45話 社の使者
予約忘れていました。
遅れて申し訳ありません。
魔族を倒してから3日が経った。
社からはそろそろ返事が来るはずだ。
伝令を送った先は片道1日程度の距離である。向こうが考える時間を考慮するとそろそろ来てもおかしくない。
司令部も同様の予測をしており、重要人物と見做されている私は朝早くから呼び出されていた。司令部は逸早く情報を共有し、次の作戦を立てなければならない。私という特級戦力を如何に活かすが彼等の腕の見せ所という訳だ。
「おはようございます。それで社から返答はどうでしたか?」
「あぁ、流石にまだ届いていない。だが遅くとも昼頃には届くだろう。連中がアホでなければな……」
まぁ朝イチで駆け込んでくるとは思っていなかったので想定のうちだ。そのうち待ってれば来るんじゃないかなぁ、今日中に。
なので今日はここにずっと詰めているわけだ。事実上の休みと言えるわね。
正直ここのところずっと戦場に立ち続けていたので休みは有難い、有難いのだけど、今でも最前線では味方が魔物の軍勢と交戦を続けている。勢いは一頃より落ち着いたとは言え、既にかなり長く戦っているので疲労は蓄積している。私もあまりノンビリはしていられない。
司令部で社からの使者を待ちつつ、そろそろ昼食という時間帯になった頃に1人の伝令が駆け込んできた。
「申し上げます!社の使者が領主邸に来訪されました!司令官にはすぐに来てもらいたいと……」
「ふざけてるのかッ!」
「軍以外のところに軍事情報を第一報を持っていくとかおかしいだろ!」
「おのれ!斬り捨ててくれるわ!」
伝令は最後まで話せなかった。
その前に周りの軍人たちが軒並み激怒してしまったからだ。筋を通さない使者が悪いので怒るのは問題は無い、無いんだけど、それにしてもちょっと落ち着きがなさすぎる。これってどうなの?
「静まりなさいッ!」
誰かと思いきや姫将軍だった。思ってたより武人らしい声も出せるんだね。今の一言で全員を黙らせることに成功した。大したもんだよ。
「逆上したところで意味はありません。何人か選別し、選別した者たちで使者と面会します。腹立たしい限りですがこちらから赴きましょう。重要なのは話を先に進めることですわ」
正論だね。
面子を重んじてナメた姿勢を見せる社の使者を馬鹿にしても対立が深まるだけ、私もそう思うし意味のある行動ではない。その状態で使者を呼びつけても軍の面子にかけて軍人たちが暴走するのは目に見えている。それは外部の人間である私ですら許容できない。
だから人数も絞る。人数が少なければコントロールしやすいからね。
そして選ばれたのは軍からは3人、3人とも武よりも智に重きを置いた人物で落ち着きのある存在だった。選ばれた理由がよく分かる。
因みに私は重要な関係者としてメンバーに入っていた。
ーーーーーーーーーー
「おぉ、レイカ姫ではありませんか。直々に来て頂けるとは……」
「誤った場所に向かっておきながらその言い草、本当に白々しいわね」
会うなりこれはだ。しかもニヤついてやがる。一応聖職者と聞いていたけど、これはおかしいんじゃないのかしらね?流石にここまで酷いとは思わなかった。もう我慢ならないので睨みつけて吐き捨ててやったわ。
「なんだこの小娘は!こんな無礼者が何故ここにいる!叩き出せ!」
「無礼者?それはアンタだろうがよ!」
「双方落ち着きなさい!使者殿、この御方は単騎で魔族を撃破できる実力の持ち主、魔族が攻めてきてる現状は要人の一人です。貴女も使者の発言に噛みつかないでください」
いや、こんな下衆に情けは無用でしょ。
社もなんでこんなゴミを使者として送りつけてきたのか、本当に疑問だわ。
「フンッ!まぁ良いだろう、小娘の件は後にしてやる。これが神官長の手紙だ……ひっ!」
許さない。
刀の柄に手を掛け殺気を放ったらこのゴミ、急に怯えだしたよ。怯えるくらいならふざけた態度取るなよ本当に……。
手紙は素早く姫将軍によって回収されていた。
彼女が手紙を回収した段階でこちら側は全員が戦闘態勢に入っていた。
「もう止めようが無いわ。分かってるわよね?自分でやらかしたことの重みを……」
小娘発言には姫将軍もお怒りのようだった。もうこの場で斬り捨てても文句は言わないらしい。
そう言い捨てた後、彼女は手紙を読み始めた。
取り敢えず彼女が読み終わるまでは斬り捨てるのは我慢するか。
しかし読めば読むほど顔がより険しくなっているように見える。何が書かれているのだろうか?
「社からは援軍は出せないとある。お前たちの様なゴミが邪魔したとかは無いわよね?」
「あるわけもないだろう!」
「社は不測の事態に備えることが義務付けられていたはずだわ。派遣できて当然のはずよ。どうやら弛んでいるわね」
これは社は粛清かな?既に内部に敵がやりたい放題しているものと仮定してるわね。使者も必死に虚勢張ってるけど全然怖く無い、所詮武人には通じない程度の存在でしか無い。
そう言えばこの国は社と政府の関係がかなり近かったわね。何だったら国王が社の名目上の最高指導者でもあったはずだから粛清の大義名分は捏ち上げれば良いのか。
「もう良いわ、反逆者は要らない」
許可が下りたわね。
目障りなコイツはサッサと斬ってしまおう。
「なっ!?やめろ……」
スパンッ
「あ〜スッキリした」
「生かしてくれた方が色々と使えたのに……」
ジト目で見られても知らん。
「どちらにせよ社の協力は得られませぬ。それを前提に今後を考えねばなりませぬな」
「私も動きづらくなるわね……」
「分かってるならアリシア姫は魔族がいない時は前に出ないでちょうだい」
「なっ!」
そのままこの場で私には監視が付けられることになってしまった。まぁ仕方がないけど……。
ーーーーーーーーーー
使者を斬り捨てて司令部に戻ってるときだった。
「ん?妙な聖気を感じるわね?」
「アステリア殿かレイン殿では?」
「二人とは異なるわ。少なくともチバンガの聖人では無いと思うわ。この感じは一体……?」
「はて?どういうことですかな?」
「わからないわ」
確かに聖気を感じるんだけどその性質がチバンガの聖人達とは異なるのよね。隠蔽性が高いような気がするけどそれ以外はよく判らない。
その存在は徐々に近づいてきている。
「ここだー!」
「え?この声は……」
「レイカ姫久しぶりー!」
「ナミ!?なんでここにいるの!」
どうやら姫将軍の知り合いらしい。
「社は人を送らないとあったわよね?」
「独断よ独断!魔族を単独で撃破できる猛者がいると聞いて来たの!輝巫女としてそのやり方を教えに貰いに来たわ」
「はぁ!?」
とんでもない子が来たわ……。
いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。
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