推薦されるのもやだし、怠いし面倒くさい、それぞれ本音だだ漏れな小声が教室内に広がって、ロリコン教師は苦笑してそれを承認と見たのか一つ頷いて口を開いた。

 「よーし、お前らの気持ちは十分に分かった。じゃあ、副委員長は香取で決まりだ。ほら、拍手」

 周りはロリコン教師の言葉に、それぞれ控えめな拍手をする。俺もそれに便乗してやる気なく拍手した。何にせよ、俺がやるという選択肢など欠片も存在しないのだから、やりたい奴が頑張ってくれるなら大賛成だ。

 「次に委員長だが…」

 「わたくしがやりますわ、先生」

 ロリコン教師の言を遮るように、教室に響く大きすぎず小さすぎない声。

 ―――うん、テンプレ。

 「北城」

 周囲の目が、声の持ち主である彼女――北城(ほうじょう)(れい)()に向けられている。

 長い紺色の髪を縦に巻いた、蝶が付くミセスを連想させるが、その容姿は十二分以上に整っている。プロポーションも良いし、成績も確か上位常連者。家柄も相当有名どころで申し分もない。ただ一つ、残念な役柄を与えられているという一点を除けば。

 「あー…、でも四季(しき)も挙手しているし」

 ロリコン教師が、真っ先に名乗りを上げた北城(ほうじょう)(れい)()と、こちらはおずおずと手を()げていた四季(しき)(れん)()の二人を見比べて、困ったように頬をかく。

 「えっと…」

 ロリコン教師に名前を呼ばれた四季(しき)(れん)()は、真っ直ぐ挙げていた手をおずおずと耳元まで下ろし、更に下げて立候補を辞退しようかと思案している。

 新天地とも言える聖アールグレイ学園に外部入学し、これまでの引っ込み思案な性格を変えようと積極的に周囲に関わろうと決心した彼女は、クラスをまとめる学級委員長をやる事によって目標への前進、また内部組や外部組とも馴染もうと考えた……っていうのが、この時の主人公側の行動理由。うん、ゲームで確かそんな説明描写があった。立候補は緊張するし、本当に自分にできるのか分からないし、でも他に誰もやらないなら、それに理事長にもこの学園で変わって行けるように頑張りなさいとか言われたしとか、そんな普通の少女の揺れる心理描写があった。めっちゃ勇気出して手を挙げたみたいな感じで画面も揺れてた。一瞬、戦闘が始まるのかと思ったぞ、俺は。違ったけれど。ちょっぴり残念だったけど、よくよく考えたら俺がプレイしているのは王道乙女ゲー。戦闘なんてなかった。ちっ。

 学級委員長の立候補で四季(しき)(れん)()と被っちゃった(つーか被せた?)北城(ほうじょう)(れい)()

 恋のライバルキャラ、当て馬、まあ色々代名詞があるが、よく言う「悪役令嬢」。それが、彼女の立ち位置である。故に、この状況は起るべくして起こったイベントなのだ。

 OPの皇煌夜(メインヒーロー)との出会いから始まり、共通ルート、分岐点をいくつかクリアしてから次に来るのが、コレなのだ。キャットファイトというにはまだまだ前哨戦すぎるが、これから追々とおっかねえ争いを繰り広げる事になる。

 因みに、この「学級委員長」のイベントは共通イベントで、入学式から僅か三日目の短期間で熟したイベントでの各攻略対象者の好感度で決まる。簡単に言えば、好感度が高ければ主人公が勝者、低ければ敗者。学級委員長になれるかなれないかで今後のルートも微妙に変化して行く。

 確か、このイベントのクリア達成には、ロリコン教師と未来の生徒会長の二人の推薦の両方、或いは片方とクラスの推薦だっけな。因みに、クラスの推薦は攻略対象者による推薦があってこその追従の承認みたいな感じ。攻略対象者の好感度による発言内容によってその追従の度合いが変わる筈。


 例えば、ロリコン教師――上杉誠也(うえすぎせいや)の好感度が高い場合。

 

 「外部生組で慣れないながらも、委員長を敢えてやろうという心意気、買った!俺は四季(しき)を推薦するが皆はどうだ?」


 オレ様生徒会長―――(すめらぎ)(こう)()の場合。



 「お前がやれ」


 うん、両者、それぞれ性格が出ている台詞だな。ロリコン教師のは古臭いが、未来の生徒会長サマはオレ様すぎだ。しかも一言だし。


 ぶっちゃけ、頬杖付いて煎餅でもバリバリ齧ってこの茶番(イベント)をやり過ごしたいくらいなんだが。

 漸くまともな主人公のゲーム進捗状況を得られる機会でもある。ここは、一丁、主人公のお手並み拝見と行きますか。

 俺はやれやれと、目の前で切って落とされた戦いの幕が上がるのを脇役(モブ)らしく見届けるのだった。








To be continued…?





彼女は、ある意味大事なことを失念している。

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