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33話 顔合わせ

一昨日はすみませんでした。どうやら予約し忘れていたみたいです。

 聖人院に入って5日が経った。

 初日を除く4日間の自由時間、私は毎日剣術同好会とも言うべき集まりに入り浸っていた。


 生粋の剣士で実戦経験豊富であり圧倒的実力を見せた私は参加初日で「師範と呼んでも良い?」と言われてしまった。そう、聖女としてはあまりにも強すぎたのだ。


 流石に師範と呼ばれるのは苦笑いをするしかなかったけど癒やしの場にはなった。座学やお祈りばっかりなんて勘弁だしね。


 そんなこんなで教皇との面会の日となり、私は朝イチでザリファスのもとに向かった。

 彼の家に着くと既にグレンも「貴族らしい」服装に着替え終わって待機していた。と言うか持ってきていたんだ……。


 因みに私は法衣で来ている。

 正直ドレスは邪魔だし1人で着るのは難しいものが多い、と言うか王族女性が着るようなドレスは1人では着れない。故に持ってても仕方がないので全て王宮に置いてきたので今は1枚も持っていないのだ。


「お前、何だその格好は?」

「……聖女の法衣よ」

「なんだそれ?」

「ふむ、お主が顔を出さんと思ったらそうなっておったか」


 グレンは全く知らなかったようで説明が必要っぽいわね……。あまり私としても気乗りはしないけどせざる終えないわね。

 反対にザリファスは合点がいった様子だった。


「グレンよ、この国に於いては聖人は特別な聖職者として保護される。聖人院と言ってな、聖人たちを匿う場所があるのだ。彼女が法衣を着ているということは既に聖女候補として保護を受けているということだ」

「ハァ!?」

「驚くべき話でもあるまい、未覚醒聖人であっても確実に高位の聖人ともなれば保護の話が来てもおかしくはない。本人の眼の前で言うべきではないが性格と実績に多少難があるのでな、早期に首輪を付けておきたいと言うのはあるだろう」

「本当に失礼ね……」

「だがお主はそれだけのことをしておるぞ」


 確かに転生してからは問題起こしまくってるけどさ……。首輪って何よ!首輪ってさぁ!

 私はペットじゃないんだぞ!


「お主を放置してたら予期せぬ動きをされかねんだろ?現に実の母を病ませて出奔してそこら中で色々やらかしてるのだからな」

「否定はしないわ……」


 ぐうの音も出ない正論だった。


「話は終わりだ。この手の話はガルブエリの方が詳しいはずだ、機会があれば訊いてみよ。そろそろ向かうとしようか。ヤツもそろそろ来ておるはずだ」


ーーーーーーーーーー


 向かった先は聖都郊外の料亭だった。美しく整えられた庭園にまた凝った造りの小屋が幾つかあった。小屋は調理場と食事処なのだろう。明らかに庶民を相手にしていない超高級店だった。


「バーテー庭園料亭にお越しいただきありがとうございます。ザリファス様御一行でお間違えないでしょうか?」

「そうだ、連れを二人連れてきた」


 執事服を着こなした店員が私の方にふと目を向けて不思議そうな顔をした。恐らく服装が服装だからだろう。しかし何かを悟ったのかすぐに顔を戻した。


「畏まりました、では案内させていただきます」


 それなりに広い敷地を店員の道案内の下で進んでいく。咲き乱れる花々、綺麗に枝を整えられた樹木、貴族の屋敷の庭と見紛うこの庭園、見事としか言えなかった。

 そして辿り着いた小屋には先客がいた。


「お待ちしておりましたよ、ザリファス殿……って何故ジャンヌさんがいらっしゃるのですか?」


 私がここにいるのがそれ程に謎なのだろうか?私とて転生前のものも含めて人脈もある、その可能性には気づけなかったのだろうか?理解が及ばないわね……。


「うむ、彼女もガルブエリ殿に話したいことがあるそうでな。ちょうど良かったから誘って連れてきた。まぁ誘ってから聖人院に入っておったようだが……」

「てっきり聖人院から教国神言館に通ってるものだと思っておりましたが……」


 あぁ、そうなのね……。まだ調べ物が続いてると思っていたのか。

 彼にとっては残念なことに既に行き詰まってるのよね……。それがここに来た理由だし。


「今日はコレの件で話をしに来たのよ」


 そうして「あの」無制限許可証を見せる。

 まさかコレでも入れない区域があるなんて想像もつかなかったわ。それのせいで調べ物がストップしてるのだから。


 ガルブエリは許可証を見て不思議そうな顔をしている。


「コレでも神言禁書庫には入れなかったわ」


 この説明でようやく合点がいったらしい。


「なるほど、確かに彼処は複数の役職者の承認をも要します。つまり一般区域の関連資料は読み漁り終わったと……」

「そうよ」

「まぁ良いでしょう、私の承認は出しておきましょう。そうですね、貴女が頼むのであれば聖女頭が一番早いはずです。とは言っても聖人覚醒の儀の後でもなければ簡単には会ってはくれないでしょうけど……。取り敢えずはそちらに集中してもらいたいですね」


 結局そうなるのね……。

 とは言え解決の糸口は見えた。しかし聖女頭もその権限を持っていたなんてね。一応会ったことはあるけれど何もなければ事務的対応で終わらせてくる人で苦手なのよね。

 あの人のことは置いておくとして、儀の後じゃないとダメとなると問題は儀を行えないことになる。


「聖人覚醒の儀に集中してほしいのは分かったけど、スタンピードはどうすんの?」

「そちらは順調に鎮圧が進んでいると報告が上がってます。現段階では延期は数日で済むと考えております。ある程度落ち着いているのならば護衛を増やして予定通りの日程での強行の可能性も考えられます」

「強行とは豪胆な策ね。因みに私が護衛の戦闘要員に混ざることは可能かしら?」

「実力的にはそうしてもらえると助かりますが、聖女頭が難色を示すのではないかと思います」


 戦闘要員に選ばれなくても一応は戦闘装備は持っていくつもりだけどね。


 聖人覚醒の儀でも聖地での生活の事を考えて、趣味の私物の類もカバン程度なら持っていくことが許されている。そのカバンは私物でも大きくなければ問題はない。

 私は堂々と武器満載のマジックバッグを持っていくつもりだった。


「くれぐれも問題は引き起こさないでいただきたい。ゴードンの時のように隠蔽ができるとは限りません。アレは例外中の例外、神使とて庇える限界がございます」


 しっかり釘を刺されてしまったわね。

 まぁ無駄に争いを生む必要はないしね。


「さて、キリは付いたな。今日の本題に入るとしよう。グレン、こちらに来い」

「あぁ」


 ザリファスがグレンを側に招いた。

 その様子を見ていたガルブエリはグレンに鋭い視線を向けている。まるで値踏みしているかのような姿勢が感じ取れる。

 その環境化でも焦ることなく貴族らしい風格を見せるようになったグレンの成長もよく分かるわね。


「その子は?」

「教皇猊下とお会いできたこと、心より感謝致します。私はドリビア子爵、フリード・フォン・ドリビアの孫にして養子のグレン・フォン・ドリビアと申します。冒険者となりジャンヌ殿を支える任を祖父より受けております」


 普段のグレンからは想像もつかないような綺麗な言葉がスラスラ出てくる。

 見ていてこれはこれで面白かった。


「ほう、ジャンヌ殿が警戒心を出さないところを見ると信頼されているようだな。ドリビア家と言えば新興のグレイシア王国貴族だったか」

「その通りにございます」


 やり取りが貴族令息と教皇の交渉である。私の時はガルブエリもそんな態度は示さなかった。聖職者故に神使相手に下手な態度は取れないってことかしらね。



 グレンとガルブエリの顔合わせは口調こそ硬いものの終始和やかに進んだ。

 これで教国内でのやり取りが楽になるわね。

いつも理を越える剣姫をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

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