表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/196

34話 訓練

 ブルダブル洞窟までの道程はブラックオークの群れと遭遇した以外にイレギュラーな事件は無かった。

 正体を明かしたところで影響は少なかった。そもそも広めて良い話じゃないし気持ちの整理もつかないだろうし。


「着いたわね、リーネは殿下の教師役頼むよ〜。魔法の複数同時展開技術だっけ?頼むわ」

「任せるの!」

「皆は殿下を中心に護衛よ。実力的には私達より上だけど万が一があり得るから特段指示がない限りは殿下には魔物を力寄らせないで」

「「はーい!」」


 どうやら最初は基礎技術の習得から入ると判断されたようだった。マリンはさっさと指示を出し、警戒に入った。


「彼女たちに手を出させるまでもなく魔物を倒してみよ!今のお前ならできるはずだ」

「じいちゃん!任せときなって!」


「え!?鬼の様な教育なのは気のせい?」

「気のせいじゃないよ!狂ってるよ!」

「フリードさんって優しそうに見えてめちゃくちゃ厳しいわね…。いや、厳しすぎるわ…」


 私も少し呆れていた。どんな訓練内容なんだと…

 でも納得はしていた。初めてグレンとあった時はまだ技術もへったくれもない歳相応の男の子だった、しかし今の彼は歳不相応の実力者だ。

 幾ら弱点を突かれ弱ってたと言え、ウィズダムデビルボアを一撃で仕留めあげれるのは相当な実力者にしかできない芸当だった。更に言えば先程のブラックオークを相手に前衛一人で善戦してみせたのも並の冒険者では厳しい、普通は捻じ伏せられてしまう。

 あの地獄の様な死線を繰り返すことで度胸と技術を定着させたと考えれば納得はできる、できるんだけどちょっと異常だと思う。よくここまで死なずに済んだなと思えるレベルで次元違いのシゴキでしかない。


「にしても2人共強過ぎない?グレンも大概ヤバイけど、アリシア殿下に護衛要る?下手な護衛つけてもまったく役に立たないと思うんだけど…」

「それは悲しくなるから言わないで…正直私達より強いけどさ…」

「リンネ、一言余分よ…」


 白い徒花の皆さんから完全にドン引きされてるわね…。

 王侯貴族の子女なんて甘々な環境で育ったと思われても仕方無いわけで、そんな中でこんな馬鹿げた圧倒的な実力を見せられたら、まぁ萎縮はするわね…。私も既に騎士たちから呆れた目で見られてるので慣れてるけどここまで士気低下を招くとちょっとこっちも辛いわ。

 でも彼女たちも正直悲観するほど弱くは無いと思う。真摯に取組む姿勢は評価できるし、連携も取れている。そして個々の腕も悪くない、寧ろ愚直に強くなることを目指してるのがよく分かる戦い方をしている。それが傍目で分かるというのはその鍛錬の成果が出ている証拠である。


強くなりたい

強くありたい

上を目指したい


 そんな中で私やグレンと出会うことで鼻っぱしをへし折られてしまったのだ。これはフォローしてあげないとちょっと可哀想だった。


「貴女たちだって然程弱いわけじゃないよ。確かに特殊要因に訓練や経験の差は覆せないかもしれない。でも貴女たちは決して弱くないわ。寧ろその歳でその実力なら将来有望よ。もっと自信を持ちなさい」

「殿下たちより圧倒的に弱い私達が将来有望?」

「確かに有望と言われることはあったけど…」

「そう、見てる人は見てるのよ。貴女たちは有望株よ。正真正銘のね!実力だけじゃない、気合、真面目さ、礼節、あらゆる要素を考慮しての評価よ。上がいるからって自分たちを悲観しちゃ駄目よ!」


 諦めていた顔が少しずつギラギラした目を持つ意思を固めた顔に変わっていく。彼女たちは必ず強くなって、いずれその名を馳せるだろう。その時が楽しみに思えた。


ーーーーーーーーーー


 私は迷宮の中で魔法の鍛錬をしていた。

 リーネの指導の下、魔法の複数展開の技術を学んでいた。


「…っ!」

「魔力が乱れてるの!もっと緻密に制御するの!じゃないと暴走するの!」


 ここまで10回近く魔法を暴走させた。

 理由は簡単、魔法の操作技術の問題だった。私は魔法の制御が苦手で魔力の動きが不安定らしい、その不安定さ故に魔力が乱れが術式を壊し暴走することが分かった。

 結果乱れを正す為の訓練を訓練をすることになった。

 何度も何度も繰り返すうちに少しずつ丁寧になっていく、元の力技で発動していた魔法の必要魔力量が減っているのが分かる。使う魔力を減らせば必然的に魔力の操作は簡単になり丁寧に扱えるようになる、結果的に精度や威力が向上することになった。


「もう少しなの!そろそろ複数同時展開も行けそうなの!」


 如何に研究学術院の魔道士の連中が使えないかがよく分かる。彼らは魔法の開発には優れていても、魔力量に優れていてもその中身はただの力押し、それでは強くはなれないから戦場では役に立たない。つまり攻撃魔法が使える意味が薄いと言うことだ。


 そしてその時は来た。

 私は炎の玉を作ると同時に氷の槍を作ることに成功した。つまり2種類の魔法の同時発動だ!


「習得が早すぎるの!でもその感覚を忘れない事なの!」

「ようやくできた!実戦に応用してるわ!」

「え?待って実戦は早すぎるの!」


 感覚は掴んだ!なら後は応用し練度を上げるだけ!

ふと、グレンの方を見る。

 そこには魔物の屍の山ができていた。かなりの数を屠ったのがわかる。私も負けてはいられない。元Aランクの意地にかけても!


 私は止める声を聞かずグレンの前に躍り出た。


「えっ!?」


 運が良いのやら悪いのやら、30体近い魔物が目の前で発生してくれた。

 皆が唖然とする中、私は魔法を2〜4個の魔法を常時使い敵を蹴散らした。流石に4個だと暴走して消失することもあったけど何とかなった。途中からは刀も併用して暴れに暴れた。訓練は成功と言っても良いだろう。

 ただ、体はもう保たないらしい。既に脚が悲鳴をあげ立つのが辛くなり、強烈な疲労感に襲われた。


「殿下、お下がりください。魔力を使いすぎたのでしょう。少しお休みください」


 残念だけどフリードの言う通りね…。私は大人しく下がって休息した。


「魔力の使い過ぎなの、マジックポーションがあるから飲むの」

「ありがとう」

「魔力を使い過ぎると恐ろしいくらいに疲れるの、身を持って体験したのだからきをつけるの!」


 失敗は素直を反省しよう。そして次に活かさないと駄目ね。それができないと生き残れないからね。


「二度と同じ過ちはしないわ…」

「その心持ちなの!それと魔力拡張に瞑想は覚えると良いの」


 リーネから瞑想の利点を教えてもらった。

 魔力拡張ができれば多少の無茶は許容できるようになる。寝る前とかにやれば効果は大きそうね。


ーーーーーーーーーー


 少し回復したところで帰路につくことになった。

 でも私の魔力はまだ回復しきったわけではなかったので極力前線に出ないように言われてしまった。

 この人数で何かあれば私も前に出ないと厳しいと思うんだけどね。フラグにならないことを祈ろう。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

良ければブックマーク、評価、感想、レビュー等お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ