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24話 依頼最終日 -2-

 迷宮のスタンピードは稀に聞く話だ。

 規模は迷宮の規模やその時の周辺の状況に左右されるけど、そこまで大規模になることは少ない。


 スタンピードと言えばグランリア大厄災だけど、アレはもはや例外の部類だ。あんなのは数百年に一度とか千年に一度とかそう言うレベルの『大事件』だ。


「しかし商隊の護衛依頼中にスタンピードに遭遇とは運が無いねぇ……」

「大魔法を使える子が居るから普段よりは楽出来そうだわ」

「本当に面倒……」


 冒険者たちは思ってることを口にしていた。


 こんなに気楽なのは流石に凄いとは思う。この国はやはり修羅の国なのかもしれないわね。そりゃ武術が発展するわけだ。そう言う噂は聞いてたからもはや呆れるしか無い。


 まだ気が付かれていないけど目の前には魔物の集団がツタカキ市の都市城壁を取り囲んでいる。


 これ、かなり規模の大きなスタンピードじゃないかしらね?


「さて、開戦の狼煙を上げるわよ。皆、準備は良いかしら?」


 元々は偵察の予定だったけど、私が大魔法を使えることが分かったので予定が変わっている。


 大魔法で大群を削り、こっちに殺到してくるであろう魔物を更に魔法で蹴散らして退却するのを繰り返すのが作戦の内容だ。無論退却中に魔物と遭遇すれば各個撃破していく予定である。


「俺達は既に準備を終えている。構わない、始めてくれ」


 準備が整ってるのなら重畳、さぁ宴の時間だ。


 今回は炎系の大魔法を使う訳にはいかない。比較的小さなスタンピードだと目立ちすぎるからだ。大規模なスタンピードならもはや関係ないくらいの惨状なのでそうでもない。

 なので使う魔法は『雷撃波』だ。


 『雷撃波』は規模や威力の調整がしやすい魔法として知られている。

 波状の電撃を放つ魔法で、方向も制約を持たせることも可能だ。無制限で放てば術者を中心に全方位に電撃を帯びせることになる。なので前方のある程度の角度に収める必要がある。


「魔法を使います」


 宣言だけはしておく。仲間がすぐに動けるようにする為だ。


 炎系なら目立つからその必要すら無かったんだけどね。


 放たれた電撃は前方の魔物を蹂躙する。逃げる間もなく感電死して倒れていく光景はなかなか不思議なものね。魔物たちも同じで範囲から外れた魔物たちも不可思議だったらしく混乱している。燃焼しやすい体組織や体液を持つ魔物なんかだと爆発を起こしてる。

 目測で数百は倒せたかな。


「これは『雷撃波』か?威力調整が可能と聞いてたがこれは凄いな。こんな威力出せるとは……」

「いつ勘付かれてもおかしくないわ構えるぞ!」

「いや、ここは退くわ。ここまで綺麗な奇襲が決まったなら次の場所に行くべきよ」


 現に魔物たちは混乱するばかりでこちらには気がついていない。当に離脱のチャンスだ。

 実質的な将である商隊のリーダーもここを撤収する判断を下して全員で撤収した。


 魔物によって荒らされた農地にいるので見通しが良く、一歩間違えれば見つかってしまうので基本的には姿勢を低くして進んでいる。


 しかしどこにも逸れはいる。


 街を襲撃してる大群から外れた個体はいるのだ。


 先頭を行く商隊のリーダーのすぐ後ろにいたので前方にオーガ系の魔物がいるのはすぐに分かった。

 今なら視界には入っていないし、身体強化で詰めればすぐだ。よし、飛び込もう!


「見つけた!」

「プギャー!」


 大太刀一閃で魔物の首を斬り落とした。


 斬りつける寸前で気が付かれたけど、その時には既に私の大太刀の刃が迫っていた。


 コイツは確かにオーガ系の魔物だけど見たことが無いわね。この国特有の魔物かしらね。地域によって魔物の姿や性質は変わってくる。


「おいおい、テツオニを一撃かよ。ソイツやたら硬えんだが……」

「テツオニ?」

「あぁ、今お前が斬り捨てた魔物だ。西の国から来たお前が知らんのも無理はない。体が無駄に硬い上に怪力の持ち主でAランク指定の魔物だ。接近戦をすれば達人でも死ぬ程だぞ。間違っても子供が大太刀で斬り捨てるなんて普通はあり得ない。遠距離もしくは囲んでチクチク出血を強いて倒すのが定石の相手だ」


 うん、確かにちょっと硬かったかも。

 身体強化や斬撃強化に関わる魔法を使ってたけど硬かったもんなぁ。

 表向きCランクになってるから最年長でAランクの彼が呆れるのは致し方無し。普通は格上に突っ込んでいかないし、それを圧倒してる時点で色々とおかしいからね。


 テツオニとやらは換金すれば高そうなのでマジックバックに収納した。


 しかしこのテツオニ、どうやらただの逸れでは無かったらしい。

 振り返った魔物に気が付かれてしまったのだ。つまり斬ったコイツは周りの魔物を纏めるリーダーだったことを示している。


「あれ?」

「これはやらかしたな……」


 街の方角から奴に従っていたと思われる魔物が殺到してきた。その数、目測で200はいそうだわ。その数が仇討ちで来るとは想定外にも程があるわ。


 とりあえず数を減らさないことにはどうにもならないので、さっきと同じように広範囲を潰せる『雷撃波』を放った。

 しかし今回は倒れる魔物は少なかった。


 電撃に強い魔物があまりにも多いわね。仕方が無い、ここからは乱戦だ。とっとと片付けよう。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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