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27話 依頼最終日 -4-

 殿の務めを果たし帰還した野営地は物々しい雰囲気に包まれていた。


 まず人が多い。

 それも武装した人たちだ。


 武装も大半の人は画一的な防具を装備している。武器も量産品と思われる刀や槍、薙刀を装備した人が多かった。つまり大半は公的な兵士である。所々そこから外れた装備を使う人がいるが、それらは自前で装備を確保できる裕福な兵士か冒険者なのだろう。特に防具が大多数と異なる者は行動からして冒険者だろう。何しろ動き方が弁えつつも自由気ままだからすぐに分かる。


「近隣には情報が行ってたんだな」

「そのようね」


 レインと一緒に足手纏を引き連れて戻って最初は非常にビックリした。でも少し考えれば何があったかはすぐに分かる。旗印からしてツセツ公爵が動いた事は明白だった。ツセツ公爵家の旗が翻っていたのだ。


 状況を理解した所で比較的身形の良い軍人が一人こちらに駆けてきた。


「おい!君たち大丈夫か!」

「見ての通りですが……」

「大丈夫じゃねぇのはこの大馬鹿者だろうな」


 レインも隠さなくなってきたねぇ。シバスが使えない大馬鹿者なのは確かだけど。


 だけどこの人が私達がここに来たことを心配するのはよく分かる。危険地帯の方から来たのだから色々と心配されて当然だ。


 そしてこの人が来たのもよく分かる。身形が良いから恐らく身分も低くないと考えられる。いざという時に責任を取れるということ、つまり万が一私達を追ってきた魔物がいた際に迅速に迎撃する為に指揮官自身が対応したのだ。

 特に私があの馬鹿の首根っこ抑えてるし、近くに魔物がいると誤解されても仕方が無い。


「この近くに魔物はいないわ。既に探知済みよ」


 当然探知魔法を用いての周囲の確認は終わっている。野営地に魔物の群れを誘き寄せるわけにはいかないからね。因みに魔物たちは街の方に集中しているらしくこちらには来ていなかった。


「本当か?本当なら助かるが……。確か探知魔法は修得が難しいはずだ。本当に使えるのか?」

「使えるわよ。魔力操作にコツがあるわ。それに魔力操作ができても情報処理能力が無いと使い物にならないけどね。まぁその辺は私はなんとかなってるわよ」


 実は探知魔法は魔力操作にも長けた近接戦闘者に向いた魔法なのだ。剣士や槍士は当に空間認識能力の問われる存在なので、故に細やかな魔力操作に基づく探知魔法から集めた情報を効率良く掌握できると言うわけだ。

 私も訓練していた頃は情報処理より魔力操作の方が難しかった覚えがある。あんな細かい魔力操作が求められる魔法ってそんなに無いから慣れてなかったのが原因だけどね。


 とは言え、アレは常に使い続けるものではない。魔力消費は多いとまでは言えないけど少なくはないので無駄遣いはできない。それに集まってくる情報を処理し続けるのは集中力がいるしね。


 なので油断は厳禁だ。


「そうか、それは助かる。その、怪我して動けなくなってるソイツはこっちで引受けよう。君たちはどうするのかね?」


 ほう、治療を含めてシバスの世話の手間を投げられるのか、良い提案だわ。

 乗らない手はないわね。


「とりあえず、護衛対象の商隊の元に戻ります。この野営地に戻っているはずですので」

「あぁ、ヒラエイト商会か。彼らなら奥にいるぞ」


 本当に親切な軍人で助かる。


 そして私の読み通り、彼は指揮官クラスの軍人だったらしい。そして今回の作戦について色々と教えてもらった。


 どうやら今回のスタンピードでは負傷者は軍が中心になって救護する方針だったらしく、商隊やその護衛の冒険者の怪我も看てもらってるらしい。色々と手厚くて助かるわ。


ーーーーーーーーーー


 指揮官の情報を元に商隊の位置に向かうと皆が出迎えてくれた。


「二人とも無事で良かったです!」


 最初に迎えてくれたのはアステリアだった。


 シバスを除けば私たちは聖人、同じ聖人として最も心配していたらしい。

 彼女の声に気がついた商隊護衛の依頼を受けている冒険者たちも皆寄ってきた。


「無事に戻ったか、流石だな!」

「無理して出陣しただけはあるな」

「素晴らしい実力だ!是非うちのパーティーに来ないか?」


 一様に褒めてくれるのは嬉しい。所々に混じる勧誘は要らないけど。


 兎も角、これで全員揃ったと言えるわけで商隊としても安堵しているらしい。既にシバスは居ないものとして扱われてるそうだ。出来れば戦死してくれた方が助かるとすら言われてしまった。彼の実家を知っても「名誉の戦死と伝えてやれば良かったからその方が楽だっただろ」とすら言ってくるほどだ。

 結局、商隊側から隣町の冒険者ギルドに人を送り、彼に関しては依頼達成の基準に満たなかったことにする手続きを行うそうだ。


 義理を通すために頑張った私の苦労は一体何だったのだろうか?



 そして今日のところはもうお休みらしい。後の警戒などは軍に任せるとのことだ。

 明日からはスタンピードが収まるまでは基本的に軍の指揮下に入るらしい。今は公爵軍が中心だけど中央政府の将が率いる部隊も来るそうだ。商隊が街に入るのは軍が許可したらになるとのこと。依頼が長引くわね……。


 それにしても国軍かぁ……。あの姫将軍が来ないことを祈ろう。アレに絡まれたくないわ。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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