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25話 山賊の尖兵

 私が護衛として参加したキャラバンは昼過ぎにパステルの街を出発して街の東にある鉱山にむけて前進していた。夕方に差し掛かった頃、キャラバンの近くに何者かが近づいてきた。

 怪しいと思った私は探知魔法を使い、その存在を確信した。


「南側に潜んでるのがいるわね。何者かの存在を感じるわ。偵察しても良いかしら?」

「確かに視線を感じなくはないな」


 どうやらローラも気づいていたらしい。


「ローラさん、お願いしても良いかしら?」


 何故かレディアはローラに頼むらしい。子供の私は信頼ならんと…。


「待ってくれレディア殿、ジャンヌ殿は探知魔法を使えるか?」

「使えるわよ」

「ならば私よりジャンヌ殿についてきてもらった方が良いだろう。一緒に行くぞ」


 流石Aランク冒険者、ここまでの状況判断は過ちとまでは言えないわね。

 でも重要なことを忘れてる。


「馬車の護衛があるから実力者のローラさんは残ってて私一人で十分」

「ジャンヌ殿の意見も一理あるな、私とジャンヌ殿の両方が抜けるのは戦力的に痛い。探知魔法を使えるジャンヌ殿が偵察には最適だが、子供一人で行かせるのは大人としては恥だな…」

「だったらヤーノさん来てくれる?」

「ようやくお姉さんを頼ってくれた、えらいえらい」


 いや、そこはイジるところじゃない。でも来てくれるなら良いか…。


「うむ、それなら私も納得する。それで良いか?レディア殿」

「わ、分かりました(なんか不安)」


 これで私が偵察できることになったわね。それが一番早い。


 私はヤーノと馬車を飛び降りると南へと森を駆けた。私の探知魔法は敵をしっかり捕捉している。私が迷うことはあり得ない。問題はヤーノがついて来れるかだけど…


「ちょ、ちょっと、早すぎるわよ!」


 うん…こうなったか…。まだ馬車は余裕で見える位置で補足位置まで半分の距離しか進んでないのよね。思ったより早い段階で遅れだしたようだわ。

 私はまだ小柄だから身軽に動ける。それに対して彼女は巨乳だったりそれなりの体に成長してた為、森の中での機動力は落ちていた。

 これ、見捨てるわけにもいかないし、仕方ないけどスピード落とすしか無いわね。


「分かったわ、ちょっとだけスピード落とすわ。それとまだ半分くらいしか進んでない、帰りのこともあるから急ぐわよ」

「ま、まだ半分…」

「恐らくは視力が極めて良いか遠見の道具を用意してるのかもしれないわね」


 それなりに距離があることを考えれば、それくらいは想像がつく。そして既に私たちが接近していることに気づかれてる可能性もある。


 スピードを落としたその瞬間、前方より矢が飛んできた。私は魔法で防御して刀を抜いた。


「敵は私たちに気づいているわ」

「うそ…」

「矢が飛んできたのがその証拠よ。弓は見えなかったから、多分だけど弩を使ってるわね。この環境下だとより隠蔽効果が高い分厄介よ」

「そんなぁ…」


 ショックを受けてるわね。子守のつもりだったんだろうけどかなり危険な任務なのには変わりない。ローラは正しく理解していたけどヤーノはダメダメね…。


「撤退よ。もう敵がいることは判ってるのだから情報を持ち帰るべきよ」

「いや、追撃するわ。敵の正体を把握しておきたい。得られる情報の精度を上げるわよ」


 敵を見つけただけで放置はないでしょ。先手を打たなきゃ何時までも後手後手に回り、不利な立ち回りをすることになる。そんなの私がいて許すわけにはいかない。


「第一報を受けてキャラバン全体で…」

「くどい!そんな対処に充てられるほどの人材は確保できてないのよ!」


 勿論敵の諜報員を討てるなら討っておきたい。敵は元から一人だけ、巧くやれば敵の情報伝達に支障をきたすはず、そうなれば有利に事を運べるようになる。


 飛んでくる矢を弾きながら、罠を破壊しながら私たちは敵に向かって前進する。


 敵の目前まで迫ってきたところで敵は逃走を始めた。まず間違いなく敵の諜報員、組織の規模を明らかにする必要があるわね。そして敵に情報を持ち帰らせない。


 敵が逃げ出したことで矢の対処が無くなり進撃速度が上がる。


「敵の拠点についたらそこで待機しつつ敵の情報を集めて、私は追って諜報員を始末してくるわ」

「わ、分かったわ」


 もう立場が逆転している。それだけ実力差があるということを彼女も理解していたみたいね。でもこれで心置き無く本気で追跡できる。

 小柄と身体強化による超体力はこういう場所での追撃戦には有利よね。



 追撃して数分で敵の諜報員は捕まった。と言うか追い付かれるなり降伏した。それどころか『こんな命乞い見たことない』という感想を抱くような命乞いを見せてくれた。

 どうやら近くの山賊団の所属らしく、上がワルカリアに頭を垂れたらしい。結果的にその都合でこの街道を見張ってたそうだ。

 さらに不憫なことに家族を人質にとられて仕方なく山賊団に入ったらしい。取り敢えず連行ね、言い訳は然るべきところでしなさい。



「終わったわよー」

「つ、連れてきちゃったの?」

「うん、まぁね。言い訳は衛兵の詰所でさせれば良いし、結構情報喋ってくれたから連れ帰って洗いざらい吐かせることにしたわ」


 敵の拠点の物は全て回収した。そしてそれらは全て私のマジックバッグの中に収納されている。


 荷物の接収を終えた私たちは捕虜を連行しつつキャラバンに戻った。

 私たちが偵察に出た為、一度停まって警戒態勢を敷いていたらしい。なので案外すぐに合流できた。


「大活躍だな。まさかワルカリアの尖兵を捕らえてくるとは…」


 ローインも驚きを隠せないでいた。ローインを筆頭にほとんどのものがワルカリアの襲撃を想定していた為、案の定って感じだったようだけど、まさか偵察に出ていた尖兵を捕らえてくるのは想定外だったらしい。

 でも、これで敵の計画の一端が明らかになった上に計画の遅延まで見込めるらしく、私の功績は高く評価された。


 油断はできないけどね。


 今日はもう少し先にある小さな町まで行くらしい。私が捕えた不憫な山賊は町の衛士に引き渡すことになった。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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