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17話 パステルの砦

 基本的には迷宮の入口は人が多い、特にここは街に直結してるので人の数がちょっとすごい。

 ゴミゴミした入口を抜け、迷宮たる砦に入った。

 そこは光が無いようで視界が確保されていた。これも迷宮の特徴、世界の神秘だった。


「ここの表層は獣よりアンデットが多い、ゴースト属性が多発しないと良いけど…」


 そう、この迷宮、パステルの砦は表層たる5階層まではアンデットの出現率が高い。因みに第1階層は途轍も無く広い、使われていた頃の砦の地上部分ほぼ全域が第1階層なのだから。なので稀に第1階層では遺物や古文書の類が産出されることもあり、考古学的にも価値のある迷宮だったりする。

 2階層以降はどうなってるのかと言うと、迷宮化して構成された地下空間が2階層以降なのだ。降れば降るほどアンデッド率が下がり獣型の魔物とかが増えてくる。


 アンデットはアンデットコアを砕けば死ぬ、砕かないと永遠に再生を繰り返す特徴がある。

 アンデットの中でもゴースト属性持ちは非常に厄介、ただの物理攻撃は効かず魔法が無いとそもそも攻撃すら通らない。つまり魔力を消費し続けることになる。ゴースト属性持ち多発はあまり歓迎したくはない話だった。


 少し進んだところでスケルトンの一個小隊と遭遇した。構成は指揮官たる小隊長の個体1体と戦闘員20体からなる小隊だった。

 スケルトン本体は弱いけどこの迷宮のスケルトンは一味違う。なんとスケルトン全員が鎧を着ていたのだ。昔のここの駐屯兵を模しているのだと考えられる。


 小隊長たる一体の指揮でスケルトン小隊がこちらに動き出した。

 取り敢えず突っ込んできたスケルトンの首を大太刀で刎ね、動きを止めた。

 こういう部隊を相手にするときは指揮官を狙う、これは普遍の鉄則だ。私はスケルトン小隊のメンバーを一時的に無力化すると小隊長の個体に狙いを定めた。大太刀を上段に構えると魔法を付与して叩き斬り上から下まで綺麗に両断した。厄介な指揮官のアンデットコアを砕いたことで周りの個体は統率を失い、著しく弱くなる。

 小隊長を始末してる間に一部個体が再生を始めたけど動きにキレがない、まず間違いなく指揮官喪失による混乱現象だった。そんなもの見逃す私ではない。


「ふん、幾ら群れても指揮官不在ならただの無能の寄せ集めね!」


 首を刎ねては胸にあるアンデットコアを破壊して回った。

 鎧は回収すれば売れるからね。極力壊さないよう撃破した。因みに指揮官の個体は再生能力が他より高いことが多く素早く撃破することが求められたので鎧ごとぶった斬るような真似をした。面倒くさいんだもん。


 スケルトンの骨も売れないことはないけど安い、コストパフォーマンスが悪すぎて持ち帰る気にはなれなかった。指揮官の骨も…微妙ね…。正直他の骨よりはマシだけどこれを無理して持ち帰るほどでは無いわね。


 回収するものを回収して歩いていたらラッキーとアンラッキーが同時に来た。

 ダークバット30匹とレイス5体が現れたのだった。


 レイスは実体があるか微妙なクセして硬いのよね…。ゴースト属性持ちの中でも比較的厄介とされる個体の1つだった。まぁあれは凍らせるのが一番早い。

 と言うことで現れた魔物を纏めて魔法で凍らせた。後はやることは簡単、まずはレイスを砕く。

 凍ったレイスを砕けばアンデットコアの位置の不明確なレイスを簡単に倒すことができる。

 ダークバットは頭を切ってしまえばおしまいだ。

 数がある分、少し時間がかかったものの処理はできた。

 え?ダークバットの頭を切る必要があるのかって?だってアレ、凍ったくらいじゃ死なないもん。


 問題は素材だった。

 レイスは倒しても何も残らない、下手すると死んでもなお呪いをバラ撒く存在であり、損しかない魔物である。まぁ今回は凍らせたから呪いをバラ撒かれずに済んだけど…。

 ダークバットはそこそこ高く売れる。けれど気をつけないと牙から分泌する毒液で周りの物を腐食してしまう特性がある。取扱注意素材だった。勿体無いから持ち帰りたいけど耐腐食性の袋なんて持っていないしどうしたものか…。


「あ、そう言えば!」


 そう言えばスケルトン小隊の防具があった。中には耐腐食性の効果のある素材が使われてるのもあったはず。それで包んでしまえば解決できる!

 決まれば早い、該当の鎧を取り出して耐腐食性の素材の部分だけを切離した。


「これで解決ね」


 鎧1個の損失でかなりの稼ぎの出る素材を回収できるなら安いものよね。


ドゴンッ!


「グハッ…」


 急に背後からぶっ飛ばされ壁に叩きつけられた…何があった…。

 振り向いてみたらゴーレムがいた。これは…ゴーレムが壁に擬態していたらしい…。気づかなかった…。


 このゴーレム、最低限しか資源取れなさそうなのが残念なのよね…。砦の壁に擬態してたくらいなので構成素材は恐らく煉瓦や土、売っても話にはならない。売れるものと言えばゴーレムコアとその周辺にできる少量の宝石くらいなのよね…。


 まぁやられた以上やり返さなきゃね。


 ゴーレムコアは重心部にあることが多い、そしてそのコアに一定以上の損傷を与えないとゴーレムは死なない。損傷が大きくなればなるほど弱体化するのもゴーレムの特徴だ。半面無傷の状態のゴーレムのパワーは凄まじい力を発揮する。ありがたいのはスケルトンとは違って再生能力は持たないことだったりする。


 ひとまず振り回されるゴーレムの腕を掻い潜りながら重心部を大太刀で強打した。打撃の衝撃で痛めつける作戦だ。尤もコアまで斬れるなら斬ってしまうのが一番早い、まぁ通らなかったけどね。

 そして刃は少し喰い込んだところで止まった。結果は上々、と思いきやそうでもなかった。


「そんな!?」


 なんとゴーレムの動きにその鈍くなってるところがない。なんとコアの位置が重心部では無かったのだ。

有り得なくはないけどこんな表層に出てくるような存在ではない。


 こうなったら魔力探知をやるしかない。虱潰しに攻撃してたらキリがないわ。


 やってみると意外なところにコアがあった。

 なんと両腕のちょうど間だった。確かにこのゴーレム、一般的なゴーレムより腕力が強いわ…。納得…。


 弱点が判れば後はそこを突くだけ、私は背後に回り込み刀を振り下ろした。この一撃にゴーレムがグラついた。途端に腕を振る速度が遅くなる。

 非常に効果的だった証ね。

 そのまま畳み掛けゴーレムコアを機能不全にすると、ゴーレムはその体を崩れさせた。


 遂にゴーレム撃破に成功した。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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