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47話 ナミの初陣

 あの模擬戦の後、改めて輝巫女ナミの運用について軍議の議題に挙がった。


 結論から言えば道術の素養が高いことから最前線ではなく少し後方寄りの位置に配置することになった。どうやら道術は周囲の強化や妨害と言ったサポート系に特化しているそうで、最前線には向かないらしい。


 この決定の裏には彼女の実戦経験の無さが問題視されたのもある。彼女を失う危険性が無視できなかった形だ。


 過去には高い戦闘能力を持ってるのを活用して最前線で刃を振るいつつ周りを道術でサポートしたとか言う逸話を持つ神官もいたらしいけどね。鬼法師とか呼ばれて伝説になってるらしい。

 ナミはその鬼法師に憧れがあるらしい。だけど無茶していい理由にはならないよ?


 因みに私はソロでの遊撃を頼まれている。余力があれば反攻に移っても良いとされた。

 そもそも私の場合は魔法込みで本気で戦うと破壊力が高過ぎて友軍に被害が出るのでソロの方が良いのだ。そして姫将軍にハッキリと「貴女の場合、護衛なんて邪魔ではなくて?」なんて言われてしまった。事実だけど。


 新体制は明日からと言うことで今日は彼女に本当の戦場を慣れさせることになった。


「やったー!ジャンヌさんと一緒に戦えるー!」


 何故か私が彼女の担当になった。

 本来一緒にいるべきは近くで戦うことになるアステリアとレイン、そして選ばれた兵士たちだ。私が守備で待機している今日だからこそ事前準備が必要だと言うのに……。抗議したら「戦場体験させる上で一番安心なのは貴女のところ」と言われてしまった。


「そのノリで戦場に向かえば死ぬわよ」


 最初に脅しを入れておくことを忘れない。


 戦場は常に死と隣り合わせ、常に戦況を意識した上で敵と向かい合わねばならない。


 如何にして敵を削ぐか


 如何にして勝利するか


 如何にして生き残るか


 絶対というものは存在しない。故に最善を突き進む必要がある。

 そしてそこから運悪く外れたものが戦死と相成ってしまう。


 要するに戦場は一種の生存競争の場でもある。


「重要なのは生き残ること。無理をすれば、無駄なことをすれば、即死につながるわ。特に初めてなら常に気を張っていなさい」

「はいっ!」


 元気よく返事すれば良いってわけでも無いんだけどね。


 既に私たちは最前線の手前まで来ていた。


 これから戦ってるメンバーの入れ替えに合わせて参戦する予定だ。


 そしてその時が来た。


「次の部隊、突っ込め!」


 現場指揮官の指示により入れ替えが始まった。


 この入れ替えは最初は参戦部隊が突撃して敵を撹乱するところから始まる。そして敵が混乱したところで戦ってた部隊が離脱を図る。まぁ簡単に離脱はできないので完了するまで、かなり時間を要するけどね。


「集え、真なる光よ、我こそは神々に身を捧げし巫女なり、ここに神々の加護を下ろし給え、我等に破邪の力を与え給え」

「ん?」


 知らない詠唱、知らない術式、聖気を操ってるのは判る。恐らくこの国の巫女や神官が使う道術とやらかな。しかし何をするつもりなのか……?


 疑問に思ったものの、答えはすぐに出た。

 これは神々の聖気、しかも凄まじい力の奔流を感じる。既に体が軽い、強化が施されているのが分かった。更に薄っすらとだけど、聖気を纏ったのも知覚できた。


 なるほど、確かにこれなら集団で魔族を倒すのは難しく無いわ。これは確かに面白い。


「さぁ神々の加護はここに!皆さん行きましょう」

「「「「おおおおおおぉぉぉぉ!!!」」」」


 強化に酔った兵士たちが雄叫びを挙げて突撃していった。この強化具合ならこの極端な気分高揚も理解できる。

 彼女自身も刀を抜いて突撃を始めてしまった。


「あっ!待ちなさい!」


 初めての実戦なのにあまりにも無謀過ぎる。

 すぐさまフォローに回った。今ここで死なれても困るからね。


 魔物の攻撃は基本単調、故に無謀にも無策で飛び出した彼女でも余裕で勝てている。確かに素養は高いと感じる。

 でも甘い。視界に入る魔物はその素養と強化された身体スペックに任せて潰せても、視界外にはまだ気が張れていない。つまり視界外の気配に弱いということだ。


「危ない!」


 魔法で彼女と対峙していた魔物を横から吹き飛ばしつつ、彼女を引っ張って引き下げた。

 そして彼女がいたところにはモグラ型の魔物が顔を出していた。


「え?」

「まだまだね、地面から来るやつもいるから」


 モグラは穴から素早く出るとこちらに爪を繰り出してきた。でもこっちは隙を晒してるので刀での迎撃はできない。


「仕方がないわね」


 咄嗟に『シャイニングスピア』を発動し、モグラを飛ばした。光魔法は周囲への影響が少なく、かつ速度が早い。今回の様な場合はこれが一番確実だった。


「すみません、ありがとうございます」

「懲りたら無茶をしない」


 彼女は青褪めつつ頷いた。


 これで学んだのか、この後は特に問題なく戦えていた。


 本当に無駄に才能だけはあるわね……。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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