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なんでもアリな闇鍋ゲームで詰んでる俺は脇役兼死体役イコール被害者な件(仮)  作者: 来樹
1章 ようこそ、聖アールグレイ学園へ!
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 「………体育館裏とか、桜の樹の下とか、中庭とか、屋上とかバリエーションならいくらでもある中、敢えての教会とかマジ怖いわー」


 とうとう、表の口調までも「俺」っぽく男口調になっちまってるけど、若干動揺は静まってきている。多分。その筈。きっと。……うん。


 突然ですが、今現在私がいる場所は教会です。

 うん?結婚するのかって?

 アホ抜かせ、俺は高校入学したてのピチピチの15歳で誕生日はまだ先である。こんなうら若き乙女を捕まえて何を言い出すんだ。大体、この齢で結婚って、ありがちなのがデキ婚じゃねーか。入学したてで退学の憂き目の可能性大じゃねーか。つか、教会はちょっと違うか。どっちかっつーと此処はチャペル、礼拝堂だ。うん。

 まあ、うん、結婚云々(うんぬん)は置いといて。

 若干キョドっていたから、一人称がこの本体の「私」になったけど、喋ってんの「俺」な。まあ、別に人格が二つに分裂したとか、所有格の人格とか権利争いの勃発とか高次元なコトは起ってないし、そもそも俺と私の違いは一人称くらいで性格は一緒なのでそういうのはないからな。取り敢えず、記憶が戻ってからこっち一人称はせめて「俺」にしようとかそういうだけだから。素で「私」って言っちゃったのも動揺のあまりです。うん、話が進まねえな。流石の俺でも未だ混乱中ってか。

 兎にも角にも。俺が、どうして、教会―――礼拝堂にいるのかというと。

 

 「……………誰?」

 「僕は……」

 

 「……………」

 うん。

 敵情視察っつーか、四季恋華(ヒロイン)のゲーム進捗状況の確認作業っつーか。平たく言えば、ただの覗きでストーキングだケド。

 俺は、四季恋華(ヒロイン)と攻略対象が会話する様子を少し離れた場所でこっそり見ていた。

 学校が有する、礼拝堂の奥、ステンドグラスと主祭壇に置かれた燭台と十字架が大変神々しくも豪奢で金掛かってんなあとか思わせるその辺りに立つ、二人の男女。それを、こっそり聖歌隊が立つ中二階側の柵の影に身を潜めている俺。立派な覗きです。

 つか、人気(ひとけ)の絶えたチャペルに立つ二人はスチルに出て来そうな程、少女漫画的な華やかさがあるのに、それと比べて、真っ暗な中二階で身を潜めている花の高校一年の少女(オレ)って……。うん、格差社会をものすっごい感じる。あと、よくよく考えたら、スチルに出てきそうな絵面って、アレゲームに出てきた出逢いイベントのイラストまんまじゃん。なんだ、ただのスチルかよ。

 うん。

 虚しくなるから、ソレは置いとこう。ついでに、主祭壇に立つ二人がどっちも美形ってこともな!

 俺は気を取り直すと、改めて二人を見遣った。

 ミッション系スクールっつーのは、校内に大抵チャペル――礼拝堂を持っている。見た目は校内に立つ独立した造りの教会だから、ぶっちゃけ教会でも良い気がするけれど、宗教上の区別があるらしく、くどいようだが、一般的には見た目教会でも礼拝堂と呼ぶらしい。因みに、礼拝堂は、これまた宗教上の理由から、教会に届け出を提出して向こうから専用の牧師なり神父なりを派遣するそうだ。他の学校は知らんが、このアールグレイ学園はソレらしい。だって、ゲームで派遣されたって言ってたしな。目の前で、四季恋華(ヒロイン)とイベント起こしてる変態神父な。

 つか、神父って結婚とかNGじゃねーの?

 コイツが西方典礼様式か東方典礼様式のどっちに属しているのかは知らないし、そもそもこの世界ってご都合主義の乙女ゲームの世界だからそーゆーとこの細かい設定も知らんが………、どっちにしろ、年下の信者(学生だし、別に洗礼を受けてる信者でもないから、便宜上の信者だけど)に手を出すモノホンの聖職者って。ロリコン教師以上の唾棄(だき)すべき輩じゃなかろうか。しかも、カトリック教会の神父だぜ?秘密婚も許されざる責任ある立場じゃん。これが西方の神父だったら御法度(ごはっと)モンだし、東方なら結婚もOKかもだけど、そもそも、こいつ女性不信でわざわざ神父になった経緯を持つ野郎だからな。まあ、だからこそそんな余計な設定が詰まったキャラとの恋愛モノとして乙女ゲームの攻略キャラになっているんだろうが。

 つか、俺こーゆー場所マジ苦手。なんか寒気がするし。人いないからこその静寂とかぞわぞわするし(一階の二人は除く)。あと、ミッション系なんかに通ってるけど、俺の家は神道とかだからか余計にな、場違いっつーか。居心地悪いっつーか。

 冒頭で動揺してたのは、ソレもあるからです。うん。あと、俺がこんな屋根裏から覗き見してるような不審者に見えなくもない状態でお二人に見つからないかメッチャ不安なのもあるけど。だって、この体勢は明らかに言い訳が立たないし。入学してから約一週間は経つけれど、一年生はオリエンテーションとかで校内巡りしただけで(俺に至っては、入学式にぶっ倒れたからソレもしてない)、まだ一度もこの礼拝堂を授業の一環で訪れた事もないのだ。そんなピチピチの新一年生が用事もなく、礼拝堂に入るか?俺なら入らん。まあ、四季恋華(ヒロイン)は堂々と入って行ったけど。後ろを付いて行く俺は真っ青になって人に見られないようにこっそり侵入した。

 ゲームの進捗状況を確認するにしたって、わざわざ丸腰の単騎で敵陣地に侵入するのもどうかと思ったが、今回のイベントはある意味進捗状況に関わる分岐イベントだったから、様子を見るべく涙を呑んで乗り込んだわけなんだが。

 「君は……」

 「…そんな……此処って……」

 肝心(かんじん)(かなめ)の会話が聴こえん。

 くそ、ちょっと遠すぎたか?

 でも、こーゆーとこって人気がないし構造の関係上、話し声って響く筈だが。

 俺は闇の中、目を凝らして二人の唇の動きを見ようとして、止めた。読唇術を心得ているわけでもなけりゃ、二人分の口の動きを見るって、よくよく考えたら素人に無理じゃね?と悟ったからだ。これからは、双眼鏡と盗聴器を常備しよう。でも、盗聴器はバレたら怖いんだよなあ。なんてったって、此処はお金持ちが通う学校で、攻略対象はハイスペックだし。一般家庭の平凡女が敵う輩じゃねえもん。なんて、考えてた矢先の事だった。

 「ん……?」

 変態神父の目が、中二階の方へ彷徨い。

 俺の目と合った、気がした。











To be continued…?


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