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お狐様、まかりとおる!! ~転生妖狐の異世界漫遊記~  作者: 九巻はるか
第1章 大森海の世界樹とお狐様
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その2 お狐様、考察する!

「これって、もしかして転生ってやつなのかな?」


 十分ほど泉を凝視したのち、さらに一時間ほど放心していた伊織がぽつりと漏らした。

 よくよく考えればチーマーに刺されて自分は死亡。その後にお狐様に縁のあった己がその加護により同じお狐様に転生したと考えればそんなにおかしい事では無いと伊織は考えたのだ。


 まあ、普通なら寝言は寝て言えと言いたい所であるが伊織がそう考えても仕方ない面もあった。なぜなら伊織が生前……いや、転生前に実家で妖狐である白面金毛九尾の狐こと玉藻前を祀る玉藻神社を経営していたためだ。しかも伊織はその神社で巫女をしていたから尚更である。


 さてここで一つ確認しておくが転生前の伊織は男である。しかも二十歳を超えた青年だった。そんな伊織が巫女をしていたのには実は涙無くしては語れなくも無い深いような浅いような訳があった。

 それを端的に表現すると生活苦の打開であり、具体的に表現すると伊織のネットアイドルデビューであった。

 もう少し詳細に説明すると、父親が経営状況の悪い神社を建て直すためのテコ入れとして伊織の妹である紫織を巫女アイドルとして動画サイトで売り出し、参拝客を増やそうと画策したことに端を発していた。だが父の目論見通りには行かず、父が妹の紫織から得られたのは出演の承諾ではなく、拒絶アーンド侮蔑というごほうびだけだったため計画は頓挫したように思えた。


 だが、周りから蛇のようにしつこいと揶揄されるほど諦めの悪い父がそう易々と引き下がる訳が無った。何を思ったか今度は兄の伊織に白羽の矢を当てたのだ。

 母を早くに亡くし、母の代わりに家事や家計など家のことを諸々取り仕切っていた伊織は神社の経営状態が常に危険水域ギリギリであることを知っていたのだ。そのため仕方なく父の提案を受け入れたのだ。


 正直なところ、伊織は自分が巫女に女装した姿を父が見れば流石に諦めるだろうと踏んでいたし、実際に姿見で確認した自分の巫女姿にはおぞましさしか感じなかったのだが、そんな伊織を見た父が一言納得したようにつぶやいた。


「いけるじゃん!」と。


 いくら伊織が妹と瓜二つの女顔であるとはいえ、骨格自体は男性のそれである。無理があるだろうと伊織は最後の最後まで思っていたが、製作されたピンナップは紫織のフォ○ショップテクが火を噴き奇跡の一枚が完成。伊織は玉藻神社の巫女・けいこくたまもちゃんとしてネットデビューすることになってしまったのだ。

 そんな伊織のピンナップを見た一人が、美人過ぎる巫女さんとしてまとめサイトで取り上げたことにより認知度が一気に上昇。ネット界隈を賑わした。

 なお、発端となった記事は妹の紫織による自作自演のステマである。


 ネットの盛り上がりを見た父は成功を確信。熱が冷めないうちにと「みっくみくに神楽」や「ほだれ大神に対抗して炮烙の刑の銅柱に乗ってみた」などの動画を収録するとすぐに有名動画サイトに投稿。無駄にエロい伊織の姿に人気が爆発。今度はステマすることもなくまとめサイトで話題沸騰。

 勢いそのままに神社の例大祭でライブを決行。さらに社務所では握手券付き破魔矢という罰当たりな代物をファンに売りつけ過去に例が無い程の参拝客数と寄進額を達成。神社は空前の好景気に沸いた……と、いう顛末であった。


 なお、このライブの時に社務所で破魔矢を売っていた妹の紫織に件のチーマーが一目惚れ。運命の出会いとばかりに交際を迫ったが、二次元に生きていた妹が程度の低い三次元になびく筈も無く、一も二も無く拒絶。

 だが、チーマーにとっては一世一代の告白だったらしく、それを無碍むげに断られたことでストーカーにレベルアップ。

 以降、執拗につきまとうようになったため、それを危険視した伊織は己のことなのに危機感の薄い紫織を守るため、外出する時は常に同行。

 するとチーマーは何故か『俺の紫織たんに男が出来た』と憤慨。逆上して妹を刺し殺そうとしたため、伊織は咄嗟に妹を庇い刺殺されることになるという惨状であったが、それは正に後の祭りと言えよう。


 そんな事情から、伊織は自分がお狐様に転生しても不思議では無いという感想を持つに至ったという訳である。

 ちなみに伊織の実家である玉藻神社の境内には大きな殺生石もあったりする。……が、伊織の実家の玉藻神社があるのは玉藻前が討たれたとされる栃木県の那須野では無く、夜景が綺麗なことで有名な北海道H(AKODATE)市である。

 また、北海道には玉藻前や九尾の狐にまつわる伝説など存在しない。


 さてそれはさておき、お狐様に転生したことを取りあえず受け入れた伊織は改めて自分自身がどうなっているか観察。

 まず目に付くのが処女雪のように透き通るような白さと瑞々しさを持つ肌だ。その肌にはシミ一つ無くまるで精巧な人形のようですらあると伊織は思った。

 また、手足は華奢で指も細く、身長も130センチメートルに届かないくらいの全体的にちんまりとした形貌であった。体格から勘案すると十歳前後であろうか。なお、その小さい身体の後ろに大きくふかふかした毛並みの良い尾が一本見え隠れしているのが見えた。

 まあ、狐耳があるのだから、尾があるのはある意味当然であるが、自分が本当に転生してしまったと言う事実を強烈に突き付けられているようで、寂しさを感じてしまう伊織だった。


 伊織は次に服装をチェックだ。上半身は転生前に着ていた飾りっ気の無い白衣では無く、神楽や神事の際に白衣の上に羽織るような、純白無垢な生地に流水の柄がうっすらとついた千早を着ているのが見て取れた。

 また、下半身は転生前と同じような緋袴だが、生地が転生前の物よりも明らかに艶やかであった。全体的に服のクオリティが上がっていることから、自分はもしかしたら神様の使いにでも転生したのでは?と伊織は思うが今のところ確証は無い。


 ひとまずその考察は置いておいて、最後に身体について上から確認する伊織。

 まず頭の上を再度確認すると、毛並みの良い大きな狐耳が側頭部から頭頂部にかけてから突き出していた。眉はいわゆる麻呂眉で丸く、髪と尾などの体毛は金色で日の光が反射してキラキラと輝いていた。

 髪は細く真っ直ぐで指通りがよく、長さは肩の少し上までの少し長めのおかっぱだ。また、髪の色と同じように瞳も一見すると金色に見える薄い琥珀色でこぼれ落ちそうなくらい大きい。

 真っ直ぐで筋が綺麗な鼻を通り過ぎると、薄い桜色をした小さな花唇が艶めかしく輝いていた。

 顔から下に行くと細く華奢な首を通り過ぎ、胸に到達だ。

 泉に映った様子では真っ平らのように思えたが、実際に触れてみると僅かながら膨らみがあった。Bカップとは言わないが、AかAAカップくらいはありそうな感触である。

 胸からさらに下に下がると、若干の腰のくびれを通り過ぎ、秘所に到達だ。

 ここまでの見た目は完全に可憐な少女そのものだが、まだ性別を決定するには早い。もしこれで例のブツが付いていれば男のままである。

 それに伊織自身、まだ男を止めるつもりはまだないのだ。


 伊織は一廉の望みを託し、ゆっくりと秘所に手を触れた。


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