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23話 依頼最終日 -1-

前回更新日 (だった) 8/8は予約忘れて寝過ごしてしまいました。申し訳ありません。

 ラーシアが兄からの使者(追手)が来ていたことに知ったのは目的地の目前、前日のことだった。


「ジャンヌちゃん、何故教えてくれなかったの?」

「向こう側に漏れる危険性が少なかったからよ。あの程度の小者なんて背後にいる連中を無視できるなら適当に処理してしまって良い。ホントお粗末な存在だったわ」


 話を聞けば商会の関係者から話されたらしい。それも「お前の兄の使者を見かけたぞ」と一言だけ言われたとのことだ。

 深追いするなって意味なんだけどねぇ……。


「だから気にする必要は無いわ」

「一応、どの様に処理したかだけ聞きたいですわ」


 面倒な……面白い話では無いんだけど……。


「宿に態々来て騒いだから捕縛したのよ。それで適当な場所で始末してるわ。始末する場に私は立ち会って無いけどね。護衛依頼に対する妨害行為対処の常套手段としか言いようが無いわ。処理の仕方も普通だったわね」


 本当にさっさと処理しちゃったもんなぁ。

 あの日、出発して早々に4人が何やら大きな箱を持って離脱してた。箱の中身は絶対あの小者だ。森の中で斬首して穴掘ってそこにポイでしょう。特筆すべきことが何も無いやり方だ。


 ラーシアはそれでも疑問があるらしい。扇子で顔を隠し首を横に傾けている。貴婦人らしい仕草ではあるけれど、冒険者ならそれをする意味は無いのよね。


「それよりシバスが不味いわね。周りの冒険者から見捨てられてるわ。無能な貴族のボンボンに過ぎないと評されてるようなの」

「何処か傲慢な雰囲気はあったけど……それって大丈夫なのかしら?」

「駄目ね。赤羅様に隠さない人だと『事故死させようぜ』とか持ち掛けてきたわよ。普通、そこまでは言われないんだけどね……」

「仕方ありません。世間知らずで自己中心的な存在ですからね。私も他の女性冒険者も言い寄られてて困ってるんです」

「アレでは冒険者にも騎士にもなれないでしょう。実家の領地に閉じ込めて置くしか無いのでは?」


 アステリアは言い寄られてたのか。しかも他の冒険者にも……。そりゃ殺そうとする人がいてもおかしくないか。


 レテシアもシバスを疎ましく思ってるようで、一人の貴族として嫌悪感を滲ませている。処理方法も領地持ちの貴族ではよく使われる手口だ。これも妥当かな。


 あれ?これ、本当に彼殺されちゃうかもね。相当恨み買ってるみたいだし。

 それにしても私に言い寄らなかったのは何故なんだろう?


ーーーーーーーーーー


 翌日、片付けをして野営地を出発してもう少しでツタカキ市に到着するくらいで厄介な事に巻き込まれた。


「おいっ!ツタカキの迷宮でスタンピードが起きたみたいだぞ!魔物がこの辺まで来てやがる!」


 先頭が停止し、伝令が叫んている。


 叫ぶと魔物が来ちゃうかもしれないからもっと近づいて声量を抑えるべきなんだけどなぁ……。


「さて、戦闘の時間ね」


 とは言え、やることは変わらない。

 護衛対象の近くに敵がいるのだ。護衛依頼を受けてる以上は戦わなくてはいけない。


 後続のアステリアたちと合流して急いで先頭に向かった。割と先頭に近い馬車にいたので距離は無かった。


「商隊は野営地に戻る。護衛は半数に分け、半分は商隊についてもらう。もう半分は偵察だ。場合によっては討伐に加わってもらう」


 先頭にいた商会側のトップは護衛にそう指示を出した。

 その上で……


「15足らずの子供は商隊と共に下がれ、ここから先は危険な戦場だ。子供を前に出す訳にはいかん!」


 因みにこの商会側のトップは武闘派らしく、既に大太刀を担いでいる。やる気満々だ。


 私たちはレインとシバスを除けば14歳以下しかいない。二人は16歳なので前に出ることになった。


 私はあまり望ましくないと考えた

 レインなら周りと合わせることもできるはずだ。それだけの柔軟さがある。ただシバスは無理でしょう。それこそ命を落とすだろう。

 それに指をくわえて眺めてろと言うのは正直不服だ。


「私は出るわよ」

「バカモン!子供は下がってろ!」

「大魔法を無詠唱で使える私がいれば突破も視野に入るわ」


 私の回答に周囲が凍りつく。

 私に雷を落としてきた商会側のトップですら唖然とした顔を晒していた。


「正気か?」


 そう尋ねてきた来たのは冒険者組の最年長の40歳くらいの男だった。確か彼はAランク冒険者だったわね。


「大魔法を無詠唱で使える、正直眉唾ものだが魔力の流れの良い嬢ちゃんなら有り得るだろう。それ自体は否定しない」


 十文字槍を手にする彼自身も魔力の流れが良く魔道士としての能力は低くない。遠距離近距離両方に対応した優れた戦士で無数の実戦経験を積んでいるはずだ。私の言うことが正しいと理解してるけど、その上で私の参加は望ましくないと考えているようだった。


「だがお前のところのガキンチョどもはどう抑えるのだ?パーティーのリーダーはお前だ。ここはメンバーに対する重石になるべきでは無いのか?」


 成程、確かに彼の言い分はある意味では正しい。

 だけど実態は少し違う。


「確かに便宜上はパーティーとしています。ですが実態は私たち聖人組が貴族の子たちに戦闘技術を教えているのです。それに西の貴族は『民を護れ』という不文律が存在します。聖人も同じです。力があるのであれば前に出るべきでしょう」


 とは言ってもそれを真摯に受け止めている聖人や貴族は少ないんだけどね。


 流石にこれには文句は出なかったようだった。


「良いじゃねぇか!お前のこと、気に入ったぜ!」


 この国の貴族であるノンカンジ侯爵家の一族を名乗る冒険者が賛同の意を示した。貴族としての思うところがあったらしい。それが切掛となり私の参戦は認められることになった。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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