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34話 貸しと借り

 翌朝、私は迷宮『パステルの砦』に向かった。


 今回迷宮に潜るのは、紅蓮堂の店主から貰った剣を試すのが目的なので5階層まで潜るつもりでいる。

 本音を言うとお金の為に更に下の階層も見に行きたいけどやめておく。5階層の先も実力的には恐らく大丈夫だと思うけど、念の為に5階層までの情報を基に準備してから挑むつもりでいる。うっかり大怪我したり死にたくはないからね。


 迷宮の入口の近くで『依頼』でご一緒した冒険者とばったり遭遇した。


「お?ジャンヌちゃんじゃないか!今日は迷宮に潜るのかい?」


 Aランク冒険者のガルドンだった。彼がここにいると言うことは『血盟の炎』も今日は迷宮に潜る予定だったのだろうね。しかし一人しか居ないのはちょっと気になるわ……。


「あ、ガルドンさん、他の皆さんはどちらに?」

「あぁ、あいつ等はここの屋台で朝飯食ってるところだよ。昨晩飲みすぎて皆寝坊してたからな。あ、俺はちゃんと起きて宿で食ってきたぞ」


 とんでもない情報を暴露してきたわね……。それ高ランク冒険者のパーティーとしてどうなの?

 正直私はどうかと思うけどね……。転生前の私もAランク冒険者だったけど、流石にそこまで乱れた生活はしてなかったわね。

 意外と彼等は冒険者の仕事以外はポンコツなのかもしれない。


「で、どうだい?これから潜るなら一緒に潜らねぇか?臨時で一緒になるのも実力者たるお前ならアリだ。ランクは関係ないからな」

「ありがたい申し出だけど今回は断るわ。今日は武器の試しが目的だからね。付き合わせるわけには行かないわ」

「律儀だな、まぁ誰も文句言わねぇと思うぞ。俺たちもお前には貸しがあるからな。お前はあのマウントゴブリンの軍勢を蹴散らしてった。本来なら俺たち高ランク冒険者が先陣きって戦わねばならなかった場面だからな」


 まぁ否定はしない。本来なら高ランク冒険者が率先して皆に指示をして先陣をきるべき場面なのは確かだった。尤もあの人数であの包囲網を突貫できるかと言われると無理だけどね。


 彼としては借りはさっさと返しておきたいって訳ね。つまり私が武器を試すという目的を語ったのはまんまと参加させる口実を作ってしまう行為だったと……。流石はAランク、この手の会話も強かね。


「気にすることじゃないわ。それより聞いたかしら?王国常備軍の先遣隊がこの街に展開してるそうよ。ワルカリア討伐に本腰を入れるらしいわ」


 さっきまで緩かった彼の顔が引き締まった。この件は冒険者にも無縁とは言えない。討伐軍への参加が依頼として出回る可能性は高い、そして高ランクともなれば指名で強制されてもおかしくない案件なのだから。


「初耳だな。それが本当なら歓迎したいところだが……。だがあのワルカリアだ、ちょっとやそっとじゃ話にならんぞ。詳しく教えてくれないか?俺たちも連中には散々迷惑かけられてっからな。依頼が来るなら参加するつもりだ」

「私もそこまで詳しくは知らない。ただ今回の作戦の総大将は知ってるわ。フリード・フォン・ドリビア子爵、『迷宮の剣聖』が総大将よ」

「あの爺さんが来るのか、まぁ変な奴が指揮官になるよりか全然良い、となれば妙な理不尽は無いだろうな」


 多分これは派手に動いてくれるわね。彼が依頼が来ると同時に派手に参加を宣言すれば人が集まる。素晴らしい広報になる。


「しかしその情報、どこで仕入れたんだ?」


 やはり出処は気になるわよね。まぁ彼なら情報流出はしないだろう。


「王都の大聖堂に伝があるのよ。教会経由で知ったわ」

「そんなところが絡んだか……、やはりお前は只者じゃないな。何者なんだ?」

「ただの期待の新人冒険者よ?」

「期待の新人なんて可愛いレベルに収まってないから聞いたんだがな……。まぁ他人の秘密を探りすぎないのも冒険者のマナーだからな、これ以上は今は探らん」

「おーい兄貴!その女の子はどうしたんだ?」


 どうやらパーティーの仲間が来たらしい。それにしても同じ依頼受けたのに覚えてなかったのかな?


「おいヤッタノ!お前は覚えてねぇのかよ!?この子はパステル商会の護衛依頼に一緒に参加した冒険者だぞ!」


 あーあ、雷が落ちちゃった。自業自得だね。


「あれ?ジャンヌちゃん?」

「あれ?じゃねぇぞ!舐めてんのか」


 ヤッタノが怒られてる間に最後の準備を整えておこう。彼等と一緒に行くにしても別で動くにしても今しか時間はあるまい。

 実際に私は武器は普段はマジックバッグに仕舞っている。必要なときにしか武装は出さないようにしてるのだ。なので今は腰に剣や刀は下げてない。ギルドや戦地に行くときは流石に万が一に備えたり舐められたりしないようにする為に武装は出すけどね。


 私が準備をしている間にヤッタノへのお説教は終わり『血盟の炎』のメンバーも揃ったみたいだった。どうやら私を臨時でパーティーに入れることに関して全員一致で賛成だったらしい。この状況ではもう断るわけには行かない、なのできょう一日限りでパーティーに参加することになった。

 因みにヤッタノはチャラくて頭も悪いけど、戦闘能力は高いらしい。今回のように怒られることも多いとか……。これでは昔のフリードの劣化版じゃないか……。


「じゃあ、行くぞ!休み明けだから15階層までにしておくぞ!」


 こうして臨時パーティーでの迷宮攻略が始まった。予定より深く潜るけどベテランと一緒なら大丈夫だろう、うん。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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