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19話 悪代官へのカウンター(下)

「すみません!」

「あらジャンヌ様、どうされましたか?」

「ちょっと至急届けたい書状がありまして…」

「書状?」


 そう、クリエルマ伯爵家に対する抗議文を届けに来たのだ。

 領内で大活躍した冒険者と有力新聞の発行元からの抗議文を叩きつけられたら、流石に伯爵は必ず動く。それも教会を通じて送ることで教会まで敵に回す可能性を匂わせる。


 正直これほど効く手はないだろうと私は考えていた。


 少し事情を話しただけで教会の受付係は激怒した。領主のやることではない、況してや領主の代官が勝手に手を出すなど言語道断と言わんばかりだった。


「これは赦される話ではありません。直ちに神官長に連絡します」

「面会は可能ですか?」

「証人がいた方が確実です。寧ろこちらから頼みたいほどです」


 これはありがたい、素直に受けてしまおう。もしかしたらこの教会の神官長も抗議文を書いてくれるかもしれない。そうなれば効果はさらに期待できる。


「ではお願いします」

「分かりました。こちらです」


 案内された際には一昨日お世話になった神官長がいた。


「これはこれはジャンヌ殿、来ていただけるとは幸いです。先程も領主の配下がここに来てジャンヌ殿の件で騒ぎを起こしたばかりでした…」


 どうやら教会も巻き込もうとしていた模様、どこまでも逃さないという執念は感じる。でもその執念が仇となるのよ。


「あの馬鹿、まさか教会でもやらかしたの?本当に終わってるわね」

「誠に遺憾であります。流石に度が過ぎますので明日にでも当教会から伯爵閣下に抗議文を送ろうかと」

「助かるわ。この抗議文も一緒に送ってもらえるかしら?」

「構いません。苦情が多ければ多いほど伯爵は動かざるおえなくなります。あの代官は直ちに排除すべき存在です。逸早く対処する必要があるかと思います」

「同感です。済まないけど頼むわ。事の次第については…」


 私は一昨日から何があったか、彼に話した。

 表に出さぬようにしていたけど明らかに怒気を感じた。

 教会は俗世とある程度の距離を置いている。そこに無理矢理介入を試みた為に心象は最悪と言っても良いと思う。多分協力は得られるわね。


「………と、こんな感じです…」

「これは…許し難き問題ですな…。そこまで落ちていたとは…」


 神官長は何とか怒りを堪えてる感じがする。


「神官として、このような不誠実を見逃しておくわけにはいきません。我々にお任せください」

「お願いします」

「神に誓って確実に行わさせていただきます」


 この人は信頼して良さそうだ。


 協会での要件を終え、私はギルドの迷宮支部に向かった。

 今日の戦利品は今日の内に売っぱらっておきたいしね。


ーーーーーーーーーー


 危なかった…ギリギリ間に合った…。

 窓口はまだ開いている。閉まる前に駆け込めて良かったわ〜。


「すみません、これから買取お願いしたいんですけども…」

「は、はい…」


 受付係の顔にあからさまに落ち込んでいるのが出ていた。まぁ私のせいで残業確定だからね…。悪いことをしたとは思っている、でも手持ちの素材を売れるタイミングが今しかないから私だって必死よ。


「取り敢えずライセンスカードをお願いします」

「これで問題ないでしょ?」

「は、はい……って…え…?ジャンヌさん!?」

「新聞で一躍有名になってしまいましたわね…。ああ、クリエルマ伯爵家からの依頼は一切受けませんし、奴らが私について何を言おうと事実無根と思っていただければ大丈夫ですよ」

「そ、そうなんですね。ではこちらに素材や戦利品をお願いします」


 さて、今回は第一階層だけなのでやたら嵩張る戦利品ばかりなのよね…。

 大量の鎧、大量のダークバット、見るだけでウンザリしそうな代物ね…。


「これで全てですか?なかなかの戦果ですね」

「いや、まだあるわよ。あれは事情を話す必要のある代物だから後回しにしたの」

「何か異変でもあったのですか?」

「重心にコアのないゴーレムよ。第1階層に現れてはいけない魔物ね…」

「え?デビルウォールを倒したのですか!?」

「倒しました。これが素材です」


 素材を見た受付担当が固まってしまった。余程衝撃の事件だったらしい。


「これは…明日の朝、改めて来てもらえますか?事情を詳しく聞かなければなりません」

「昼までには終わるわよね?」

「それは確証持てないかと…」

「じゃあ今日のうちに終わらせるか、私が護衛依頼から帰ってくる5日後にしてもらっても良いかしら?」

「分かりました。では5日後の朝、またお越しください。支部長には私から連絡入れます。その時に報奨金は支払われます」

「それで良いわ」


 ようやく取引が終わった。正直長すぎるわね…。

 報奨金は後になってしまったけど仕方ないわね。


 それにしても迷惑かけちゃったなぁ…。あの悪代官の嫌がらせのせいで色んな所に迷惑をかけている。こんなの赦しちゃダメ、あの悪代官はちょっと痛い目程度で終わらせるつもりはない、徹底的に地獄を見せないとね。


 さて、明日からは4泊5日の護衛任務だからね。ひとまずそれに集中しようっと!多分ワルカリアは湧いてくるだろうし…。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。

次回は7月15日月曜日19:30を予定しております。


これからも理を越える剣姫を宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最新話まで読ませて頂きました。 王国内の政治情勢や貴族の関係性がしっかり描かれていて物語に奥行きを感じました。それによって大人達に立ち向かうアリシアの凄みがより際立ってるなと思います。 2…
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