バンフィールド王国のおとぎ話
最後のちいさなお話。
はるか昔、世界が滅亡の危機に陥ったとき。
このバンフィールド王国に、異世界から一人の聖女様が召喚されました。
かの方は、漆黒の髪に黒曜石の瞳を持った、それはそれは見目麗しい聖女様であったといいます。
光の魔法を使う異世界の聖女様は、王様に頼まれて、王子様と、騎士と、魔法使いを連れて世界中の天晶樹を浄化する旅に出ました。
旅は困難を極めました。異世界の聖女様は、さみしさや怖さを押し隠し、一生懸命頑張っていました。
そんな聖女様を憐れんだ神様は、この世界にもう一人の聖女様を遣わしました。
お城で働いていたこの世界の聖女様は、異世界の聖女様を助けるために、ひそかに後を追います。
この世界の聖女様は、異世界の聖女様と違う、不思議な浄化魔法を使いました。魔物だけでなく、人の心も浄化する魔法だったそうです。
この世界の聖女様は、慣れない戦いに疲れた異世界の聖女様の心を癒し、支え、いつしか二人は親しい友人となりました。
そして手を取り合った二人の聖女様は、世界を支える三本の天晶樹を浄化し、すべての人に幸せを届けたのです。
世界を救った聖女様は、一人は王子様と結婚し、もう一人は旅の仲間だった強い騎士と結婚しました。
その二人の聖女様の一番上の子どもたちが結婚して、今の王家の祖となったのは有名な話です。
そう、バンフィールド王家には、聖女様たちの血が流れているのです。それは王家の特徴である、漆黒の髪に夜明け前の空のような瞳からもわかります。
それは遠い昔、まだ魔物や魔法が身近だった頃のお話です。
このお話を以って、「非凡・平凡・シャボン」番外編も完結とさせていただきます。
ながらくお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。
最後まで読んでいただけて、感無量です。




