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49話 突入開始

 迷宮の入口を再度解放しようとした魔族は苦戦はしたが倒すことができた。どうやら迷宮の入口と言う要所を確保しようとしたところを潰す為に待機していたらしい。


 ただの魔族単体を単に撃破することが非常に難しいというわけではない。

 ただ周りの魔物が邪魔だった。


 魔族が率いてた魔物のせいで効率が落ちたのも事実、私の戦い方に問題があったのも事実、もっと上手くやれたはずであった。


 とは言え、手がないわけではない。

 道術は直接的に叩きつけるやり方はできない。しかし強化に関しては教国の聖人が繰る聖力を用いた業より遥かに効果的と言える。少なくともナミが使っていた道術の効率は私が行うそれより遥かに良かった。


 正に道術はこれから学ぶべきものである。まぁ学ばしてもらえるかは不明だけど……。

 最悪、熱烈に私に執着しているナミに教えを請おう。正直やりたくないけどね……。


 そして魔族討伐から3日経った今、私は迷宮の入口の前にいる。既に街の周辺は魔物の駆逐はほぼ終わっており、この迷宮の中をどうにかするだけのところまで討伐が進んでいた。


「最後の一押しを頼む」

「えぇ、分かってるわ。こっちもやれるだけやるつもりよ。まぁ初めて入る迷宮だからどこまで出来るかは不明だけどね」

「無理は禁物よ、でも頼めるのは貴女たちしかいないの。それは解るわよね?」

「解ってるわ。こんな荒れた迷宮、入るだけでも勇気が要る。私だってやりたくはない。でも実力的に私なら希望が持てるのも、私がやらなきゃ甚大な被害を出さなきゃどうにもならないのも解ってる。だから任せてちょうだい。それが私の使命だから」


 姫将軍やその側近からは期待と不安が籠もった視線を向けられている。


 これからわたしのパーティーを中核とする少数精鋭でこのスタンピードの大元である迷宮ツタカキの大洞に挑む。

 私が連れてきた聖人組と貴族組に加え、この国の実力者4名を含めた10人パーティーである。


 この迷宮に縁があれば私のパーティーだけでも進むことができたと思う。だけど私のパーティーにここの経験者は誰一人としていない。故にこの国の兵士や冒険者を受け入れるしか無かった。情報が有るのと無いのとではその攻略難度は大きく変わってしまうからだ。


「そろそろ行くわ」

「お気をつけて」


 最後に出発を告げて中に入る。


 魔物は常に迷宮の入口から溢れているわけではない、途中で途切れることが有る事がわかっている。これも入口を部隊で封鎖した成果だ。


「ここの迷宮は鬼系の魔物が多い。とは言っても、他の系統の魔物が出ないわけでもない。それは分かってるよな?更に言えばゴブリンやらオーガと言った西でも有名な鬼系の魔物も出るが、この地域特有の鬼系の魔物も多い。知らない魔物も多いだろうから気をつけて欲しい」

「そうでしょうね」


 この迷宮の案内役として付けられたメンバーの中で最年長の彼はかつて冒険者として世界各地を回っていたことがあるらしく、世界各地の魔物の分布について詳しかった。もう35歳になるからもうすぐ引退で、最後は故郷であるこの国で冒険者活動を終えたいとも言っていた。


 他の臨時メンバーも各地で実績を残した大ベテランばかりだ。冒険者ならBランク上位からAランクくらいの実力がある人しかいない。


 つまり……


「死にたくなかったら無理すんなよ」

「俺等の背中を見て学べや」


 一目置かれている私以外の5人には完全に上から目線で、5人は縮こまってしまってる。まぁ仕方がない。

 残念だけど実際に実力不足だし……。


「見たところ冒険者基準ならCランク程度ってとこだな。本来ならこの迷宮の適正ランクだが、この状況だ。数段階上の状況だと心得よ、覚悟しておけ」


 でも決してナメられてるわけではない。

 この人たちは言葉遣いやらなんやら荒っぽいけど面倒見も良い。それが選ばれるの条件だったから当然だけど。


 でも彼等の言うことは何一つ間違っていない。

 実際にスタンピードを起こしてる迷宮は進むのが難しい。前世でも特編チームに入れられてやったことがあるから実情は多少なりとも知っている。


「まぁ酷い状態なのは間違いないわ。私も今回は一回で全てを終わらせられるとは思ってない、だから今回は極力生き残る方向で動く。そのつもりいてちょうだい」

「ま、リーダーはアンタだ。アンタがそう言うなら従うさ。で、危ないと判断したら退却か?」

「最悪そうするつもり、入ってみないと何とも言えないけど……」


 取り敢えず皆も理解してくれた。


「疑義は無いわね?では進むわよ」


 終わらせよう、災厄を。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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