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なんでもアリな闇鍋ゲームで詰んでる俺は脇役兼死体役イコール被害者な件(仮)  作者: 来樹
1章 ようこそ、聖アールグレイ学園へ!
11/30

9

教会関連は筆者の浅学の身ゆえ、間違った認識で書かれてある文があるかもです。

 あんな美形、一度でも見た事があるなら印象に残っている筈である。

 だけど、『聖アールグレイ学園』を死ぬ気で隠しキャラ含めて全クリした俺は断言できる。あんなキラキラな奴等いなかった。

 せめて、名前がな……。もうちょい、違うのだったら確信を持てたのだけども。

 世界史教師の名前は、(さくら)(さく)()

 主席番号一番君の名前は、安倍星耶(あべせいや)

 この二人、最後の名前の文字取り換えた方がしっくりくるが、ポイントはそこじゃない。

 実は、この『聖アールグレイ学園』、攻略対象はもれなくイメージモチーフがあり、最後の名前が「や」の止め字で終わるのだ。

 例えば、オレ様生徒会長―――(すめらぎ)(こう)()

 こいつのイメージは、苗字からエンペラー・キングで「王冠」。

 次に、ロリコン教師―――上杉誠也(うえすぎせいや)

 苗字の「上杉」と名前の「誠」から武士・侍のイメージで「刀」。

 俺が実際に会い、見知っている攻略対象は特徴的にはこれだ。

 だけど、この攻略対象たる条件をクリアしている顔面も中身もハイレベルそうな二人がいる。

 (さくら)(さく)()は、イメージモチーフ的に苗字から「桜」、或いは名前の「朔」から「月」だろう。

 安倍星耶(あべせいや)は、言うまでもなくイメージモチーフは名前からして「星」っぽい。

 うん、最後の「や」の止め字も入っているし、イメージモチーフもありえそうなトコとか、引っかかる部分がある。

 そう、隠しキャラか?と、疑えなくもないのだ。更には、この二人に関して言えば、既知感があるという点も、疑問の余地が残る。

 俺が忘れているだけか――?

 だけど、そんな確率の低い可能性も、何やら不穏な予感がする俺の直感を信じるならば、奴等は決して俺の知る『聖アールグレイ学園』の攻略対象として登場しなかった筈で、脇役としても登場してない筈なのだ。

 これはもしや……ゲームソフトにありがちな、1シーズンとか2シーズン的な、初期以降のソフトで登場する新しいキャラとかだったりするのだろうか。

 それならば、まだ分かるが……少し疑問が残る点があるとすれば、俺は『聖アールグレイ学園』が、続編を出したという一報は知らないという点だ。

 心友にも貸された記憶もないし、況してやプレイした覚えもない……。

 でも、漫画化・アニメ化・ドラマ化とかされてたし、可能性としては有り得なくない。もしかしたら、生前のTVとかCMとかでちらりと見かけた可能性がある。それに、「俺」だった頃の記憶は所々穴があるし。

 ってことは、だ。

 まだ攻略対象とは断定できないが、それに準ずる者という事で、あの二人にも注意するべしってコトになるんだよな。

 うう、まだゲーム開始二日目なのに、入学式昨日だったのに、なんでこうも厄介事が。

 つか、アイツらがもし本当にただの脇役(モブ)じゃなかった場合、攻略条件とかイベントとか知らないんですけど!ストーリーが読めないって、致命的!もしかしたら、俺の知らないまた巻き込まれ系死亡フラグのイベントがあるかもしれないっていう恐ろしすぎる可能性があるんだが。どうすんの、マジで。最早、ゲーム開始早々詰んでるじゃねーか。

 しかも、もしも、この嫌すぎる展開がマジならば。

 俺の知らない攻略対象がうじゃうじゃ湧いて出て来る可能性も高いのだ。

 「うー」

 ついつい、顔面がちょっと描写しづらいくらいに崩壊する。

 今更ながら、この乙女ゲームが平和的な「日常系」で良かったのかもしれない。

 だって、死亡フラグ回避でも油断できない状況だが、ソレ以外の余計なオマケ設定があればマジで終わっていたかもしれない。そう、例えばホラー要素とか、世界の終り系とか。考えるだに恐ろしい。

 せめて、外部生の特待枠に入らなければ、特進科のクラスにならなかっただろうにと、今更ながらに思うが、全ては記憶のない過去の「私」がした事である。悔やんでも意味がない。

 特進科―――幾つかあるコースの内、家柄と財力、そして成績が優秀な、所謂(いわゆる)カースト制度の天辺に君臨する輩が集められたクラスだ。A組とB組がこれに当たる。俺の場合、外部生だけど、特待枠で受験したから、必然的にこのコースになったっていう経緯もあるんだけど。B組でも良かったんじゃないかなーと思う。二分の一の確率で、俺は負けて、結果愉快な乙女ゲーム組(笑)が集うクラスに配属となった。くじ運ねーなー、オイ。まあ、30歳で魔法使い(心友メールより)になったり、転生したらその世界は乙女ゲーだったり、女体化してたり、挙句の果てはモブの癖に死体役だったのだから、今更己の運のなさについて言及はすまい。傷口に塩どころかタバスコぶっかけて塗り込むような自虐趣味は持ち合わせていない。

 このお金持ちなミッション系スクールは、マンモス校なだけあって、混乱を避けるべくコースごとにバッジが配られている。学年の見分け方はネクタイやリボンの色で判断するが、コースはバッジである。

 特進科のバッジは、真紅の薔薇をモチーフにしたもの。

 硝子なのか、深い色味に無駄な高級感が漂うそれに、俺はこのナリで、ここだけ浮いてるよなと思う。だって、全体的に地味な俺が制服も黒で目立たなくて余計に冴えない見た目だっつーのに、このバッジが目立ってやけに浮いて見える。豚に真珠、月とスッポン。何だろ、トリコロール教師の眼鏡に勝てなかった俺はここでもバッジに負けてる気がする。……ふーんだ。どーせ俺は、ゲームのスチルですら、四葉のキーホルダーの遺留品写真に登場奪われている負け組モブですよーだ。

 俺は制服の襟に付けた薔薇のバッジを指で弾いて、椅子から立つ。

 飯も食ったし、これ以上この場でうじうじ考え込んでる暇があるなら、情報収集をした方がマシ。時間は有限なのだ。正にTime is moneyである。

 だから。

 第三音楽室を後にした俺は、その後の物語(ストーリー)を知らなくて。

 預かり知らない所でソレが既に手に負える範疇にない事に気付く事はなかった。











 「……………どうした?」

 「――いや。別に…」


 そう?と答える声に納得していない響きを感じ取って、少年はその視線の追及から逃れるように、空に視線を向ける。

 

 物語は、粗筋通りに始まり。

 そして、予定調和の運命を導き出す。

 誰も知らないそれぞれの物語を複雑に絡ませながら紡ぎだされる結末は―――果たして本当に予定調和のものなのか。人知を超えたソレは、神のみぞ知る。

 






To be continued…?




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