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突如、四葉(多分このお話の主人公)を襲う急展開!
未来のオレ様イケメン生徒会長、四葉の疑念を晴らし、謂れなき汚名を雪ぐことができるのか!
次回乞うご期待!(←何故冒頭で次回予告とか野暮なことは言っちゃいけねえYO★)
ガンッ!
まるで石壁に頭を打ちつけるような、出鱈目な痛みが脳天を突き抜ける。
「「~~~~~~っつ?!」」
突然の出来事に、二人揃って頭を抱えてしゃがみ込む。が、その際に何故か俺の後頭部に奴の左手が回され、引き寄せられた。
「う?!」
壁に付いていた左手が後ろ頭に、俺の顎を掴んでやがった右手が頬に。痛みのあまりに視界が真っ白で一瞬意識が飛んでいたところを、イケメン野郎の両手に引き寄せられるがまま奴の方へ傾く。
――――正面向かい合っている姿勢で対峙していたのだから、勿論それは、超絶美形何様オレ様未来の生徒会長の眩いばかりのご尊顔の方へ。
只でさえ他者同士踏み入る事のない距離にパーソナルスペースを侵されていたのに、これ以上ない至近距離にその顔がドアップで迫ったので、俺の目ん玉は飛び出さんばかりに見開いた。
いやいやいや、待て待て。ストップ、ストップ、ストーップ!!!!!!!
いや、マジねーよ。どこまで近づくんだよ、つか、おかしいだろっ。
さっき俺ら、控えめに言っても、「ごっつんこ☆」しちゃったよね?したよな!
それなのに、頭をかち割る勢いで思いっきりぶつけ合った頭を、一体全体どうして再びくっつける?!!
頭抱えるのに、何故、俺の頭ごと抱え込んだ?!
折角離れた距離を、何故縮める?!
何の予備動作もなくその場にいきなりしゃがみ込んだ不安定な体勢だったから、重心取っていた頭を引き寄せられたばっかりに、あっさりと頭どころじゃなく体も生徒会長の胸元に倒れ込むという。なんて、素敵に二次被害。いや、三次か。……正に、大・惨・事☆だな、オイ!
眉間にぎゅっと皺を寄せ、瞼を閉じて痛みに呻くイケメン。
吐息が直接顔にかかって、俺の眉間もイケメンとお揃いの深い皺が寄り、そのまま白目を剥きそうになる。
何故だ。
何故なんだ。
この世界は正真正銘乙女ゲームの世界の筈だ。
主人公と攻略対象達の為に作られた箱庭の世界。
それなのに。
――アレ。ひょっとして、俺ってば、ギャグ漫画の世界に生まれ変わったんじゃね?
これが捨て身の喜劇でなければ、ただの悲劇だ。シリアルだ。つか、此処があの世の地獄じゃね?現地で生き地獄ツアーってやつじゃね?ちょー、えげつなくね?神様ちょー性格悪いわあ。まあ、性別入れ替える時点で悪意しかないよね、コレ。訴訟も辞さない案件だぞ、コレ。よし、殺ろう。
ショッキングな展開の連続で理性が焼き切れ物騒な思考回路になりかけたところで、漸く状況が動いた。
「………仮名四葉?」
いつの間にか、苦痛に呻いていた生徒会長が閉じていた目を開いて俺の名前を呼んでくる。
自分で引き寄せた癖に、視界の先に俺がいる事に驚いた様に瞳が揺れている。
まあ、互いの体が接触してるし、頭を抱え込んでいるから奴自身の胸元に俺の体がすっぽり収まっちまってるしな。俺もびっくりだわ。
それに、この距離だと香水付けてなくても互いの体臭が分かるし………ん?
これって。
くん、と鼻がかいた香りに、覚えがあって首を傾げた。
春の季節にはない、儚く淡い花の香り。
てっきり、この手の意識高い系のイケメン坊ちゃんは、身嗜みとしてシトラスだのムスクだのの香りもイケメンな香水とかを付けているイメージがあったんだが。
まるで、真逆のイメージの香りに、生徒会長と目が合ったまま瞳を瞬いた。
頬を寄せるように、優しく花を覗きこまないと分からない程に淡い香りのそれは―――…。
「お前………、もしかして」
思わずその花の名前を象ろうとした唇が、先を制するように相手の声に遮られる。
「呪われているのか」
疑問ではなく、断定の硬いそれが、静かにその場に響いた。
To be continued…?
そして遅々として進まないおはなし。うん、分かっていた。




