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11話 途切れた海路

 モータル商業港にマネケン商会の船が着いたのはモータル市に着いて4日目のことだった。どうやら2日程、遅れていたらしい。


 私たちはマネケン商会の運営する高級ホテルに宿泊していた。フルケン侯爵家が費用を負担することになっているらしく、無料で泊まることができた。

 正直何言われるかと思うと少し頭が痛いのだけど……。


 どうあれ船が来て良かった、なんて言えるわけがなかった。

 なんといきなり事務所に呼び出されたのだ。


 この時点で私は何を言われるか何となく想像がついていた。


「海にドラゴンが出現した。いや、正確には航路のすぐ近くの島に住み着いたようでして……。どうにかできないでしょうか?」


 やっぱり魔物だった。しかもドラゴンで島に住み着いたと言う厄介な状態、ちょっと面倒臭いわね……。実際に状況を説明してくれたのは船員の誰かだろうけど怯え気味だ。


 まずドラゴンと交戦する為には島に上陸する必要がある。まずこれが最初の難所だ。ドラゴンが警戒してるから近づくことが難しいのよねぇ……。

 海を餌場と見做してるのは明白でこっちが動きづらいのを良いことに攻撃をしてくる可能性は高い。餌と見做してくるか敵と見做してくるかは判らないけどほぼ、確実に襲われる。


 そして上陸できたとしてドラゴン自体が半端なく強い魔物だ。竜種は最低でもAランクの魔物となるのでそもそも討伐困難と言う事情もある。


 もはや疑いようのない無理難題の領域と言っても過言ではない。

 恐らくフリードではなくて私が呼び出されたのも魔法で何とかできないかと言う話なのだろう。


「はぁ……」


 飛行魔法が使えるとは言ってもアレは本来長時間維持する前提の魔法じゃないのよね。発動時間が長ければ長いほど平衡感覚に悪影響を及ぼすことが判っている。

 海岸から島までとなると距離が長過ぎて洒落にならない。島についたら平衡感覚狂ってました、ではドラゴンには勝てないからね。


「一つ聞くけどどの程度なら近づけるかしら?」

「報告によれば約800レタルで反応されたとのことです。条件次第では遠くても襲ってくる可能性があります。1000レタルは離れたいと考えています」


 800レタルかぁ……。飛べないことはないけどドラゴンと戦うことを考えると……ちょっと距離があるわね。せめて600レタルくらいまでは近づいておきたかった。


 だけどこれは大型の帆船の話、手漕ぎの小舟なら話は変わるはず。

 大型の帆船でギリギリまで近づき、そこから小舟で私が乗り込めば何とかなるかもしれない。大型の船だから目立って遠くから攻撃されるのだ。勿論小舟でも魔力で気づかれる公算は高いけど目立たない分もう少し近づけるはずだ。


「600レタルまで船で近づいて。そこまで近づけば勝てるわ」

「それはできません!船が襲撃されます!」

「ドラゴンが来たら私が迎撃する。むしろ上陸の手間が省けて助かるわ。……その場合は船はそのまま退避すれば良いわ」


 ドラゴンが近づいてくるならこちらが飛べば良い、そのまま空中で仕留める。


「無理です!近づけば即座に船が焼かれます」

「私が監視する。向こうが来るのが分かれば打って出て引き付ける。あの知能の高いドラゴンよ?流石に横から潰される愚は犯さないわ」


 ちょっと及び腰が過ぎるんじゃないかしら?

 海の人間が度胸無しってちょっと考えられないわね。


 海は陸とは特性が大きく異なる。広大な海という特性から魔物が大型化しやすかったり、スケールが大きいのだ。まぁその大型の魔物が強いかと言われると微妙だったりはするのだけど……。

 それ故か、海の人間は豪快で度胸のある人間ばかりなのだ。それを思えば彼の様子は腰抜けとしか言えない。


 怯えるにしても怯え過ぎだ。


「船長を呼んできて、アンタじゃ話にならないわね」


 流石に相手も苛立ちを露わにしていたけど、私と商会の担当者で有無を言わせず船長を呼び出した。


 流石に船長は怯えた最初の船員よりは度胸があった。とは言えやはりドラゴンは怖いらしく、生存率を上げようと必死になって方策を模索していたけど……。


 とりあえずこれで船の手配は付いた。これでようやくドラゴンと一戦を交えることができる。


ーーーーーーーーーー


 船長を説得して洋上に出てみると予想外の事態に陥った。


 なんと島より2000レタルも離れていたにも関わらずドラゴンが飛んできたのだ。

 ちょっと驚いたけどすぐに甲板にいた船長に報告した。


「ま……まずい……」

「嘘だろ……まだ島は遠いはずだろ!」

「食事中だったのか?」


 船の幹部たちは皆一様に青褪めていた。もはや腰を抜かしそうな雰囲気だ。

 しかし船長だけは違った。


「嬢ちゃん、頼むぜ!」


 青褪めつつも、勇気を振り絞った姿勢を見せていた。


「いいかお前ら!嬢ちゃんが飛んだらここから離れるぞ!直ちに準備せよ!」


 これなら巻き添えの心配は最小限で済むわね。


「行ってくるわ」


 さて、戦闘開始だ。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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