1話 予定変更
「道術の修行がしたいんでしょ?だったらアマズ山地が良いですよ。キイ侯爵領だったはず」
ナミが加わったことによって計画の変更をすることになった。
現地を知る者がいることで動き易くなるところが大きい。地理、情勢、風習、これらの情報が如何に重要かは嫌と言うほど知っている。それらを考慮せずに組んだ計画は破綻しうる、何だったら破綻しかけたしね。
話を聞くとナミも修行の為にいずれは行きたかった場所らしく、私たちの動きは彼女にとって「川に橋」だったそうだ。
あっちの方に行くのは良い、問題は宗教的な問題から衝突しうる可能性があることだ。
「私がいるから何とかなると思うよ」
「でも所属している社に無断で来てるんだよね?」
「それがどうかした?」
「え?」
彼女は社を抜け出してきてる。
社とて情報網を持ってるはずだ。そう簡単に設備を使わしてもらえるとは思えない。連れ戻そうとするまで考えられる。何かしら対策があるのかね?
「修行の為に訪れる者を排除するほど修験地は狭量ではないわ。ちゃんと修行する分には受け容れられるはずよ。貴女たちは私が紹介するから何とかなると思う」
「そういう論理なのね……」
「そのかわり行儀が悪いと判断されたら追い出されるけどね。私は元の社に連れ戻されて皆は修験地からの永久追放かな?」
さらっと脅し入れてんじゃないよ……。
でも今のは貴族組に聞かせてやりたいわ。一番弛んでたシバスの馬鹿が抜けたことでマシにはなってるけどまだ弛んでるからね。
それに問題はまだある。
「私が面倒見てる3人はどうなる?あの子たちは聖気や社とは無縁の立場よ?」
「うーん?冒険者ライセンスは持ってるのでしょ?だったら護衛の扱いにすれば良いわ。何だったら近くの迷宮に行かせても良いんじゃない?非公開の場所を含めてあそこは数多の迷宮が存在してるわ」
いやいや、非公開って……。
修行の為の場所として制限されてる場所じゃないの?そんな場所に外部の人間連れ込んで良いわけないと思うんだけどなぁ……。
「修行用の非公開の迷宮も完全に管理できてるわけではないのよ。だから魔物が繁殖し過ぎてるところもあるらしいの。だから、ついでに間引いてしまえば良いわ」
「ふーん、つまり戦闘訓練がてら迷宮に行くこともできるのね」
こちらとしては使い途ができたとも言うけど、あまり好ましくない状況なのよね。
魔力に満ちた迷宮は放置すると中の状態が悪化してスタンピードが起こることもある。それを防ぐには中の魔物を討伐して迷宮の魔力量を減らしてやる必要があるのだ。
そして魔力量の多い迷宮は迷宮が多い地域に現れやすいと言う特徴も知られている。多分迷宮を構成する魔力量が多いから迷宮がたくさん発生するんだけど……。
「それにしてもあの地域の迷宮多過ぎない?かなりの数あるみたいだけど……」
私が抱いた疑問を問うと彼女は少し黙り込み、そして答えた。
「祝福と災難の地」
「え……?」
初めて聞く言葉だ。
それにしても祝福と災難?
祝福と災難は逆の意味を持つ言葉同士と言える。
なぜその2つなのか?
「あの地はこの国の原点とも言える地域なの。初代王が神々と初めて逢い、祝福と啓示を受けたとされる山もある。その山はこの国最高の聖地とされているわ。勿論一般には知られていないけどね」
神話クラスの話が聞けるとは思わなかった。
まさかそんな話だったとは……。
「西のベムツヘレも似たような逸話があったはずよ。西の神殿はこっち以上隠蔽してるけどね。他にも世界には何箇所かそういう場所があって、それぞれ宗教の起こりの地になってるわ」
王族として色々と学ばされた私でも知らないことが多い。いや、これは内部にいなければ分からない情報と言うべきかな?
どちらにせよ前世と今世の両方の知識があると言ってもまだ学ぶべき事が多い。
邪なる者や魔族ですら知らない事、知られていないことが多いのだから。
「あの地に何があるのか、私の立場では行くしか無さそうね?」
「立場?」
「ううん、忘れて」
ともあれ次の目的地は予定を変更してキイ侯爵領の聖地群だね。
その前にグレンと一度合流しないといけないからツタカキには戻らないといけないけど。
いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。
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