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29話 マウントゴブリンの軍勢(下)

 狙いは定まった、遮るものはいない、フフフ、ワクワクするわね。


 私は構築した術式を展開し『破却の雷』を発動した。

 轟音と共に狙った位置に雷撃が落ちた、そしてその電撃は生物や金属を伝って一気に広範囲のマウントゴブリンを感電死させた。運良く耐え切った個体や効果範囲の限界付近にいた個体は死んではいないけど痺れて動きがない。この一撃で400体近くは蹴散らせたわね。見た限り部隊の大半が死んでおり、最早部隊として機能はしていない。


 残党を他の部隊に合流はさせるつもりはない。生き残ったのは進軍を開始していた先鋒の30体が大半を占めていて、それ以外はほぼ麻痺して動けない状況にある。なので4グループと共に突撃すればすぐケリは付くと思う。他のグループの近くではそんなヤバい脅威は差し迫っていないこらチャンスね。


「ジャンヌちゃん!?」

「さ、作戦はどうなった!」


 持ち場を離れて急に現れた私に驚いてしまったらしい。

 4グループのリーダーでありローナの夫、ガルドンに至っては狼狽えてた。


「ここは前に出る局面だと判断したわ、一気に押し返すよ!さっきの落雷は見たでしょ?アレで大部隊の大半を潰したわ。そのそろそろ正面に現れる30体を蹴散らせば大部隊が1つ完全消滅するわ!」

「分かった!よし、お前ら!敵を一気に蹴散らすぞ!俺達『血盟の炎』の力を示すぞ!」


 彼の号令一下、4グループこと4人パーティーの『血盟の炎』のメンバーたちは気炎を上げた。

 パーティー単位でメンバーを揃えたのは連携の取り易さを重視した為だ。

 今回の参加パーティーの中では『血盟の炎』は圧倒的に強い、Aランク冒険者2人に加え、間もなくAランクに上がると言われているBランク冒険者2人が所属している。まさしく精鋭部隊ね。



 彼等は誰一人としてやられることは無く、無傷で30体を瞬く間に殲滅した。転生してから見てきた現役冒険者パーティーとしては最強と言って良いわね。感心している場合じゃない。


「私は定位置に戻るわ。次に備える必要があるから」

「俺達も茂みに戻るぞ。作戦は終わってねぇからな!」


 そして定位置に戻ろうとした時、ローナが小さく呟いた。何か理由が分からなさそうな雰囲気を漂わせて……。


「あの子はいったい何者なのだ?」


 確かに私は強すぎる、自分で言うのもおかしな話だけど強すぎる。不気味に思われるのも無理はない。死ぬ前の記憶を持ったまま転生した人など歴史上数えるほどしかいないはずだし、ここまでの神々の御加護を受けた存在も同様、完全な希少種にして人の形をしたバケモノと言われてもおかしくない存在なのだから。


ーーーーーーーーーー


 各戦線では各個撃破が進んでいた。私も当然援護に向かったり集結した部隊に大魔法を打ち込んたりして着実に数を減らしていった。

 途中で街に籠もっていた人々が武装して打って出てきたりして敵陣営を撹乱したりする日面もあった。

 そして日没直前、遂にマウントゴブリンの大軍勢は撤退を始めた。既に軍勢の6割がやられている、流石にこの軍勢を率いる群の長も継戦不可能と判断したのだろう。


 だけど逃がしはしない。運良く撤退の号令をかけたところを確認することができた。ソイツは周囲に装備の良いゴブリンたちを集めていたから非常に目立っていた。


 多分、撤退が遅れているわね。理由は2つ、1つはアイツがビビって精鋭を集めたこと、もう1つは純粋に軍勢の規模が大きいこと。

 まぁこんなのどうにもならないよね。マークした以上は徹底的に追う必要はない、マトモな撤退になるまで魔法で蹴散らしていくとしよう。


 何発か魔法を打込むとマウントゴブリンたちは普通にパニックに陥った。まぁそうなるよう見た目の派手な魔法で追撃したんだけどね。そして奴とその取り巻きは一目散に逃げ出した。

 それがキッカケだった。遂に軍勢と言うか群が完全に瓦解した。四方八方にマウントゴブリンたちが逃げ回る。うん、これは追いきれないわね、だけどあいつ等だけは消そう。


 ここで想定外のことが起きた。何と逃げ始めていた長の隊の中で仲間割れが発生した。指揮を取って一目散に逃げた群の長が背後から仲間によって殺された。そのまま一緒にいたマウントゴブリンたちは血で血を洗う同士討ちを始めてる。

 もうこれではどうしようにもない、殺すか。


 私は爆炎球を発動すると同士討ちを始めたマウントゴブリンたちに向って行使した。そしてその爆炎球は爆ぜると同時にそこにいた奴らを即死させた。


 これで私がやることは終わった、さぁ戻ろう。

 そろそろ私以外は街に入れただろう。疲れたし、さっさと合流して宿で寝たい。だって子供だもん。

 まぁすぐに寝させてはもらえないと思うけど……


ーーーーーーーーーー


 予想はしてたけど街の門は閉まってた。なので魔法を使って侵入した。バレてないから大丈夫だよね?


「おい!まだ戻ってきてない子供の冒険者がいるんだ!もう一度開けてくれ!」

「一時的に脅威は去ったとは言え、危なくて開けられない。街に被害が出ては遅いんだ」


 どうやら私のことでキャラバンの皆と街の守衛が揉めてるようだった。

 放置するわけにはいかないわね……。


「私なら戻ってきてるよ。街には魔法で飛んで入ったわ」

「相変わらずめちゃくちゃだな、お前さんは…」

「魔法で侵入だと!?」

「あっ!私、キャラバンの護衛に参加してた冒険者です。ゴブリンの群れの長と思われる個体を追跡してました。まぁ巣に戻る前にトラブルで殺しちゃいましたが……」

「功績は認めるが……門前で声をかけろ!」


 まぁ普通に怒られるよね。

 私は衛兵からお説教をされてから開放された。


 この後は予想外なことに特に宴会もなく休めた。

 これ、明日に先送りのパターンじゃないかしら?

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