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37話 総大将との会談

 緊急依頼応募締切日の前日、私の下に一人の訪問者が訪れた。


「久しいな、ジャンヌ殿よ」

「えぇ、久しいわね。2ヶ月ぶりかしら?」


 訪れてきたのはワルカリア討伐の総指揮を執ることになったフリードだった。正直この人の根回し無しでワルカリア討伐軍への参加依頼を受ける気にはならない。

 私の正体を知る人や貴族のいないところに配属するようにしてもらわないと連れ戻されるリスクがあるからね。連れ戻されたら使命に影響もでるし、何より王宮は自由がない、耐えたくないわ。


「儂の方でお前の正体に気づきかねない連中から極力お主を離すよう、儂の方で編成を変えておこう。済まんが今回は来てもらうぞ」

「その根回しがあるなら参加はするわ。政治的な厄介事は御免被るけどワルカリアにはさんざん迷惑かけられたからね」

「人身売買の被害に遭いそうになったのか?」

「護衛依頼を受けただけで襲撃を受けたわ。さきもギルドの受付の前でね」

「もしやその護衛依頼、ワルカリアが襲撃する予定のあるところだったのか?」

「正解よ。案の定襲ってきたわ。返り討ちにはしたけどね」


 ため息を吐くフリートを見て私もため息を付いてしまった。


「こうも情報が遅れるとは嘆かわしい。国の運営も変えてかねばなるまいな」

「政権の中心から離れてしまいましたが、悔しかったですね。こんな連中がデカい顔して振る舞ってることに気付けなかったわけてすからね」


 正直なところ、私にも悔いが残るほどには連中は暴れまわっている。私が政権にいる間に始末できていたなら……と思ったことは一度や二度では無い。

 とは言え気付けてもそう簡単には片付かなかったのは事実だけど……。


「そう言えば、ワルカリアのメンバーの中には規格外がそれなりの数いることが判ってるわ。この街の拠点を襲撃した時は一騎打ちで殺されかけたし、この前の護衛依頼のときも化物が混じってて対処に苦労したわ」

「何……?」


 私を討てる程の化物はそう多くはいない。実際のところ、私の実力は既にSランクの領域に達してる。体こそ物理的に追いついてないものの、戦闘技術や魔力量、魔法技術の面では国内有数の実力者であることには変わりはない。

 それが殺されかける、こんなのがゴロゴロいる時点でハッキリ言っておかしいどころの話ではない。フリードも私の話を聞いてかなり警戒しているのが分かる。


「お主が殺されかけるとなると甚大な被害は覚悟せねばならんな……」

「因みに現役のAランクでは手も足も出ずに遊ばれてた……。アレはどう見ても異常過ぎる、策にでも嵌めなければ普通は勝てないと思うわ」


 フリードの顔つきが変わったわね。想定を超えてるのは確実、そして化物を確実に刈り取る策がなければ勝利は難しいことも理解したはず、如何なる策を弄するかを考えてるのが分かる。


 少し考えて答えが出たのか口を開いた。


「だからあの荷物だったのか……。大神官も侮れぬものだ」

「荷物?」

「教会周辺でのワルカリア戦闘員の戦闘力低下の傾向が見られるそうだ。特に強い者程その影響は強かったそうだ。故によく分からぬ石を持たせられた。その存在と正体を秘匿してな」


 その荷物、まさか……。いや、アレは貴重過ぎる代物、そんなのをホイホイ出せるとは思えないのだけど……。取り敢えず聞いてみるか……。


「もしかして、破邪聖石?」

「破邪聖石?あの石のことを知ってるのか?」

「大神官ミハイルから直接聞いた話よ。教会には必ず破邪聖石が使われているらしいわ。周囲の邪気を払う効果があり、邪悪な力の持ち主にとっては相当な苦痛を与えるそうよ。実物を見たことは無いけど実在は確信していたわ」

「ほう、そんな代物だったか……。これは奴らには効くだろう、押し付けられたのもこれならば問題はあるまい」


 幾らミハイルの言う事とは言え、破邪聖石の存在は信じきれなかったわね……。私とてここの教会の神官長に会うまでは疑いを向けていた代物、実物すら見たことはない。一応どこの教会にも安置はされてるらしい。


「多分、実物は見ても解らないかもしれない……」

「歯切れが悪いな」

「悪くもなるわ。特殊過ぎる存在は目立つ、しかし対局にあるワルカリアはその存在に気付けなかった。その事実が不可解だわ」

「確かに不可解だな……」

「そしてその石が本物だとしてもその運用は難しいわ。奪われないようにする必要があるし、無ければ前線での被害は大きくなる。運用法を今から検討する必要があるわね」

「作戦そのものに影響するわけか……」

「そういうことよ。実物は後で見せてもらえるかしら?」

「それくらいは構わん、後で案内しよう」


 それぞれの近況を確認した後、私は軍の陣地に連れて行かれた。そして『教会からの荷物』とやらを見せてもらった。


「これが例の……」

「そうだ、何か解るか?」


 確かにこの石、普通ではない。尋常じゃないほどの魔力を放っている。これでは魔力探知を阻害しかねない、だから連中はこの石に気付けなかったのね。まさかこんなカラクリがあったとは……。


「理解したわ……。ワルカリアの連中が気付けなかったのは納得ね……。弱体化させられた上に魔力探知を阻害されてしまっては存在には気付けない、何かあるくらいしか考えられなくなるわね」

「やはり、これは切り札となるか」

「紛うことなき切り札ね。味方にも安易に言っては駄目よ。この情報は極力隠す必要があるわ」

「認めざるおえないな……」


 軍の陣地を出た後はギルドに寄って依頼の受付だけして宿に戻った。

 アレについては色々と考える必要がある、アレは劇薬に他ならない、でも必要なことには変わりはない、劇薬は使い方次第では特効薬だからね……。

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