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なんて素敵に…から始まる小説タイトル思い出しました(笑)
はっきり言って、恋愛モノは苦手だ。
それが、映画であれ、本であれ、歌であれ、ゲームであれ。虚構であれ、現実であれ。
愛を囁き合い、幸せそうに笑い合う恋人同士を見るのも。
家庭を持った夫婦を見るのも。
愛という名の営みで―――結果、俺という子供が生まれ落ちたのだとしても。
『―――お前さえいなければ……っ!』
耳の裏にこびり付いて離れない記憶は、魂に刻み込まれたかのように、忘れる事もできずに、この身を呪い続ける。
嗚呼。ほら、現実はいつだって残酷だ。
「――――――」
血のように紅い瞳の持ち主は、その綺麗に整い過ぎた唇は何かの言葉を象った。
だけど、その光景をスローモーションのように時間間隔がトチ狂った視界の先で見た俺は、彼がどんな言葉を紡いだのか知りたくもなくて、咄嗟に立っていた太い木の裏側に隠れてしまった。って、オイ。
ちょ、俺ってば、此処は華麗にBダッシュの場面だったのでは?!
何で、咄嗟とはいえ、木の影に隠れるワケ?!さっさとズラかればオールオッケーだったじゃないか!これじゃ、余計に逃げにくいじゃん!何してんの!
でも、あの目を見た瞬間、何故だか足ががくがくと震えだして、立っていられなくなる。
あ、やば……。
くらりと体が傾きそうになる瞬間、腕の中に抱いたままだった猫が「にゃー?」と鳴くのが聞こえ、俺はハッと我に返った。
「っつ……!」
その場に座り込みそうになるのを、辛うじて堪える。
何だか訳が分からないが(つか、それはこの世界にTS転生した時点で意味わかめだけど)、アイツは危険だと、本能で悟る。
例え、それがさっきまで同じ机を並べていて、昨日は登壇してその演説に耳を傾けた相手だとしても。
初めて、まともに目を合わせた気がする相手は、今日一日ずっと隣で座っていた彼だったのだというのに。
どうして、何故。
「……意味、分かんない」
こんな、展開知らないんですけど。
突然の事に鼓動が不規則に乱れるのを自覚する。
烏の濡れ羽色の、黒髪。深紅の瞳。
王冠のシンボルを持つ攻略対象。
皇煌夜。
なんで、あいつは。
「笑った……?」
無表情だったから分かる。確かに、あいつは、口角を上げて、そして。
あいつは、俺を見て、笑ったのだ。
なんで………?
腰が抜けそうになるのをギリギリ堪えてその場に踏み留まっていた俺は、遠くで予鈴が鳴るのが聴こえて慌てて今度こそその場から脱兎の如く逃げ出した。
だから、膝の上に少女を乗せた彼らのイベントがどうなったかなんて頭の中から消えていて。礼拝堂のイベントの進捗状況の確認も怠った不手際が後から纏めてやってくることになるなんて悪夢を、この時の俺は露とも予期できなかった。
うん、確かにさ。
悪い事は忘れた頃に纏めてやってくるってよく言うもんね。
俺が悪かったつーか、後手後手に回った俺の要領の悪さ?でも、俺がこんななんちゃって乙女ゲームの世界にTS転生しちまったのも、死亡フラグがある役回りのモブなのも、生まれてくる先の親選べないレベルの止む得ない運の悪さって奴じゃね?つまりは不可抗力。まあ、それもそんな悪運の星の元に生まれついた俺の運のなさが悪いとか言われたら、何にも言えないけどさー。でもさ、絶対コレ理不尽って奴じゃね?これ以上俺に何を背負わせるというのか、神よ!ひでーよ!俺が一体何したっていうんだああああああ!!!!!!!
「仮名四葉」
はい!それは私の名前ですね!
「考え事とは、余裕そうだな。その気弱そうなナリは仮初めのものということか?」
別に、俺は張りぼてではありませんが、何か?
つか、俺の何処を見たら余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)に見えるって?眼科紹介してやろうかああん?
表情筋をこれでもかっていう程引き攣らせて、見上げた先にあるのは麗しいご尊顔。黒髪、紅目の超絶美形の彼は勿論攻略キャラ。皇煌夜氏です!きゃー、ぱちぱち。
ちっ。
意外性ないなあ、オイ!
いや、マジでちょびっとなんつーの?フラグっぽいの(断じて恋愛じゃなく寧ろ真逆の死亡の方)踏んだかなとか思っちゃったりしてたけど!もっと言うなら、礼拝堂に居た攻略対象の方も勘が告げるにはこれから先またブッキングしちゃいそうだけど、やっぱ、お前が先にきたか!同じクラスだし、席隣りだもんね!分かってたよ、こん畜生め!!!!!!
えー、改めて今の状況を説明しようじゃないか、諸君。
ちょっと変なテンションなのは俺の事情を察して欲しい。
つか、こうも立て続けに予想もつかない展開が起こってちゃ、こっちのキャパがオーバーでシティである。そりゃ、変なテンションにもなるわ。
コホン。
閑話休題。
只今、俺は人気の絶えた廊下の奥、階段下の物置の暗がりに連れ込まれた挙句に、壁を背に少女漫画でいう「壁ドン」を、超絶美形何様オレ様生徒会長様(未来の)にされています!
うん、自分で言ってて意味分かんねー!
何で、こんな状況になった?!!!!
「仮名四葉」
「!」
混乱のあまり視線をうろちょろさせたのが悪かったのか。
或いは一切の反応を返さなかったのが悪かったのか。
はたまたポーカーフェイスを作りすぎて引き攣った表情筋が傍から見たら全然無表情で変わってなかったのが悪かったのか。
―――いや、この何様オレ様生徒会長の事だ、全部かも。
「俺を見ろ」
「っつ……!!」
キタ―――!!!!!!!
思わず顔文字まで使いそうになる第二次形態に移行。そう、少女漫画で言う所の、「顎クイ」です、奥さん!
イケメン限定の高度な技のコンボに、俺は大ダメージ。フツメンやブサメンがやったら速攻腹パンの、自意識過剰な顔面偏差値が高い野郎しかできないイケメン行動をこうまで自然に、見た目喪女にまで駆使できるなんて。くっ、このイケメン野郎め、存外にやりおる。
駄菓子菓子!
俺、「男」ですからー!
胸キュン?ナニソレおいしいの?フォーリンラブ?落ちるか、バーロー!!
寧ろ、鳥肌、寒イボ立ったわ、ボケ!
ふははは、残念だったなこのイケメン野郎!俺「男」だし、私「女」だけど、「俺」という意識が蘇った時点で性差の問題はノープロブレム!性的な問題は超越したのだ!!まあ、例え女の意識しかなくても、この見た目も中身も「乙女」を捨て去った男っぽい性格からしてどれだけハイスペックイケメンにも恋には落ちなかっただろうが。
という事で。
フツメン、ブサメンアウトなこの行為。
例え、ただしイケメンに限るという一連の「壁ドン」、「顎クイ」は、俺には何の免罪符にもなりはしないので。
「ギルティイ!!!!!!!」
予備動作なしのほぼゼロ距離から腹パンを決める。
「っつ?!」
まさか、こんな地味で喪女が物理的な攻勢に出るとは予想だにしなかったのか、ハイスペックなイケメン生徒会長はもろに腹に俺の拳を受け止めた。
ぐふとも、げふとも、況してや情けない苦鳴の類もろくに吐かなかった事は流石イケメンとでもいうのか。息を詰まらせて、やや上体を屈ませて耐えて見せたのは拍手もんだったが、根性かプライドかは知らんが、俺の顎を片手で掴んだままだったのは宜しくなかった。
手加減なしの全力のグーパンだったのに、普通なら腹を殴れば距離が取れる筈だったのに、何の因果かはたまたこの世界がなんちゃって乙女ゲーム(笑)の世界だったのが災いしたのか。それとも、ここにきてまで俺の運のなさが作用したのか。
上体が傾いた所為で、壁ドンしていた片手が滑り、そして放さなかったもう片方の手で俺の顎を持っていた無理な体勢が見事に最悪な方へと崩れた。
そう、ほぼ距離がない姿勢だった為に、不意を突かれた皇煌夜は俺の方へと倒れ込んで…………。
To be continued…?
明けましておめでとうございます!
一月末日ギリギリ間に合わなかった(笑)
そして、書けるところまで書いているので全然進まないという悲劇。
あと、キャラの全体図があやふやなのでイラストまでの道のりが遠い。机が狭いからイラスト描こうという気力がまず沸かないし(←アナログ人間)
頑張って続きを亀の歩みで投稿しますね!
閲覧、拍手、評価、ブクマ、皆様本当にありがとうございます!!!




