23章 異界と冥府の迷い姫 08
俺がワーヒドゥを粉砕するとほぼ同時に『悪魔』たちは全滅し、リッチレギオン型『悪魔』も消滅した。
数は多かったが、結局はワーヒドゥ以外特に苦戦する相手はいなかった。ただそれは俺たちだったからであり、あのリッチレギオン型『悪魔』など7体も現れたらそれだけで王都が火の海に沈むだろう。
全員が集まって来て、フレイニルやシズナは前衛組に『生命魔法』をかけて回復をしている。
ドロツィッテが溜息をつきながら俺の肩を叩いた。
「私も『ソールの導き』の一人になってしばらく経つけど、やはり私たちの強さは並ではないね。あの数の『悪魔』とあのアンデッドだけで、普通ならどれだけの被害が出るか。それを考えただけで背筋が凍るようだよ」
「俺たちの力については俺自身常に感じているところさ。身の処し方も含めてな。しかし今はさっきの連中だ。あれほど本格的な動きが始まったというなら道を急がないとならない」
「そうだね。さきほどのワーヒドゥの言葉も気になるけど……」
「どうせ同じように『悪魔』として復活するとかそんなところだろう。また叩き潰せばいいだけだ」
「ふふっ、さすがソウシさんだ。その通りだね」
魔石の回収もそこそこに、俺たちは再び馬車による移動を開始した。
直前の情報では、大陸中に小型の『悪魔』が現れ出したということだったが、さきほどのワーヒドゥ率いる群れが出現したら恐ろしい被害がでるだろう。その前になんとしてでも『悪魔』の生成を止めないとならない。
その後も何度か数十匹単位の群れに遭遇して叩き潰しつつ、俺たちはひたすらに塔へと馬車を走らせた。
『精霊』が牽く馬車は、体感で時速30~40キロくらいは出ているだろう。
その馬車で進むこと2時間ほどだろうか、現れた『悪魔』の群れを全滅させてから確認をすると、目標の塔はだいぶ近くに見えるようになってきた。
それはやはり巨大な塔のようだった。形状は根元が太く先が細い円筒形で、表面は銀色に輝いているように見える。
望遠鏡で見るとその表面には継ぎ目など一つもなく、明らかにこの世界にそぐわない造りのものであった。俺から見ても未来的に感じるような建物である。高さは比較するもの周囲にないので掴みづらいが、感覚だと日本にあったスカイツリーに近い気がする。つまり高さ500メートルは超えていそうな超高層の建造物だ。
ただその根元付近はやはり岩山のようになっていて、どうやら岩山の真ん中から塔が突き出ている構造のようだ。
「これならあと半刻でくらいで着きそうだな」
望遠鏡をラーニに渡してやりながらふと見ると、フレイニルが眉をひそめ険しい顔をしていた。
「どうしたフレイ」
「ソウシさま、あの塔の方角からとても邪な気配が伝わってきます。『冥府の燭台』と『悪魔』とアンデッドを合わせたような、恐ろしく強い気配です。しかしその中に、ライラノーラさんに似たような気配も感じます。しかしその気配は、今にも消えそうなほど弱っているように思われます」
「ライラノーラに似た気配……ライラノーラは感じるか?」
俺の質問に、ライラノーラは塔の方を眺めながら答えた。
「……そうですね、わたくしと似た者がいるような感覚がある気がいたします。わたくしと同じ、『最古の摂理』により生み出された者かもしれません」
「つまりこの『異界』を管理する者ということか?」
「可能性は高いと思いますわ。ただフレイの言う通り、その力はかなり衰えている、そのようにも感じます」
「『悪魔生成装置』が勝手に稼働を始めた理由がそれか? ……と考えても仕方ないな。とにかく急ぐか」
さらに馬車に揺られること小一時間、俺たちはいよいよ塔の根元にある岩山まであと数百メートルの地点へと到着した。
そこで馬車を下りたのは、巨大な岩山の複数の裂け目から、大小の『悪魔』がぞろぞろと這い出てきたからだ。
しかもそいつらは一斉にこちらに向かって来るので、俺たちの接近に気が付いて迎撃のために出てきたに違いなかった。
馬車を下りて改めて塔を見上げると、やはり見る者を圧倒するような建築物である。高さはスカイツリーと比べるほどではなるが、目の前の塔はそれより倍以上太いものである。
しかも鏡面のように磨き抜かれた表面は曇り一つなく、紫色の『異界』の空を映している。これがゲームの世界なら古代超文明の遺跡なんて設定になりそうだが、実際にそれに近いものなのだから自然と口元に笑いが出てしまう。
「ちょっとソウシ、笑ってないでやっつけないと」
ラーニにつつかれて、俺は『万物を均すもの』と『不動不倒の城壁』を取り出した。
「よし、とりあえず全部片づけてから入り口を探そう」
複数の裂け目から降りてくる『悪魔』は全部で300匹ほどだっただろうか。
後衛陣の魔法の斉射と俺の『圧潰波』でほぼ全滅してしまったので、戦闘は数分で終了した。
その後岩山に取り付いて、ラーニの嗅覚とスフェーニアの視覚頼りで入口を探す。
巨大な岩山のふもとに沿って10分ほど歩いていると、ラーニが鼻をヒクヒクさせた。
「あ、ニオイがする。あっちからね」
小走りに駆けていくラーニの後を俺たちも追って走っていく。
ラーニは周囲に比べて少しだけ張り出した岩壁の前で立ち止まると、その表面をペタペタと叩いた。
「ここが回りとは違うニオイがする。だけど扉みたいなものはないみたい」
スフェーニアも行って調べ始めたが、どうやら何も見つからないようだ。確かに俺が見ても、扉がありそうな切れ目などはなく、完全に一枚岩に見える。
仕方ないのでメイスで一撃を与えてみようかと思い始めた時、ライラノーラがすうっと近づいてきた。
「お待ちください、力がこの岩の表面に集まってきています。わたくしに近い存在が、ここに出現するように感じられます」
「なに……?」
俺たちは張り出した壁面から少し離れ、様子をうかがうことにした。
すると壁面に何らかの力が集まっているのか、岩の一部が淡く発光を始めた。さらにその部分の壁面が急に液状になったように波を打ち始め、そしてある形に変化していった。
現れたのは、岩を彫刻して作られたような人の顔。しかもその風貌は――
「これは……ライラノーラさん?」
フレイニルが漏らしたように、その美しい女性の顔を象った彫刻は、どことなくライラノーラに似ていた。
申し訳ありませんが、11月24日の更新は休ませていただきます
次回は11月27日更新予定です
【『おっさん異世界最強』コミカライズ1巻発売の告知】
本日11月21日に『おっさん異世界最強』コミカライズ1巻が発売になります。
自分としても初のコミカライズの単行本が出ることに感動をしております。
コミカライズのお約束(?)として、巻末にSSもございます。
すでに連載をご覧になっている方も多いと思いますが、是非ともよろしくお願いいたします。
【『勇者先生』5巻発売の告知】
11月25日(火)に、別に連載している『勇者先生』5巻が発売となります。
アメリカンな転校生レアが目立つ表紙が目印です。
内容はいつもの通り、Web版の全体的な改稿+エピローグ、書き下ろしの追加となっております。
イラストレーターの竹花ノート様のイラストがいつも以上に美しい一冊ですので是非よろしくお願いいたしいます。




