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30話 開戦

 翌日になっても私の所で起きた騒動は話題にはなった。まぁアレだけ騒げば問題にはなる。


 一部部隊の配置換えも問題なく受け入れられた。作戦内容からも私が鍵であることが全軍に知れ渡ってる上に、その私にやらかしたのだから赦されるわけがない。やらかした精鋭部隊は最前線の中の最前線、先陣を切って突っ込む役目を仰せつかった。


 本来、戦死する危険性の極めて高い先陣を切る行為は華のある名誉なこととされている。しかし状況が状況だ。ほぼ全ての者に事実上の死刑と捉えられていた。確実に戦死するまで戦わされるのが確実であり、戦死しても戦死の名誉は無い。


 まぁ自業自得だけどね。

 マトモな人間なら初手から味方に対してあんな絡みはないわ。


 そして今、私は陣形の先頭にいる。


 私の魔法をもって開戦だ。魔法発動後は護衛と共に後方に下がり、他の部隊が前に出る手筈になっている。


「後ろに控えてる部隊も準備が整ったようですな、魔法の準備は整いましたかな?」

「何時でも行けるわ」

「貴方もジャンヌちゃんの後ろに下がってちょうだい。巻き添え食らうわよ」

「左様ですな」


 交代した部隊の指揮官は魔法にもそこそこ長けているらしく、ラーシアの警告に頷いている。兎も角この人は周りをよく見て空気を読める良く出来た人物である。


 隣りに立っていた彼が数歩下がったところで魔法を起動する。これが開戦の狼煙、ツタカキ市の城壁に気がとられて背後が疎かになっている魔物どもに対する奇襲だ。


「では始めるわね」


 発動するのは『ブレイズスコール』と言う炎系の大魔法だ。


 魔法発動とともに掌の上に小さな炎の球が出来ていた。小さな炎となれば普通は小規模な魔法を想像する者が多い、だけどそれは見当違いだ。この手の魔法は魔力の密度を見ないと本当の威力は分からない。


「おいおい、見掛け倒しじゃねぇか!このホラ吹きめ!」

「おい!止めんか!魔力の密度を感じてみろ、異常な魔力密度だぞ。どれほどの規模と威力の魔法か、私ですら想像もつかんわ!」

「ただの小さな火の玉だろ!魔力密度なんて関係あんのかよ」

「アレは爆発する。その規模と威力は魔力密度に依って大きく変動する。……マズイ!皆、衝撃に備えよ!」


 見当違いな野次を飛ばした隊員を指揮官が叱り飛ばす。そんな中、火の玉を空に打上げた。当然指揮官は打ち上げた後で何かが起こると理解していた。


 そしていつの間にか火の玉は見えなくなった。


「上に打ち上げてどうするつもりだ?」


 怒られていた兵士はまだ油断しきっている。魔法について知らなさ過ぎじゃないですかねぇ……。他の兵士は姿勢を低くしてるよ?


 皆が対策しているうちに打ち上げた火の玉が大量の火の玉に分裂した。ここまでは術者として状況は魔力感覚を通じて分かる仕様だ。


 分裂した火の玉は地上に向かって降ってくる。それもかなりの広範囲に降ってくるのだ。


「何だあれ?」

「何が起こったのだ?」

「ヤバくねぇか?」


 前方に火の雨が降ってきたのを見て護衛の部隊だけではなくて全軍が動揺している。

 怒られていた兵士は唖然としていた。


 降り注ぐ火の玉は着弾と同時に爆発を起こし、周囲の魔物を吹き飛ばし、焼いていく。火の玉一つあたりの威力もかなり高く設定しているのでその光景は圧巻だ。強烈な爆発があちらこちらで発生していた。


 爆風がそれなりに離れているはずのここまで届いている。


「これが大魔法……末恐ろしいな……」


 指揮官は魔法に通じてるだけあって私の真価に気がついている。


「こんなのが詠唱無し……この技術が標準化出来たのなら軍事の常識が一変する。何とか習得できないものか……」


 はい、ごめんなさい。それ、既に私が一度やっています。グレイシア王国が恐れられていた理由がそれです。

 今は表にはできないけどね。


「最前線に出て近接戦をすることが許されていたのなら『爆炎球』の威力を上げて乱打しつつ突撃していたわ。無論死に損ないは斬り捨てながら前進していくつもりだったわ」

「なんて奴だ……」


 指揮官が頭を抱えてしまった。


 そして後方の主力は動かない、いや、動けない。

 まだ火の玉が全て落ちてきていないのだ。未だに爆発が続いてるしね。


 そして強烈な殺戮の風景を観ているうちに遂に魔物たちがこちらに気が付き、側面に迫ってきていた。


「者共掛かれぇ!」

「我らが意地、見せるは今ぞ!」

「斬って斬って斬りまくれぇ!」


 そこら中で各部隊の指揮官が声を張り上げ、各部隊が刃を交えていく。

 ここに大規模な戦闘が始まったのだ。


「始まりましたな。こちらにも魔物が向かってきております。この程度の数に大魔法は不要、我々は下がりますぞ!ジャンヌ殿のお仲間もすぐにお下がりください」

「えぇ、契約通り動くわ。ここからは各地を支援するのでしたね」

「頼みますぞ」


 さて、私もやることをやりますかねぇ!

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

次回更新日は9月19日(金)となります。

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