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43話 ワルカリア討伐戦-6-

 ノシュヤの投稿を確認した私は彼を連れて部隊の指揮所に向かった。

 事情を説明する必要があると判断したからだ。


「で、そこの連れてきた男が元幹部クラスでありながら投降したと」

「そうよ、事情が事情だったから許可したわ。その事情は彼から説明してもらうわ」


 彼は指揮所のメンバーの注目が集まったところで口を開いた。

 言うまでもないが、このメンバーはこの部隊の幹部たちである。


「俺はノシュヤ、この街のワルカリアの幹部だった者だ。くだらねぇゴミの手によって戦場で戦ってる時に裏切られ追い出されたがな……。彼女と対峙してる時にやられたもんだから降伏勧告を受け入れたってわけだ」


 戦場で有力な味方を裏切る、とんだ間抜けがいたものだ。指揮所のメンバーは呆れ返っていた。私は驚きはしたけど内心ほくそ笑んでたわね。だってチャンスだから。

 そして軍人や騎士の基準ではあまりにも意味不明過ぎることだけにメンバーの1人が質問した。


「何故追放された?有力者を追放する利点が全く見えてこないのだが……」

「一言で言うならば『戦い方が気に食わなかったから』、戦い方すら覚束ねぇ奴がこんな事言いだすんだぜ?『神の加護の力を最大限解放しろ』とかフザケたこと吐かしやがって……ありゃ体への負荷が馬鹿にならんのにな」

「神の加護とは?」

「あぁ、あまり知られてないんだったな……。ワルカリアはマフィアと言われているが本当は一種の教団だよ。教団が奉る神、ブーアクルバの加護のことだ。コレを受けると人間を超えた凄まじい力を発揮できるようになる。そしてその力の剥奪は追放を意味する」


 まぁそんなところだろうと判断して動いていたけど内部にいた人間の口から真実であると証言を得られるのは大きい。それにしてもなかなか酷い仕打ちだった。

 それにしてもその加護の力が洒落にならないのが悩ましいところなのよね。


「ノシュヤ殿の事情は理解した。ジャンヌ殿、1つお伺いしたい、貴女は加護を受けた奴らを倒した経験がお有りか?」

「正面から倒したことはないわ。加護の力を十全に引き出した存在は危険すぎる、私も殺されかけてたわ。生きてるのは私を追い詰めた存在が自滅したからよ」


 私の一言を聞いたノシュヤの瞳が大きく開かれた。


「おい!体が耐えきれなくなった者を見たことがあるのか!?」

「あるわ、パステルを支配してたフディーサランの体は異常な魔力によって傷められ灰になりかけてたわ」

「そうか……奴は自滅したのか……」


 体が灰になりかける、何をしたらそうなる?

 指揮所のメンバーたちの顔からはそんな疑問が透けて見えた。しかしそれは重要ではない。


「あの力を受けたとき、俺は人の身に余る力だと感じた。その感性は正しかったのだな」


 確かにアレは人の身に余る力ね。あんな馬鹿げた力なんてありえないし、体が灰になるなんて普通は聞かない。


 しかしここで話し続けていても埒があかないと判断した指揮所のメンバーたちは話を終わることにした。


「今回の話してもらった内容は総大将に報告させてもらう。重要すぎる情報だ」

「恐らくノシュヤ殿は減刑されるだろう。それほど重要な情報だ」

「ではジャンヌ殿は持ち場に戻ってもらいたい。恐らくこの部隊は退却することになると思うがそれまでは敵襲を厳に警戒する必要がある。ノシュヤ殿は申し訳ないがもう少し拘束させてもらう。本陣の判断が降りるまで待ってくれ」


 ここで結論を出さないのは及第点ね。本当なら教会方面の偵察はしてほしいところだけど、一介の冒険者に過ぎない私が言っても仕方がない。

 でもこれで彼は大丈夫だろう。私が認めたとなればフリードは文句は言わないだろうし、情報提供の功績で減刑になるので処刑や派手な傷跡を残す刑罰もないはずだ。


 私は指揮所を出て本来の持ち場に戻った。

 陣地構築作業は中断となったのでやることは警戒のみ、暇なので近くにいた知り合いと喋ることにした。不意打ちがきても多少ならお喋りしてても防ぎきれる、私なら可能だ。


 ふと見渡してると近くに『白き徒花』のリーダーのマリンがいた。


「戻ったわ」

「あ、ジャンヌちゃん!どうだった?」

「恐らく退却することになるわ。それと私が降伏させた戦闘員は本陣の判断待ちね」

「よくそんな事しようと思ったわね……でも退却はありそうね」

「成功したから良いじゃん」


 そう、捕虜の確保も成功すれば良いのだ。くだらないことに囚われてはいけない。

 そんなモノ、私はとっくに捨ててるけどね。


ーーーーーーーーーー


 数時間後、指揮所メンバーの予想通り作業は中止、後退指令が本陣より発令された。


「結局後退なのね……。確かに今の状態では危険すぎるか……」


 あのアホな指揮官のせいね……。ちゃんと教会に入ることができてたらもう少しなんとかなったかもしれない。でもたらればを言っても仕方がなかった。


「荷物まとめるわ」

「よし、撤収しますか!」

「やれやれ、酷い戦だったな……」

「何処の部隊に回されるのだろうか?」


 予想通り、部隊全体で後退に向けた準備が始まっていた。


 まぁ余計な仕事はしたくないもんね。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。

来週は旅行に行くため、休載とさせてもらいます。

次回は9/25(水)となります。

これからもどうぞ理を越える剣姫を宜しくお願いします。

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