表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
181/197

35話 移転

 野営地に帰還している時にアステリアからこんな報告を受けた。


「あの魔族、かなり滑稽な存在でした。罠や仕掛けの数も多かったのですが、外部との繋がりも深かったようです」


 罠の類はその大半が私の大魔法で破壊できたらしく、残ったものも極短時間で処理できたとのことだった。その結果、二人には私の援護や魔族の観察などを行う余裕があったらしい。なので調べられる限り徹底的に調べ尽くしたそうだ。


「戦闘は慎重過ぎるあまり自滅したがな。とは言ってもアレは異常なまでに頭の回転が早い個体だったな。アレだけ隙を埋めようとした奴だ、他にも見えてない罠が残ってると見るべきだろう。特に迷宮方面は要注意だな」


 迷宮の方に流れた魔力で何を起こすつもりなのかが分からない。


「確かにあの知能の高さは想定を越えていた。認めるしか無いわ。何にせよ、野営地は一気に危険になったと考えて良いわ。やはり指揮所は急いで市内に移転させるべきね」

「あぁ、あの地点はもうバレている。何かの切掛があればすぐにでも魔物が押し寄せてくることだろうな。あの場所に指揮書を置き続けるのはあまりにも危険過ぎる」

「私も今の位置から早期の移転を支持します。あの地形では指揮所を守りきれないでしょう」

「皆もそう思うなら確定ね」


 今回の作戦における重大な情勢の変化を全員が捉えていた。


 厄介なのは何が何でも指揮所の司令官らを説得する必要があることだ。あの連中、無駄に頭の固い奴ばかりだから面倒なんだよなぁ。緊急事態はどこから起こるかなんて分からないというのにね。


ーーーーーーーーーー


 戻ってくるなりすぐに兵士に捕まった。


「どこに行っていたのですか!」

「魔族を討伐してきたわ。それより通してちょうだい、急ぎ指揮所に報告があるの」

「今指揮所では会議中だ、後にしてくれ」

「緊急事態だから後にするわけにはいかないわ!」


 どうやら指揮所の中で司令官らがグダグダ討論しているらしい。


「は?魔族は討伐されたんだろ?何が緊急事態なんだ?ふざけてるのか?」

「倒した魔族の膨大な魔力が迷宮の方に流れていったの。あの魔族は情報を集めるのみならず、様々な手を打っていたわ。ここも危険なのよ」

「正気か?」

「正気よ」


 無理を言って押し通り、指揮書に入るとそこにいた全員がこちらを向いた。


「緊急事態です!魔族が何らかの策を弄してることが発覚しました。策の内容までは不明なものの、ここは危険と判断しました。急ぎここの撤収を!」

「その根拠は何だ!作戦立案は我々の仕事ぞ!関係ないものが口を出すな!」


 早速おかしなことを言う輩が現れたわね。

 予想通りだけど。


「倒して死んでいるはずの魔族の魔力が迷宮方面に流れていきました。そうでなくてもあの魔族は様々な仕込みをしていたようです。何が起きてもおかしくありません。これを異常事態と言わずしてなんと言うのですか?」


 流石に全員が黙り込んだ。

 完全に意味不明だったかな?


「よろしいでしょうか?」


 声を上げたのは護衛部隊の隊長だった。


「魔族を倒しに行く、そして我々では足手纏と聞いていましたが、もう倒してきたのですか?」

「証拠はここに」


 最初の質問に答える形で魔族の死体を出した。マジックバッグにしまってたんだよね。衣装もこの国っぽかったし。


 これは証拠として認められたらしい。


「なるほど、確かに魔族の死体だ。私も初めて見るがな。しかし死体から魔力が抜けるものなのか?」

「そうした魔法が存在していても驚きはしません」

「ほう、あくまでも不明と言うことだな」


 司令官はあくまで冷静で現実的だった。

 事実のみを認めた上で不確実要素を排除しない姿勢を見せた。


「世の中解っていないことの方が多いのだ。それは認めるしか無い。その上で訊こう、何故ここが危険と判断したのだ」

「魔族がここに気が付き偵察を仕掛けてきました。偵察をした魔族は先程示した通り倒しましたが、その背後に何者かが意図を引いている可能性があります。その者がここに気がついていてもおかしくはありません」

「偵察か。まぁ良い、故に予定を早めてここを離れろと申す訳だな?検討の余地はある。いや、早急に対処すべきであろう」


 流石、理解したか。問題は他の軍人たちだな。


「まだ解っていないではありませんか!無駄手間になる可能性があるのなら……」

「それでは遅いのだ!今はあまりにも不確実的要素が強過ぎる。少なくとも部隊の中枢たる我々は不確実性の少ない場所に移るべきだと判断した。皆、すぐに準備せよ!」


 黙らせる手際の良さも流石だった。


 こちらの意見を通せて良かった。


「ジャンヌ殿、貴殿らにはここを離れるまでの警戒を頼む。移転は明日行う。移転先はツタカキ市の内部とする」


 決められるリーダーが居ると話が早い。


 今回の件を受けて会議は中止、指揮所移転が最優先事項となった。


 そこからは怒涛のようだった。

 凄まじい勢いで片付けられ、夜には最低限のものしか展開されていなかった。



 翌朝までに何度か襲撃があったけど、難無く叩き潰せた。手応えからして威力偵察かな?司令官に話したらかなり苦い顔をされた。これは確定と判断したわね。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

良ければブックマーク、評価、感想、レビュー等お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ