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23話 初めての依頼

 昼過ぎ、私はバズテル商会に到着した。

 集合時間には間に合ったわね。


「お?噂のジャンヌちゃんじゃないか!」

「マフィアの次はクリエルマ伯爵家か、血気盛んだねえ〜」


 凄い言われようだった。


 因みに今朝の朝刊は街中で大騒ぎになった。

 何が起きたのかと言うと私を利用しようとしたあの悪代官がキレたのだ。奴は街中で朝刊を焼き捨てるように指示を出した。しかしパステル市民たちは私に付き、悪代官の命令を無視した。これに対して悪代官は領軍を以て鎮圧するつもりだったらしい。市民たちから思いっきり反感を買ってしまい、越権行為でもあったが故に領軍からも反発された。

 そうして彼は家中の領国経営組の中でも孤立し始めた。そう遠くない内に破滅するだろう。


 因みに焼き払えと市民に命じた理由は「私の言葉が正しく、朝刊の内容はデマである」とのことだった。当然誰も信じなかった。


 そんなこんなで集まった私以外の12人の冒険者たちから色々と言われてしまった。


「すみません!集まった冒険者の皆様こちらに来てください!」


 そうしてイジられてる内に商会の人から集合するように指示があった。

 黙って導かれるがままに進むと会議室に通された。多分今回の依頼の詳細を説明する場なのだろうと当たりはつけた。


「皆さん、今日はお集まりいただき、ありがとうございます。集合完了時刻までもう少し時間がありますので、少々お待ち下さい」


 わざわざお茶まで用意してくれた。この茶葉、美味しい。流石はあの鉱石の鉱山を保有してることだけはあるわね。質の良さがよく分かる。


「良い茶葉ね、フルケン領の茶葉かしらね?」

「よくお気づきで、確かにフルケン領産の茶葉です。甘味とフルーティーな香りが特徴的です。旦那様が好きでして、わざわざ取り寄せられてるのです」

「フルケンの茶葉は高品質だけど高価なのが難点なのよねぇ…」

「嬢ちゃん…よくそんなこと知ってるな…俺たちにゃ無縁だぜ…」


 正解だったけど、流石にこんな高級品の話されても普通の冒険者はついてこれないわよね。ガタイの良いのが特徴的な斧使いのオジサンに突っ込まれてしまった。

 まぁ私も王族なんぞに転生しなければ知ることすら無かったんだけどね…。


「しかし嬢ちゃん、体は大丈夫なのか?」

「先日の怪我ならなんとかしたわ。後遺症もなさそうよ」

「なら良かった。俺たちは人生の折り返し地点過ぎてるが嬢ちゃんは若いしまだまだこれからだろ?」

「そうだけどさ…」


 言葉に詰まること言うわね…。


「あらあら、ジャンヌちゃんが困ってますわよ」

「おう、そうだな」


 私以外の唯一の女性である剣士のお姉さんが手を差し伸べてくれた。今のフォローは助かったわ。

 正直な話、戦場に年齢なんて持ち込んじゃダメだと思うの。


「ありがとう」

「もっとお姉さんに甘えて良いのよ?」


 こっちはこっちで妹分として可愛がろうとしてるわね…。

 ただの私の取り合い?


「それにしても飲み方が貴族みたいね。私、依頼で貴族女性の護衛も何回かしたことがあるから分かるのよ。ウフフ♪」


 うげっ!なんてこと言うのよ!お茶を吹きかけたじゃない!

 吹きかけた私を見て微笑んでくる…。私は愛玩動物じゃないわ!


「もう…びっくりするじゃない!」

「ウフフ♪ホント、可愛いわね」

「貴族…なのか…?」

「違うわよ!」


 余計なイジられネタが増えてしまった…。あ~やりにくい…。


 私が可愛がられてる内に残りの冒険者が次々と部屋に入ってきた。その中には先日救護してもらったパーティー『パステルの獣』の3人も含まれていた。


「おう!嬢ちゃん!また会ったな!」

「先日はお世話になりました」

「なーに、辛気くせえこと言ってんだよ。良いんだよ。嬢ちゃんのお陰でこの街から奴らを追い払えたわけだからさ」


 リーダーのグラットは景気良さげに大笑いをしていた。


「へぇ、知り合いなんだ」

「何があったの?教えてよ!」

「意外な組み合わせだな」


 外野は完全に興味津々ね…。

 ただ助けられただけなんだけどね…。


「この前、この街に駐留してたワルカリアが壊滅しただろ?この嬢ちゃん一人で基地をぶっ壊してくれて、さらにこの街のワルカリアのトップを一騎打ちで倒してみせたんだよ!んで俺たちは力尽きてしまった嬢ちゃんの手当をしたんだよ」


 グラットさん…余計なことは言わないでほしい…事実だけどさ…


「へぇ…そんな事あったんだ」

「おいおい…マジかよ…。あの爆発直後に現場に向かったのか…勇者すぎるだろ…」

「じゃあジャンヌちゃんは『パステルの獣』に持ってかれちゃうのー?」


 思わぬ形で『パステルの獣』の評価が上がってしまった。運が良いわねぇ…。いや、強かと言うべきかな。

 当然だけど私はソロを貫くつもりだからね。『パステルの獣』には恩はあるけど入る程、肩入れはしないわよ。


「私は事情があって今はソロで居たいので…」

「ふーん…意外ね…」


 雑談は続いたがそれも終わりが来た

 全員が集まったところで商会長のローインがやってきた。私を含めて18人がこの依頼を受けたらしい。


「皆様お集まりいただき誠にありがとうございます。今日から4泊5日の日程で当商会が有するソーディニウム鉱山に行きます。片道2日かけて進む予定です。ソーディニウム鉱山を中心に発展した町で2泊しますので、そちらの宿も既に我々が押さえております」


 ここまでは聞いてた通りね。

 さぁ彼は何を言いたいのかしら?


「今回のキャラバンの編成とそれに合わせた護衛の編成を決めましたので皆様にお伝えいたします」


 キャラバンは7台の荷馬車、人員が商会関係者が27人と冒険者18人の合計46人で構成される。一応、今回同行する商会関係者は多少の戦闘技術を持つ者のみが選ばれるらしい。

 私は商隊の中央の馬車に乗ることになった。

 私の配属先は女性ばかり、商会側の馬車の乗員も女性ばかりだね。これは意図的に集めたわね。

 これはプライバシー気にする女性対策かな?

 ま、同性だけの方が気が楽でいいけどね〜。


 編成の話が終わったところで予想されていた最大の爆弾が放り込まれた。


「そして今回の依頼においてはワルカリアの襲撃が予想されている。全員無事でここに帰ってくれることを願っている」


 知らない者は唖然としていた。逆にこの街で応募したり情勢が読める者、資源に詳しい者はそのリスクを理解してたので動じなかった。もう想定の範疇なのだろうし、それを覚悟してこの依頼を受けてるはずだった。


 この発言を最後に説明会は解散となり、冒険者たちは指定されたキャラバンの馬車に乗り込んでいった。


 こうしてキャラバンの護衛任務が始まった。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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