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32話 偵察部隊

 僅か3人で対処しようとしていることに護衛部隊の指揮官は戸惑っているようね。


「本気で貴女方だけで魔族とその配下の魔物と戦うおつもりなのでしょうか?」

「言ったでしょう?私たちは聖人よ。奴らに対抗する力がある」

「しかしここで貴女を前に出すのは……」

「私が出るしか無いわ。アステリアでは対魔族戦の前衛はまだ無理よ。そもそも聖人や聖別された武器がないと話にもならないけどね。二人には聖気を使った聖術での支援に徹してもらうつもりよ」

「わかりました、ご武運を」


 護衛部隊の指揮官を説得することには成功した。


 魔族が来ると言っても最初に来るのは向かってくる魔族支配下の魔物だろう。お手並み拝見くらいの感覚で放り込んでくるはずだ。そしてこちらを分析してから戦いを挑んでくると予想できる。


 手の内を魔物で全て吐き出すつもりは無い。魔物の相手には紅蓮堂でもらった剣を使うつもりだし、魔法も系統はある程度絞って狙いを定めさせないつもりでいる。

 当然、魔族本人にはカンナ鋼製の太刀や聖気を用いて戦う予定でいる。


 そろそろ来るわね。


「もうすぐ視認できるわ。最初は手下の魔物だけだから本気は出したら駄目よ」

「あぁ……なるほど……」

「どういうことだ?」


 そうか、レインは本職の冒険者では無かったね。


「強力かつ知能の高い魔物は他の魔物を手下にして手駒の様に扱うのよ。一昨日も見たでしょ?魔族でも恐らく同じことが言えるわ。それに監視を入れて偵察という高度なことをしてくる可能性がある。手の内を晒せば対策してくるわよ、確実にね」

「理解した」


 頭の回転が早いせいか、想像ができてしまったらしい。レインは話の途中で顔を青くしていた。


 話が終わったところで物音が聞こえてきた。敵が近づいてきている証拠である。

 二人も既に戦闘態勢に入っている。


 魔物の声が聞こえてくるのと同時に一匹の魔物が飛び出してきた。

 飛び出してきたのは跳躍力の高いジャンピングラビットと言う魔物で、小柄な似合わぬ強力な脚力を持つ存在だった。コイツは兎に角その脚力を活かした突進攻撃が得意なだけで脅威ではない。


 飛び込んでくる弱い魔物なんてただの的、炎魔法の初歩である「火球」をぶつけて即死させた。


「次が来るわよ!」

「おう!」

「えぇ!」


 今の接触で交戦開始は敵側にも伝わっている。手は隠す必要はあっても、もう姿を隠す必要はない。


 こちらの声は当然魔物たちにも聞こえている。私たちに攻撃すべく次々と姿を現してきた。


 あれはリッパーラビット、あの前脚が肥大化した猫はハンマーキャットか、そして体中に目がある犬はアイドッグだね。


 こうして見ていると小動物系の魔物しかいない。大型の魔物がいないのはちょっと不自然なのよね。小動物系を含めた小型の魔物って強い魔物って少ないのだ。こういう場合ってオーガ系やオーク系の比較的強めの魔物が先陣を切ってくることが多いのだけどね……。


 実際迎撃してみても魔物たちの動きがおかしい。本来ならこの魔物たちは知能が大して高くなく、攻撃は比較的単調なものになりやすい。だけどここにいる個体はまるで連携を取るかのような動きをしている。


 それにアイドッグは本来かなり好戦的な魔物なのにほとんど仕掛けてくる様子が無い。


「あのアイドッグ、操られてるわね」

「え?あっ、確かに……」


 アステリアもおかしい事に気がついたらしい。


 状況を見れば間違いないだろう。


 このアイドッグこそ、魔族が直接干渉をして操っている偵察用の個体という訳だ。

 数多の目を持つ魔物、偵察には確かに最適と言えるわね。


「アレは私がやるわ」

「俺たちにでは底が露呈する。済まんが頼む!だから他は俺たちに任せろ!」


 レインもその気なら問題はないわね。


 私の標的になったことに気がついたアイドッグが吠える。

 しかしそれは威嚇ではない、他の魔物に対する命令だ。魔族による「自分が操ってる魔物を護れ」という鬼畜な命令なのだ。


 現に他の魔物が二人の攻撃を受けながらも間に入ることを最優先するかの如き動きで移動している。結果的にその魔物たちもボロボロになってるんだけどね。


「ちいっ!道を塞ぐつもりか!」

「仕方が無い、蹴散らすから離れて!」


 直ぐ様で『爆炎球』を発動し、壁となった魔物を吹き飛ばした。吹き飛ばされた魔物は二人に任せて良い、私は開いた道を駆けて魔族の操るアイドッグへと接近した。


「ぐおぉぉぉぉぉおお!」


 遠吠えと共に炎の魔法を発動したらしく、こちらに炎のブレスが吐き出された。本来はアイドッグは魔法も使わないし炎も吐かない、つまり魔族に操られている決定的な証拠だった。


 だけどそんなものは私の足止めにはならない。


 『ロックウォール』と言う魔法で大地を隆起させて壁を造り、防いでしまえばちょっとしたブレスくらいなんてことは無いのだ。

 そのままその壁を飛び越えアイドッグの背後に回り込む位置まで飛び込む。尤も真上を通過したところで気づかれたけど距離と位置の条件が良いのでブレスを気にする必要はない。


 着地してすぐに反転、そのまま横薙ぎに斬り裂いた。


 私がアイドッグと本格的に対峙している間に、他の魔物も二人がしっかり片付けてくれた。最後数匹も私が手を出さずとも終わった。


「ようやく終わったな」

「でも真打ちが現れていません」

「感じるわね。まだそんな遠くじゃないわ。さっさと片付けるわよ」

「あぁ、ここからは恐らく北北西だろう。こっちは真の手の内を隠している。手の内を暴いたと油断している魔族をぶっ飛ばす好機だな!」

「貴方が油断してどうするのですか!」


 珍しいことに冷静なレインが熱くなって調子に乗ってる……。


 まぁアステリアの言う通り油断はできない。

 最悪アステリアにレインを抑えてもらおう。油断して勝てる相手じゃないからね。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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