53話 旅路への支度
本エピソードを以て3章完結です
「よお!戻ってきたぜ」
「おかえり、どうだった?」
出発して2ヶ月ほどでグレンが帰ってきた。
「迂回すれば移動はできそうだな。予想通りバルテシアは戦争を起こしてくれたお蔭であの国の近くには近寄れなかった。他国の冒険者にまで傭兵依頼出してやがる」
「かなり焦ってるわね。他国で募兵するなんて無茶が過ぎるわ。下手すれば募兵先の国が反発しかねない」
「既にバートラル公国は警戒体制に入ってた。軍がバルテシアとの国境を固めてたぞ。人や軍事物資の流出を阻止するのが目的なのか、或いは集めた人や物資を警戒してなのか……」
既に碌な事になっていなかった。というか全く関係のない他国で募兵するか普通?あまりにもリスクが大き過ぎるし現に他国の反発を招いてる格好だし……。あの国の上層部はどうなってることやら……。
「つまり移動の際は余計な騒動に巻き込まれないよう注意する必要があるってわけね」
「そう言うことだ。で、そっちの方では何かあったか?」
「幾つかあるわね」
私の方も色々と彼に話しておかなくてはいけない事がある。
まず私の旅に他の聖人が興味を示したのだ。
聖人たちは聖人院で過ごす者が多い、故に外の世界に触れる機会が少ないのだ。
必要があっての旅路、それに同行したいと思うのは好奇心の強い聖人なら言いかねない。と言うかユーリスティアを筆頭に何人かが言いだした。
これは私としては断る方針だ。
そもそも戦闘能力の低さが問題になる。あまりにも彼ら彼女らは弱いのだ。
そんな人たちを守っている余裕は無い。
対魔族戦にでもなれば命の保証はとてもじゃないけど出来ない。
2つ目として教皇から直接の依頼を受けてることだ。
内容は先日の迷宮での魔族退治が大いに問題になった。その結果、他の迷宮でも似たようなことが起きていないか調査することもお願いされている。因みに先日の洞窟は魔族を始末した数日後、メンバー総出で浄化活動を行い魔族の痕跡を消している。もうあの洞窟は大丈夫だろう。
まさかアレで仕事が増えたとは思わなかった。
「まぁもしかしたら所帯が大きくなる可能性があるってことか……。そいつらは口は堅いのか?」
「残念、堅くないのが多いわ……」
そして最後に……
「それよりグレンにも聖別された武器が貸してもらえるそうよ。詳しくはガルブリエに訊く必要があるけどね」
「それは有難いな。魔族相手だと今の俺では厳しい。聖別された武器があれば戦えるからな」
そう、魔族の無駄な硬さは洒落になっていないのだ。
今、教国では私を支える立場にあるグレンの装備が問題視されている。聖別された武器を持っておらず、かつ聖人でもない。対魔族戦では脆弱な存在であり、私と並び立つ立場の剣士の装備として大いに問題があると言わざるをえなかった。
「最後の詰めの諸々が終われば何時でも出発できるわ。グレンも近く教国宝物殿に入ることを覚えておいてちょうだい」
「うげぇ……あんな厳重な場所に入るのかよ。ちょっと服装とか考える必要がありそうだな」
「間違いなくあるわね」
グレンも頭を抱えているわね。
彼も帰ってきて情報の共有は済んだ。
この国では聖人としての道をただ只管歩み力を付けた。とは言ってもまだ力が足りないし政治的な騒動に巻き込まれる可能性のあるこの国に滞在し続ける理由は無い。後は実戦で鍛えるべきだしね。
やることを終わらせてこの国を出よう。それが未来へと続く道なのだから。
いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。
連載一周年の今日、晴れて3章を完結させる事ができました。ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。
まだまだ、アリシアもといジャンヌちゃんの物語は続きます。これからもどうぞ理を越える剣姫を宜しくお願い致します。
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