表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その華の名は  作者: 篠原 皐月
第5章 新たなる展開

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/229

(3)知られざる確執

 入団式の翌日。カテリーナ達が指定された時間に隊長室に出向くと、アーシアとユリーゼが待ち構えていた。彼女達と挨拶を交わし、幾つかの事務的な連絡事項を告げられているうちに、ノックの音に続いて五人の女性が入室してくる。彼女達に頷いてみせたアーシアは、カテリーナ達に視線を移した。


「あなた達新人五人は、五つの班に一人ずつ配置して、これから三ヶ月の間は定期訓練の他、各部署の勤務内容を満遍なく体験して貰います。各自、各班長の指示に従ってください」

「はい」

「それでは班長達を紹介して、誰がどこの班に入るのかを説明します」

 そこで各班長と誰を任せるかの説明を済ませたアーシアは、十人が互いに自己紹介を済ませたのを見計らって、全員に退室するよう促した。それに応じて彼女達は二人一組で廊下に出て行き、各方面に散って行く。


「それではカテリーナ、行きましょう。第十五隊はその性格から女性王族や賓客の護衛を任されるので、それに携わる上で配置される可能性が高い場所を、他の四人と重ならないようにこれから順番に回って行くわ。その後は班員との顔合わせをします」

「宜しくお願いします」

「それではまず、王族専用の玄関と馬車寄せの状況と待機場所、そこから後宮への経路ね」

「分かりました」

 当面の指導役となったミーシェラにカテリーナが並んで歩きながら頭を下げると、ミーシェラは一通りの連絡事項を告げてから、声を潜めて尋ねてきた。


「ところでカテリーナ。入団早々、折れた剣を支給されたという話は本当なのかしら?」

 それを聞いたカテリーナの顔が、僅かに引き攣る。


「それを、どこからお聞きになりました?」

「ユリーゼ副隊長が不用意に口外したとは思えないけれど、支給後早々に備品管理部門に返還と再給付の申請がされれば、嫌でも噂になるわ」

「確かに理由を申告する必要はあるでしょうが、昨日の話なのに……」

「それで?」

 噂の拡散速度が速いのか、ミーシェラが並外れた早耳なのかは不明だが、どう考えてもこの場で曖昧に誤魔化せるとは思えなかったカテリーナは、できるだけ穏当な表現で詳細について告げてみた。


「私に割り当てられていた剣が偶々ヒビが入っていた不良品で、持ち運びの際、何らかの衝撃で完全に折れてしまったと推察します」

 真顔で歩きながら説明したカテリーナを見て、ミーシェラは苦笑いの表情になった。


「あなたは思っていたより真面目だし、頭の回転が早いのね。そしてどうして私があなたの指導役を仰せつかったのか、完全に分かってしまったわ」

「どういう理由でしょう? 差し支えなければ、教えていただけますか?」

「簡単よ。あなたは隊長に妬まれているから、まともに育てようという気がないのよ。私、来月結婚の為に退団するの」

「それは……、おめでとうございます」

 いきなり告げられた内容に、話が逸れたと感じたカテリーナは困惑しながらも、 取り敢えず祝いの言葉を口にした。しかしそれを聞いたミーシェラが、心底うんざりした表情を見せる。


「ありがとう。だけどそのタイミングで新人の指導役を任せるのは、正直、あり得ないわ。話を聞いた班の皆も、隊長は一体どういうつもりなのかと戸惑っていたし」

「ただでさえ引き継ぎ等で慌ただしい時期に、お手数をおかけします」

「私達は構わないけど、あなたに申し訳無くてね……。他の班員にも頼んでおくけど、私が退団したら他の班長に指導を任せないとも限らないし」

 そこで溜め息を吐いたミーシェラに、カテリーナが思いきって前日からの疑問をぶつけてみた。


「そこまで隊長に疎まれる理由に、思い当たる節が無いのですが。単に私が、上級貴族出身だからですか?」

 その問いかけに、ミーシェラは益々困り顔になりながら応じた。


「下級貴族出身の隊長が、まず第一にそれが気に入らない事は確かでしょうけど……、あなたがガロア侯爵家の人間なら、ジャスティン隊長の妹に当たるのよね?」

「はい。それが何か?」

「うちの隊長、ジャスティン隊長との結婚を狙っていたのよ」

「……はい?」

 咄嗟に言われた意味が理解できなかったカテリーナは、間抜けな声で応じてしまったが、ミーシェラはそれを咎めたりせず、寧ろ同情するような口調で話を続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ