表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/196

45話 後始末-3-

 ミーティングが終わった後、私は急ぎガルブリエのところに向かった。


 何しろ出発まで時間が無い。仮に出発までに間に合わなければそれこそ全体の予定が狂う。全体の日程を狂わせるわけにはいかない。


 既に天幕類の撤収はほぼ終了しており、資材の荷馬車への積込みが始まっている。


 私が辿り着いた時には教皇を筆頭とする教国高官らの天幕は既に片付けられていた。従って彼とは屋外で話すことになった。


「あまり時間もない、ですが今回話すことは広めて良い話でもない。申し訳ありませんが急ぎこの場を離れます。森に少し入れば聞かれることもありますまい」


 ガルブリエ本人からは極めて強い警戒心が取れて見れる。そこから相当な問題が発生していたことを察することができた。


 内容は恐らく魔族関連ね……。

 ブルハクプス公爵の件については公爵の気質的には妙な強引さがあったけど、あの状況から大きく動くとはとても思えない。故に然程大きな問題になっているとは考えにくい。


 彼の後ろを付いて行き、野営地の少し外に出て森に入ったところで彼は口を開いた。


「昨晩の魔族ですが、亡骸を確認したところまず間違いなく高位魔族と判断されました」


 この事に驚くことはない。私も想定していたレベルの話でしか無いのだから。それに斬りつけただけで次々と刀が折れてる時点でそもそもおかしいし疑わないわけがない。


「まぁそうですよね。高位魔族でもなければあんなに武器が折れることなんてありません」


 これ自体は彼も頷いて肯定した。


「それよりも含有魔力量と瘴気の量が尋常ではありませんでした。はっきり言えば普通の魔族ではあそこまでの規格外の存在にはなり得ない。それが判断の基準です」


 なるほど、彼の説明で納得がいった。確かに瘴気とか邪気なんかは今の私では気付けない。覚醒していない現状ではその辺の探知能力に限界がある。

 魔力量に関しては正直あんなバケモノ自体が少ないから何とも言えないけど、瘴気は確定的要素になり得る。


「上級魔族が動き始めた、この事実は人々の平穏の脅威であり、極めて重たい事柄です。我々も対応を考えなければなりません」


 宗教家として、宗教国家として、人々や神々の敵となる魔族の存在を一切容認はできないのだろう。そうでもなければここまで積極的に動く意思を示すことはないはずだ。私も施政者なら自国に何も無ければ警戒するに留め積極的対処は行わない。


「具体的にはどうするつもりかしら?」

「まずは各国に警戒を呼びかけることでしょう。これは今すぐにでも可能ですし、やらない理由がありません」


 まぁ妥当なところね。


「次に聖戦士たちを各国に派遣することも視野におります。残念ながら聖戦士の受入を渋る国も少なからず出るでしょうから、そうした国々には何かしらの手段を以て宥める必要があるでしょう」


 故郷のグレイシア王国は受け入れない国の筆頭になりそうね。

 過去の神官の行動が行動ゆえに神官への不信感がある。これは王族から末端の平民に至るまで国全体に蔓延っているので教会や教国には厳しくなりがちだ。況してや特殊な戦闘能力を持つ神官である聖戦士なんて受け入れたがらないはずだ。

 それに私がこの国にいることがバレたことで私の身柄引き渡しを要求するはずだ。交渉すれば確実に揉めるわね。


 他にも教国とは何かしらの隔たりのある国は少なくないのが現実で、そうした各国がどこまで耳を傾けてくれるかは未知数と言っても良い。


「後は聖人の保護の強化ですね。これも戦力増強の観点から進めておきたいところです」


 これも何処まで各国が認めてくれるかは見当がつかない。自国民を差し出せって言うのと変わらないからだ。

 しかしこれに関しては教国側の言い分に一定の覆せぬ事実があるので渋々受け入れざるおえないかもしれない。何しろ聖人の教育を行えるのは現状教国の聖人院だけなのだから。


「各国が何処まで耳を傾けてくれると思っていますか?各国にとって呑むのが非常に難しいものもあると思うのですが……」

「えぇ、存じております。聖人たちに戦闘能力を持たせて各国に戻すことを考えております。これなら反発を和らげる事ができるでしょう。これはあくまでも長期的な戦力増強計画ですが……。まぁ聖人院からは強い反発がありそうではありますが気にしている暇はないでしょう」


 確かに私を見て野蛮だの何だの言うゴミがデカい顔をしている時点でお察しだわ。実際に聖女になった者を中心に戦闘能力を持つことに忌避感を抱く聖人が多いのが現状だ。

 当然の様に「戦うなんてとんでもないですわ」なんて言いそうな愚かな奴らが沢山いる。


 対魔族という意味では有効だとは思うけど、実際にやろうとしたら対象者が動こうとせず失敗する可能性が極めて高いところが辛いわね……。


「如何にも失敗しそうな施策ですね……。確実に反発は避けられない、強制でもしようものならボイコットされるかと。あくまでも推奨して環境を整えるくらいしかできないと思いますわ」

「本当は強制したいところですがそうもいきませんか。そこまで忌避感が強いとは思いませんでした。それに推奨に留めてもどれだけの人数が参加してくれるか……」

「あそこまで酷いとやる気のない連中にやらしても意味はないかもしれないわね」

「困ったものですね」


 どうやら強制は諦めてくれたらしい。

 まぁ最優先は確実な戦力確保だから反発を強め過ぎてもいけない、推奨するに留めて雰囲気を変えていくしかないわね。何かと理由をつけて訓練しない聖人を訓練している聖人がイチャモン付けれるようになるのが理想かな。


「長く話しすぎましたね。予定を押すわけにもいきませんので戻りましょうか」


 確かに長く話しすぎたのかもしれない。


「えぇ、そうですね。急いで戻るとしましょう」


 話を終えた私達は野営地に早足で戻った。

 話が長引き少し遅れてしまった為にシーネリアからは徹底的に笑われてしまった。


 重要な話だったんだぞ……解せぬ……。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

良ければブックマーク、評価、感想、レビュー等お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ