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37話 逆鱗

 すごく遠回しだけどフルケン侯爵家にとっては私の王太子就任は嬉しいらしい。と言うか期待してるっぽいわね。

 まぁ気持ちは分かる。というのも基本的には民を見るところに共通点があるからだ。残念なことに私は王位継承など考えておらず冒険者登録ができる10歳になったら出奔するつもりだから宛が外れる形になってしまうけどね。


「気高き鷹を落とすのは過ちでなくて?先に飛び上がりし鳥こそ頂に相応しいですわ」


 ブランデン侯爵家は逆にあのクズ野郎を推していた。

 理由は単純、血統である。正室産まれの長男こそが家督を継ぐべきという思想に基づく主張であのクズ野郎とは政策の一致とかは全く無かったりする。如何にもブランデン侯爵家らしい動きだわね。

 気に入らないし嫌がらせしてやるか。


「あら、松明に予備は無いのですね。風吹けば消えてしまいますわね」

「当家を愚弄するか!如何に王女殿下であられても高位貴族家の愚弄は安易に許されるものではありませんわよ!」

「たとえ先に育とうと小物に育ったものが大物に化けることはありません。愚弄されるような愚かな発言は慎まれるべきかと思いますわ」


 ブランデン夫人は激昂したものの、私にしっかり反論され黙り込んだ。周りが賛同を示していたからだ。確かにあのクズ野郎の評判は悪すぎる。それでも傀儡にしてしまえば良いと考えていたブランデン夫人は苦い顔をしていた。因みにブランデン家の家紋は輝く松明を挟む剣と槍だ。


 ここまでのやりとりにお母様もヒヤヒヤしていたけど言われっぱなしではなかった。


「アリシアを王太子にするのは陛下の決定事項です。議論の余地はありません。あの子は国王になるべき者としての素質が無かったのですよ。だからあんな愚か者に育ってしまった…」

「あら?鷹を食い千切るは獅子ではなくて?」

「若獅子に羽はありませんわ」


 アヌーキテ公爵夫人は私と同じらしい。まぁそうよね。出来れば男児を推したいわよね。獅子の紋章を持つローランはかなり重要な位置にいると言って良いわね。

 因みに獅子の魔物の中には翼を生やす種もいるけどある程度の年にならないと生えてくることすらないんだよね。それを例に挙げてくるマンノルディー公爵夫人はえげつない。もう一家揃って私を王太子にする気満々と言って良いわね。出奔する気マンマンの私はちっとも嬉しくないけど…。

 よし、水を差してやる。


「伸びる気の無い樹木に肥を与えても無駄なのでは?」


 お母様が怒ってるのが分かる。他の夫人たちは唖然としている。もはや貴族の仮面を保てなくなってるわ。これは成功ね。

 まさか王太子就任予定者がやる気ありません宣言するなんて思わなかったみたいね。いや、マンノルディー夫人は公爵何も聞いてないのかしら?彼女は知っててもおかしくないと思うんだけどね。


「そうね、時が来るまでまだ時間はある。王太子ではなく王太子代理なら3年以内は許容はするわ、王位に興味はないしやりたくもない、それに私である必要もないのですから」


 想定してなかったであろう直接的な発言に困惑してるのがよく分かるわね。


「優秀な殿下こそ相応しいと思いますわ」

「優秀な王族の王位継承権破棄はこれまで例がございません。お考え直しください」


 フルケン夫人とマンノルディー夫人の言の葉に私は静かに首を横に振った。


「熟考の末ですわ」

「ありえません!どうしてそんな結論が出せるのですか!貴女は王女なのですよ!」


 お母様がキレてしまったわね。流石に私もこれ以上茶番を続ける気はなくした。


「私は全てを告げるつもりは無い。告げる必要すら無いからだ。いや、告げてはならない。王位継承権など私の為すべきことの障害でしかない。だから捨てるんだ」

「貴女!何を言って…」

「茶番は終わりよ。もう一度言う、私には王位継承権など不要だ」


 そうして私は席を立って庭園の出口に向かおうとした。


「待ちなさい!」

「まさか…『時が来るまでまだ時間はある』とはローラン殿下が成長なさる時ではない?」

「あの口調、王族らしからぬ、いや卑しい平民らしい言葉遣いでしたわ…。一体何が…?」

「為すべきこと、王族ならば王族としての義務を果たすことでは?それ以外にあるとは思えませんが…」


 聞こえてくるそれぞれの発言、私は聞き流した。

 大庭園の扉の前についたところで一人で動いてるところが騎士に見つかった。


「殿下、何故お一人で動かれてるのですか?」

「気にすることは無いわ。あそこに居続ける意味は無いわ。無駄な枷など負うものじゃないわ」

「ははぁ…?」

「仕事に戻りなさい。貴方が気にすることではありませんわ」

「はっ、それでは失礼します(何故だろう…胸騒ぎがする)」


 そうして部屋に戻った私は待ち構えてたお母様の侍女たちに本物の、本気の強烈な殺気を浴びせた。あまりの怖さに怯えた侍女たちは部屋から逃げていった。そうしてお母様の手先を排除してから机に置いてあった1枚の手紙に目をやった。

 送り主は大神官ミハイルだった。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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