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48話 ワルカリア討伐戦-11-

 いやー、助かった。迎撃準備整ってから敵本隊との戦いに臨めて本当に助かった。強力な敵の本隊、特に邪神の加護を受けたワルカリアの本隊が相手ともなれば野戦や攻城戦なんてしたくないからね。

 敵の基地を再利用することで籠城戦となり自軍有利に進められる。つまり敵に攻城戦を強いる事になる。因みに改修した陣地はもはや簡易的な要塞と言っても良いレベルの、短期間で作れる最高クラスの砦に仕上がっていた。


 一般的に攻城戦に必要な兵力は敵の3〜5倍と言われている。条件次第で変動はするけれども籠城側が圧倒的に有利なのだ。


 とは言え相手はワルカリアの本隊、敵軍勢が見えたと一報が入った時点で緊張が走っていた。


「敵襲!部隊規模から敵本隊と推測される!決戦だ!全力で迎え撃て!」


 指揮官の一言で身が引き締まる。無駄口を叩く者はいない。陣地にいる全員が戦闘態勢に移行した。ある者は武器を手にした、ある者は用意されたバリスタや投石機等の大型兵器に向かった、ある者は魔法の準備を始めた。


 既に幾つかの部隊は遊撃隊として出撃をしている。彼らは奇襲を防ぎ、場合によっては敵に奇襲をかけることが求められる。私の知り合いの中でも『血盟の炎』の皆さんはここに配属されたらしく、徹底的に敵を翻弄してやると息巻いてたわね。


 私は体に魔力を循環させ万が一に備えた上で陣地の高見台に登った。

 目下には敵の軍勢が見える。彼我の兵数比はだいたい4:3、数字の上では味方が多いけど実際には加護やら技術やら、絡む要素が多いのでどちらが優勢かはまだ分からない。


 しかし妙なことに気がついた。

 敵軍が動揺している。

 まぁ気持ちは分からなくはない、後詰で来たつもりが既に救援すべき最前線の拠点を落とされていたのだから。


 少し観察していたら何を考えてるのかは知らないけど動揺しつつも突っ込んできた。普通に考えたらただの無謀な突撃、反撃されて壊滅するのが関の山だ。

 しかし私にはそうなるとは思えなかった。


 結果は予想を超えた。


 なんと堅牢なはずの陣地の一角が崩れた。

 理由は簡単、超威力の魔法が飛んできたのだ。ワルカリア討伐軍も攻撃魔法の使い手が魔法をぶつけることで逸らしたけどそれでも陣地の一角が崩れたのだ。直撃していたら目も当てられなかった。


 これは私の出番ね。もはや有象無象の兵士たちのことや貴族たちのことを気にしていても仕方がない、相手が強すぎる。手を選べるほど余裕はなくなった。


 一応反撃はしていないわけではない。投石機で放り込んだ爆弾は敵部隊に直撃し数十人を無力化していた。……だけどアレ、本来城攻めの兵器だし命中率悪いのよね……実際5発撃って1発しか命中してないからね……。


 私は陣地の崩れた場所に向かった。魔法一撃で崩されたのだ、放置しておく訳にはいかない。確実に追い返さねばならない。


 私の到着と同時に士気が上がった。


「おぉ!パステルの英雄が来てくれたぞ!」

「マジか!これで奴らを追い返せる!」


 どうやら私のことを知ってる者がいるらしい。


「ただ縋ってんじゃねぇ!死にたくなければ気を緩ますな!戦う術はあるんだろ!戦え!」


 戦場に本来丁寧な言葉は要らない、油断した味方になら尚更ね。容赦なく言葉で叩きのめした。

 震え上がってるくらいなら敵の首1つでもとってこい!


 私は大太刀を手に陣地を崩す大魔法を行使した敵部隊へと駆けた。超近接戦に持ち込むことができれば魔法の行使は難しくなる。勝機は今!


 単騎突撃を敢行した私に目掛けて無数の魔法が飛んでくる。弾幕で押し潰す気なのが丸わかりだった。

 対処法は単純、強力な防御魔法を使いながら只管走る、あまりにも強すぎるのは別の魔法で弾いたり無力化しながら走り続けた。


「なんだぁコイツ!」

「クッソ!攻撃が当たらねぇ!」

「接近戦になるぞ!」

「ひっ……ヒィィィィ!」


 敵部隊まであと僅かまで迫った。敵は遠距離戦の為に魔道士を前に出していたのが裏目に出たわね。さっさと蹴散らそう。


「そーれッ!」


 私の振るった刃が数人の体を両断した。

 その瞬間、敵は恐慌状態に陥った。


「う、うわぁぁぁぁぁあ!」

「し、死にたくねぇぇぇ!」

「ぎゃあああぁぁぁぁぁ!」

「逃げろぉぉ!」


 どうやら魔道士に根性がないのはどこも同じらしい。碌でもない発見だわ……。

 でもそのお蔭で戦果は拡大する一方だ。

 根性あっても同士討ちの危険性から集団での接近戦において攻撃魔法は避けるべきというのが一般論なんだけどね。


 しかし……



ドゴーン!



 激しい爆音が鳴り響いた。私の位置からは少し外れていたので何とかなったけど凄まじい威力の攻撃魔法が飛んできた。しかも敵陣から……

 これは味方諸共、私を殺るつもりだったわね……これは酷い……。威力に肝を冷やしたけどそれ以上に驚愕した。コレをぶっ放した奴からしたら仲間の命など無いのと同然ということ、無慈悲なんてものじゃない、ただの狂人でしかない。


 逃走する敵兵が出始めた。当然だろう、意味もなく仲間に殺されるなんて最悪だからね。逃げる奴は見逃すことにした。

 ぶっ放したクズは既に位置を特定している。コイツだけは絶対に生かして返さない。


「逃げたければ逃げろ!私は追わない!味方ごと敵を薙ぎ払おうとする外道は私が殺る!道を開けろ!」


 私の怒号によって敵兵の大半は逃走した。

 死にたくないのは誰しもが同じだしね。


 残った連中は大きく2つの部類に分かれた。1つは怯えて動けないでいる存在、コイツらはかかってこなければ無視でも良い。しかしもう1つのグループが異常だった。顔に覚悟が見て取れ、殺意の目線をこちらに向けてくる。

 破邪聖石が無ければ死んでたわね、コレ……。


 とりあえず殺意向けてくる輩は全員始末だね。コイツらはワルカリアの正規メンバーばかりのはずだから。


 まずは一人に飛び掛かる。無論他のメンバーは私を抑えるべく動き出す。だけど私はその手を先読みしていた。

 周りに群れる敵に魔法で雷撃を放つ、近づきすぎの状態で雷撃を回避するのは無理だ。あっさりバッタバタ倒れていく。即死する者、麻痺して動けない者が続出した。

 飛びかかられた敵は目の前の光景に驚き、致命的な隙を晒してしまった。私の前で愚かにも程がある。即座に左肩から右の腰上まで綺麗に切り裂き絶命させた。


「うおおおおぉぉぉぉ!」

「つづけえええぇぇぇ、」


 背後から味方が雄叫びを上げて突撃しだした。うん、動けない奴らは味方に任せよう。



 そして斬り裂いた敵の奥から1人の男が現れた。魔力的にコイツが先程の魔法の使い手で間違いない。


 ここで倒す!

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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