表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/196

50話 穢れた迷宮

本作は今週日曜日で連載一周年となります。

これからも理を越える剣姫を宜しくお願いします。

「うわぁ、ここが迷宮都市なのですね。人が溢れています」

「気にしていてはキリが無いわ。ここまで混んでいると悪意を持つ者がいるかも知れません。気をつけてください」


 教国最大の迷宮都市であるウォールホールに着くなり、呑気なユーリスティアが呑気なことを言ってアステリアに注意されていた。


 グレンとの密会の後、私は荒稼ぎの為の迷宮都市行きの許可を貰いに行った。予想通りシーネリアはゴネたけど、ユーリスティアを筆頭とする迷宮に興味を持った聖人が何人かいた事でゴリ押しした。因みにアステリアは私とユーリスティアの御目付役だ。

 その結果、許可を貰う代わりに彼ら彼女らの引率をすることになり、8人パーティーと言う大世帯を率いることになった。……未経験者が多い上にパーティーで歩調を合わせる必要があるので荒稼ぎは難しいかもしれない……。


 メンバーは私の他にユーリスティアとアステリア、剣術好きなセレナとアンナも参加している。リーフィアは幼過ぎるので却下されていた。残りの三人は賢者のレイン、ロートン、ザーヴェルスだ。


 このメンバーのうち、迷宮に入った経験があるのは冒険者組の私、アステリア、ロートン、そして元教国軍の兵士だったセレナの4人。特にセレナはここに来たことがあるらしく、知識面に期待できそうだった。


「セレナ、案内頼めるかしら?」

「お任せください」


 私たちは彼女の案内で迷宮に向かった。


 ここの迷宮は洞窟型で知られており、出てくる魔物に一貫性がないことで有名だ。

 理由は幾つか考えられるらしいけど、私は教国と言う立地じゃないかと考えている。理由は簡単で教国そのものが無駄な浄化によって清く保っているからだ。

 落とされた穢れや浄化を避けた地中の汚れがここに集中したとされる説を私は支持している。


 尤も本当のことはわからないけどね。


 洞窟に近づくに連れ、雰囲気が変わっていく。

 強い浄化の魔力とそれに打ち消されていく穢れの瘴気を感じられる。やはりここの迷宮には穢れが溜まっていそうね……。まさか魔族とかいないわよね?


 そして迷宮の入口に辿り着いて驚いた。入口からは極めて強い瘴気が溢れ出ている。これは尋常では無い。


「こ、これは一体どういうことだ!」

「ロートン、落ち着きなさい。この程度で動揺していたら死にますよ。迷宮内部では気を張っていなさい」


 一番狼狽えていたロートンは元冒険者のはず、なのにこの有り様だ。


「ここがこんな場所だったなんて……対策を考えねばなりませんね」

「いや……既に対策してもこの有り様なのだろう」


 セレナの言葉にウォーカス王国貴族の自出を持つザーヴェルスが反応を示す。

 恐らく彼は貴族、則ち統治者の視点からその答えを導き出したのだろう。私も同じ考えに至っている。恐らく街中の浄化はこれに対する対策で間違いない。


「とにかく前に進みましょう。新たな対策をするにしても外からでは何も判断がつかないわ。腹を括るわよ」


 私の言葉に皆が頷いた。皆の覚悟が決まったところで私を先頭に迷宮に足を踏み入れた。


 踏み入れた中は真っ暗、当に漆黒、人や魔物の姿は見えるけど他は何も見えない。感覚を頼りに動くしか無いわね……。幸い入口からは光が見えるので気をつけていれば方向を見失わないだろう。


 この迷宮、少し進めば魔物が湧く始末で休む暇もない。これは想定外だわ。聖気を扱える聖人のみのパーティーだから比較的マシな感じだけど、これは長居はできない。危険過ぎる。


 そして魔物の対策も難しい。魔物の一貫性の無さは呆れるほどで、ゴブリンの群れに始まりアンデットの集団、地竜、ウィズダムデビルボアと、色々と湧きすぎていて滅茶苦茶だ。これでは対策のしようがない。


「せめて素材は回収したいんだけど……」

「放置しておくとどんどん瘴気に溶け込んでいきますね……」

「まず魔物を倒すだけでも精一杯だな……」


 この迷宮、金を稼ぐのには向かないけど修行には丁度良いのかもしれない。

 一応私の方で買取額が良さそうな魔物は亡骸ごとマジックバッグに収納している。はっきり言って丸ごとは効率悪すぎだ。バラした方が持ち帰るのは楽だしね。


「流石にこれ以上の回収は無理ね……」

「ジャンヌさん、ここまでにしましょう。もうみんな限界です」


 非効率な収納をし続けたせいでマジックバッグはすぐに入り切らなくなった。そして皆の疲労も溜まっている。これ以上先に進むのは難しい。

 仕方が無い。


「……撤退よ。殿はロートンとアステリアの組と私で交互に持つわ。状況に応じて指示は出す。さぁ戻るわよ」


 私は退却の号令を出した。これ以上の継戦は危険、それでも他の冒険者たちよりは長く進めていた。ここで活動している冒険者たちはどうやって金を稼いでるんだろうか……?


 途中、何度か私が先頭に立つこともあったけど何とか迷宮入口まで戻ることには成功した。そして迷宮の近くのギルドの建屋では驚きを以て迎えられた。


「聖人の皆様方、よくぞご無事でお戻りになられました。ここの迷宮でこんな長時間潜るものはいません」


 やっぱりそうらしい。


「休息できる場所はあるかしら?」

「こちらへどうぞ」


 案内された場所は特別な休憩室だった。聞けば聖人は特別扱いなのだそうだ。これはラッキーだね。

 案内された部屋では皆ぐったりしていた。まぁこれも仕方が無い。


 皆は休憩室で休ませて私はギルドの表の受付に向かった。


「あら、先程いらした大聖女の剣士ですね。どの様なご要件でしょうか?」

「魔物の買い取りは頼めるかしら?」

「えぇ、見せてもらっても良いですか?」


 どうやら買い取りはできるらしい。そして相場も他所より遥かに高かった。魔物にも依るけれどその相場は2〜4倍だ。これなら少しの戦果でも暮らしていける。間違いない。思わぬ荒稼ぎが出来てしまったわね。


 買い取りを終えた私は休憩室に戻り、皆を連れて街の教会に連れて行った。今日はそこの宿舎で休む予定なのだから。

次回につきましては連載一周年となる日曜日の更新となります。

更新時刻は5:00、12:00、19:30を予定しており、3回目の更新を以て3章完結となります。

来週は更新お休みとなりますのでご注意願います。

4月21日月曜日から4章開始となります。


良ければブックマーク、評価、感想、レビュー等お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ